第七話『舞い降りるデウスエクスマキナ』(2/2)
『人間の本能は危険だ。魔導スーツのような破壊の力を産んだ。管理しなければ、そのうち全ての物が破壊される』
『人間はそこまで愚かじゃないよ』
『事実、魔導スーツの生成によって環境破壊は加速度的に進んだ。我々は、人間を管理すべしという地球の意思の総意である』
『人は愚かじゃない。滅びだって、越えていける』
一人の女声と、一人の少女の声がする。
デウスエクスマキナのパイロットの残留思念が残って、会話をしているかのようだった。
人を排除しようとする意志と人を信じようとする意志。二つの意思が感じられる。そうだ、星の奏者が地球の生物の意思の集合体だと言うならば、そのなかに人と、人と共存する生物の意思もあるはずなのだ。
その時、タイプハクアのコックピットにエラー音が鳴った。
コックピットに、こう記されている。
魔力エネルギーの同期が解除されました、と。
見ると、タイプハクアの腕に、ハクア博士が乗っていた。魂の半分をタイプハクアに託し、最後にはその全てをも託したハクア博士。
彼女が、タイプハクアから、出た。
「固形となった貴女は封じることは出来ない。けれども、思念の集まりとなった貴女なら、浄化することが出来る」
そう言ったハクア博士は、姿を消していた。後には、赤い縁の眼鏡と、白衣がタイプハクアの腕に落ちて、地面へと落下していった。
『私達は旧世代の異物。新たな世代に託して、帰りましょう。大地へ』
ハクアの声がする。
白い爆発が起こった。
タイプハクアは、徐々に後退する。
その白い爆発の中で、白い光と、黒い光がしばらく争っていたが、そのうち対消滅したように消えてしまった。
デウスエクスマキナの下半身が、落下する。
勝った。
そんな感慨が、遅れてついてきた。
滅びない故郷を自分は手に入れたのだと、そう思いたかった。
地上に降りると、タイプセツナは大破状態、タイプジンも、タイプマリも、タイプリッカも小破状態。無傷なものは、誰もいなかった。
「回復させてあげたいところだけれど……」
マイが情けない口調で言う。
「回復能力が衰えている。魔力エネルギーの同期が解除されたって出たから、ハクアの魂が残っていないってことなのかもね」
「俺もだ」
「俺も」
「私も」
「私もです」
「エクストラモデルも空を飛べるノーマルモデルと化したってわけか」
ダイカが投げやりに言う。
「王になるつもりだったんだがなあ……」
「そんな俗物的な理由でエクストラモデルを起動させたのか……」
「王になりたくてなにが悪いよ。酒池肉林、酒池肉林をよこせ!」
皆、苦笑する。
「これから、皆、どうする?」
マイの言葉に、皆考え込んだ。
「エクストラモデルがノーマルモデルと大差ない性能になったことは黙っておいて欲しい」
ルキが言う。
「俺はこれを抑止力として自分の集落を守る。もちろん、魔導スーツの開発を進めながら」
「戦争する気?」
マイは、眉をひそめる。
「交渉の材料にするだけだ。内部を治めるのに疲弊しては、外部の敵には勝てん」
「俺も似たような方針かなあ」
「私もそうしようかしら。退屈だけど、タイプマリの搭乗者が死んだせいで集落の舵取り役が不在なのよね」
「マイは旅だっけか」
ダイカの言葉に、メイが目を輝かせる。
マイは、照れ臭さを噛み殺しながら、頷いた。
「色々な場所へ連れて行ってあげる。貴女の知らない場所。貴女の見たことがない場所。貴女の知らない人々が生きる世界。一杯。破壊される心配もない。もう、デウスエクスマキナはいないのだから」
歴史の管理者を失い、人類は未知の領域へと乗り上げた。そのことを、人類の殆どが理解していない。
それでも、彼らは生き延びていくだろう。逞しく、生を謳歌していくだろう。
マイとメイは、機体から降りて抱き合った。
他の三人も、その傍に集まっていく。
その後、絵物語にある魔導スーツが登場する。人々はこう語る。戦争を停滞させようとする彼女は調停者のようだった、と。
短い間ですがありがとうございました。
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