8話 サル
「へっ?」
私はミルの言っていることが理解出来ない。
すると、ミルは奥の茂みに向かってナイフを投げた。投げられたナイフは茂みの中に消える。
次の瞬間、大きな猿が叫び声を上げながら出てきた。
「ディスペア!?」
「うん。そうだと思う。」
体は闇のような黒と雪のような白、そして、顔には血のように赤く輝く第三の目。猿型のディスペアだ。
奴らは通常のディスペアより知能が発達しており、基本的には十〜二十体程の群れで活動している。しかし、猿型ディスペアの共通の特徴として、体の再生速度が通常のディスペアよりも遅いことが挙げられる。そのため、第三の目を破壊しなかったとしても首を切り落とすことで、体全体の魔力の供給が出来なくなり、活動を停止する。
奴が森全体に轟くような叫び声を上げる。と、十数体程の猿型ディスペアが集まってくる。
「はぁ〜戦うしかないか〜」
「んーそだね。」
気の抜けたミルの返事。
「けど、さすがにこの量をキツくない?」
「大丈夫大丈夫。」
信頼性の無いミルの言葉。
「見た感じ十二体ぐらいだから半分はお願いね、ルル。」
「・・・分かった。」
ルルは正面にいるディスペアに向かって走り出す。走り出してきたルルに向かって振り下げられる爪をかわし、奴の背後に周りつつ鎌の刃を奴の首に掛かる。そして、そのまま勢いにのって奴の首を切り落とした。
「一体目!」
ルルは鎌を構え直す。間髪入れず、右から襲ってくるディスペアに拡散型魔法弾を放つ。
次に左から襲ってきたディスペアには、魔法弾を放った時の反動を生かし、首を切り落とす。
「二体目!」
最後に魔法弾を放ったディスペアの赤い目に放散型に切り替えた魔法弾をおみまいする。
「三体目!」
放散型魔法弾は威力が魔法弾の中で一番高く、至近距離ではディスペアの第三の目を破壊することが出来る。だが、その分反動がかなり大きく、魔力の消費が激しいので状況を判断して使う必要性がある。
ミルは二本の短剣を構える。正面から襲ってきたディスペアの腕を避けながら切り刻む。
そして、隙を見せたところで三本のナイフを赤い目に投げつける。赤い目にナイフが刺さるとディスペアは黒い煙となって散った。
「一体目!」
すぐに近くにある木に触れ、ディスペアの真上から出る。気配に気づきディスペアが真上を見るが、その瞬間ミルの短剣が赤い目に刺さった。
「二体目!」
ルルは四体目のディスペアに向かって鎌を振り降ろすが、爪で弾き返されてしまい、鎌がルルの手元から離れる。
「まずい!」
ルルは拾いに行くため走り出す。もう少しで鎌に手が届く範囲で背後からディスペアに襲われそうになる。
もう駄目かと思った矢先、一本の白く長い矢がディスペアの第三の目に刺さった。