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第一話『エクストラモデル』(2/3)

 集落に戻ると、長が先頭に立って出迎えてくれた。


「メイ、全く無茶をして。素直に上納品を渡しておけば良かったんじゃ」


 その弱気な一言に、メイは眉間に皺を寄せる。


「けど、それじゃあ飢餓に苦しむことになります。敵は三体だった。戦力を削るには丁度良かった」


「三体? 二体だったけど」


 あの女性が、口を挟んでくる。


「一体は私が無力化しました」


「三対一で一体を無力化。やるねえ」


 女性は口笛でも吹きかねない軽い調子だ。


「そちらの女性は……?」


 長が、メイに訊ねる。


「私を、助けてくれた人です。エクストラモデルのパイロットということ以外は、何もわかりません」


「エクストラモデル……?」


「伝説の……?」


 ざわめきが周囲に響き渡る。

 それもそうだ。皆、エクストラモデルをお伽噺でしか知らない。終末戦争も今は昔の話だ。


「私は晩御飯奢ってもらえるって聞いたからこの子を助けただけよ。長居はしないから安心して頂戴」


「真に貴方はエクストラモデルの登場者なのですか?」


 長が、震える声で聞く。

 女性はしばし考え込んでいたが、そのうち一つ頷いた。


「いかにも。エクストラモデル、タイプはハクアがパイロット、マイ。流しの用心棒をやってるわ」


「それでは、この町を救ってくださらないでしょうか」


 長の言葉に、女性はしばし考え込んだ。


「飯をただで奢ってくれるなら、良いよ」


 運命の女神は、なんとも軽い人だった。

 メイは、マイに集落の案内をするように仰せ付けられた。

 緊張しながら、マイを先導していく。

 集落と言っても、百人ほどは住んでいる。中々に広い。建物は、所々に破壊の跡があった。


「なんであの屋根、崩れてるの?」


「野盗です。この町は、野盗に脅されているんです。野盗は六体の魔導スーツを所持している。こちらは自警団のものが一体。太刀打ちのしようがない」


「なるほどねえ。怯えて過ごしてるってわけだ」


「私はこの町を変えたい。北にあるっていう大きな集落と連絡を取り合って、野盗に痛い目を合わせてやりたかった」


「変わるよ」


 震える声で伝えるメイに、マイは、緩い調子で返す。


「私が変えてあげる。流しの用心棒だからね」


 メイは、初めてこの女性に興味を持った。


「なんでエクストラモデルを持っているのに流しの用心棒だなんてことを?」


「私には、故郷がないのさ。だから、流れるだけ。行く先々で色々な人と出会って、別れて、その繰り返し。酒場はある?」


「ありますけど……」


「男に酒を奢らせる方法を教えてあげよう」


「はい?」


 思いもしないことを言って、女性は酒場に辿り着くと、その中に入って行った。

 そして、卓を見渡す。そして、一人飲みをしている中年男性に目をつけた。


「ねえ、そこのおじさま」


 彼の隣に座って、色っぽい仕草で手を擦る。


「お酒、ご一緒しませんか?」


「あ、ああ。良いよ」


「じゃあ、この店で一番良い酒を一杯」


 まんまと酒をせしめることに成功している。

 なんて逞しい人だろう、とメイは半ば呆れながら思う。

 そして、男と多少雑談して、酒を一杯飲み終えると、マイは席を立った。


「良いお酒でした。機会があればまた」


「もう行っちゃうのかい?」


 残念そうに男は言う。それはそうだろう。男にしてみればその後を期待させられたようなものなのだから。

 マイは微笑んでみせた。太陽を思わせる陰りが見えない笑みだった。


「未練を残してこそ次の出会いに華が咲くと言うものです。またの機会にお会いしましょう」


 そう言って、マイは店を出て行った。

 メイも、慌ててその後に続く。


「まあ、もう来ないけどね。流れ者だから」


 そう言って、悪戯っぽく笑う。


「いーい? コツは一人の男。寂しそうにしてる男を色気で落とすの」


「色気、と言われましても……」


 自分とマイの胸をメイは見比べる。悲しいほどに胸囲の差があった。

 マイも、それを見てしばし考え込む。


「童子好きって人もいるからわかんないわよ?」


 運命の女神はなんとも投げやりな人のようだ。


「たった一体の魔導スーツを与えられた自警団のエリートさんに、悪さを色々と教えちゃおうかな」


 そう言って、マイは上機嫌に歩き始めた。

 メイは、その後を戸惑うようについていくしかない。



++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



「魔導スーツを盗られた?」


 椅子に座っている野盗の長が、苛立たしげに言う。

 その前に、二人のパイロットが怯えながら傅いている。


「敵は、どう見てもエクストラモデルでした。我々には対処の仕様がなかった」


「こちら二体を一体で押す馬力。あれは、明らかにエクストラモデルです」


「エクストラモデル、ねえ……」


 野盗の長の目が、鈍い輝きを放つ。


「奪われたノーマルモデルの修理には時間がかかるな?」


「はい。足を完全に切断されました。修理には時間がかかるかと」


「つまり、こちらはノーマルモデルが三体。あちらはエクストラモデルが一体とノーマルモデルが一体って寸法だ」


「長、何を考えて……?」


「俺達は野盗だぜ?」


 長は、いやらしく笑う。その歯に、唾液が滴っているのが見えた。


「奪うだけだ。全てを」


 そう言って、長が両手を上げる。歓声が上がる。

 略奪する。その一点において、彼らはプロであった。


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