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第三話『荒野に轟くは予知眼の指揮』(2/3)

 表立った態度で見せているほど、自軍に余裕はない、とタイプセツナのパイロットであるルキは見ている。

 敵側には罠にも引っかからなかった凄腕のノーマルモデルが一体、さらに、エクストラモデルタイプリッカがいる。

 タイプリッカは小さな炎の弾で、目立たぬようにだが鉄の網を溶かしていっている。

 このままの状況が長引けば、こちらの不利は否めないだろう。

 その前に、勝負を決めなければならない。


 この勝負までの未来は読めた。しかし、肝心のそこから先が読めない。タイプセツナの予知は不安定だ。普段は数時間先が見えることがあれば、このような一対一の戦いになれば数秒先しか見えないこともある。しかし、その数秒の予知が一対一ではとてつもないアドバンテージなのだ。

 敵が飛びかかってくる。それを回避して、着地した相手のコックピットへ致命の一撃を繰り出す。

 敵はローラーを回転させて前進した。攻撃の着地点がずれる。敵は間一髪で生存する。

 生き残ることに対しての驚くべき嗅覚の良さだ。自分の五体とはかけ離れたローラーをとっさに回転させる機転は、普通の人間には中々備わらないものだ。


「おいおい、コアを傷つけてしまうところだった」


 それも良いかもしれない、とルキは思う。勝利報酬が減れど、敗北よりはマシだ。

 いけない、と思い剣を引く。遅かった。深々と刺さりすぎていたが故に、引くのが一手遅れた。敵に、剣を掴まれていた。


「捕まえた……!」


 機体を蹴られて吹き飛ぶ。剣は、手から抜けてしまっていた。

 落下点を予知し、即座に立ち上がって、予備の剣を鞘から抜く。

 タイプセツナは指揮官機。搭載されている武器は二本の剣のみ。


 それでも、まだ優勢だ。敵は手負い。こちらには予知眼がある。

 その時、予知眼が、見たくない未来を見た。

 ルキは敵に斬りかかる。

 それを回避し、上空にふらつきながら飛んだ敵の体からは、白い光が放たれていた。


「タイプハクア……支援機か!」


 思わず舌打ちしながら即座に追撃して、足を切り落とす。

 しかし、空中での敵の挙動は既に確かなものになっていた。

 一番相手にしたくない敵だった。

 戦闘が長引くのだけは避けたいのに、戦闘を長引かせることに特化した敵が相手となるとは。

 足は切った。即座に回復はできまい。そう思い、ルキは上を取り、タイプハクアを大地へと押し付ける。

 嫌な予知を、見た。

 飛び上がって回避しようとするが、敵も跳躍してそれに追いついてきた。


「その攻撃、読んでました!」


 ノーマルモデルが一機、包囲を脱してタイプセツナの腹部を貫いていた。

 味方のノーマルモデルは数が足りない。敵を包囲し切るには、限界がある。

 同時に、タイプリッカの網が切れ、自由になる。


「ようやっと俺様の出番か……!」


 タイプハクアの剣が、コックピットに突き付けられた。


「まだ、やる?」


 ルキは剣を捨てて両手を上げた。降参だ。


「何故、殺さない? エクストラモデルは生体コードが必要になる。俺以外は動かせないぞ」


「私は、人を殺さない。貴方が、私達を殺さなかったように……」


「そうしなければ一対一に持ち込めなかったからそうしただけのこと。お前は、俺が味方に付くとでも思っているのか?」


「期待はしていないわ。ただ、貴方が生きていてくれればそれで良い」


 ルキは、動揺を覚えていた。

 先が見える。どの未来に至っても、この女性は自分を殺さないのだ。

 おかしな女性だった。一対一を断らなかったこともそうだ。手段を選ばずタイプセツナさえ無力化すれば、彼らに脅威はなかったと言うのに。

 まるで、命が失われることに怯えているかのようだった。

 そして、ここで彼らに付かなければ、待っているのは牢獄の日々。


「俺の負けだ……。指揮官機タイプセツナ、貴軍の指揮下に入る」


 動揺が周囲に走る。


「そんな、ルキ!」


「俺達の集落はどうなる!」


「エクストラモデル二機が相手、こちらは手負い、条件が不利すぎる」


「不利だろうとやらんことには!」


 そう言って、味方の一機が剣を振り上げる。

 その腕を、タイプハクアの突起から発射されたレーザーが裂いていった。


 味方は、完全に沈黙した。

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