第七話『舞い降りるデウスエクスマキナ』(1/2)
タイプマリが敵陣に突入して一機を貫き、そのまま二機、三機と貫いた。
「なにこれ、機動力が高すぎ……!」
メイの驚嘆したような声がする。
「離れろ!」
ダイカの叫びに従い、メイは退いた。すると、貫かれた敵は爆破されてしまった。
炎の弾が弾幕を成す。それを、タイプマリの左手から出る爆破防壁とタイプリッカの火炎の防御陣が塞いでいる。
二十七機のタイプリッカとデウスエクスマキナ。接近は困難だ。
「ボスと敵タイプリッカを分けて処理しよう。対軍属性はタイプリッカとタイプマリにしかない!」
「ダイカにしては良い案だ」
「うるせえな、ルキ。とりあえず、分けて処理する。俺達は後から追いつく」
「マイさん、一緒に旅するって約束、忘れないで下さいね……!」
「わかってるよ」
もう、一人で食事を摂らなくて良い。それを思うと、マイの頬は緩むのだ。
「それじゃあ、行きましょう!」
「おう!」
「あいよ!」
炎の弾幕を時に被弾しながら、先頭を前進するタイプハクアにルキとリルカがついてくる。
そのままタイプハクアは、デウスエクスマキナに突進した。
(触れれない……?)
見えないバリアが、そこにはあるようだった。
しかし、構わずデウスエクスマキナを押していく。
そして、タイプハクア達はタイプリッカ達と完全に分断された。
「愚かな人の子よ……」
デウスエクスマキナのパイロットが口を開いた。
「そちらの望む条件にしてあげれば満足するでしょう。無理なのだった、と」
デウスエクスマキナの腹部に、魔力が集中するのがわかった。
「避けろ、マイ!」
ルキの声がする。
慌てて回避行動に移るが、放たれたレーザーによって腹部が大幅に削れていた。
空戦能力に支障をきたすので迅速に回復させていく。
「人の子よ、欲張り過ぎとは思わないのですか。大地を覆い、破壊の力を振りかざし、生態系を崩す。貴方達は地球に湧いた寄生虫のようなものだ」
「それでも私は、滅びない故郷がほしい!」
マイが、剣を振る。
「感傷の感情論でしかない。くだらない」
エウスデウスマキナが移動した。
目に見えなかった。
タイプセツナは予知眼で辛うじて致命傷を避け、タイプジンは受け流そうとして失敗しメインカメラが大破している。タイプハクアは、コックピット付近に大打撃を負った。
「滅びなさい、人の子よ……!」
「奥の手を、使わせてもらう!」
ハクア博士の言葉を思い出す。
「これは、貴女の生存本能が高まった時にしか使えないと思いまして」
「高まった時だけ……?」
「タイプハクアは、五番目の機体。もっとも魔力貯蔵量が高い機体。それはつまり、様々な奇跡を可能にする余地があるということとは思いませんか?」
マリは回想を終え、キーボードに文字を入力する。
五剣聖モードと。
そうと入力された途端、機体が緑色の光を放ち始めた。
「これは……」
驚愕したのはデウスエクスマキナだけではないらしい。
ルキも、リルカも、戸惑いの声を上げている。
それを無視して、マイはデウスエクスマキナの補足に努めた。
予知眼の力もあって、それはすぐに見つかった。
後は、全力で体当りするだけだ。
タイプマリ並の機動力でタイプハクアは前進する。そして、デウスエクスマキナを掴んで上空、雲の上へと進んで行った。
雲を抜けると、そこは広い一面の青空だった。
「いい加減にしなさい!」
魔導レーザーのエネルギーが貯まる気配がする。しかし、マイもタイプハクアの六つの突起の中央に魔力を貯める。
二つのレーザーの魔力がぶつかり合い、大爆発を起こし、二機は離れた。
「タイプセツナの予知眼、タイプマリの機動力、タイプリッカの破壊力……至ったようですね。五剣聖モードに」
「使えるものはなんでも使う。この勝負に、人類の命運がかかっているんだ」
タイプハクアは魔力貯蔵量が多い。それは様々な奇跡を可能にするということ。五つの機体の全てを一つで賄えるということ。
それが、タイプハクアの開発が遅れた理由。
エクストラの5である理由。
「それは貴女の観点では? 人類は生き延びる。数が減るだけで」
「数が減ることで悲しむ人がいる。私も悲しい」
「動物の生き死にに貴女は心を揺さぶられますか?」
マイは、黙り込む。
「自らの種族の生き死にでしか心を揺さぶられない貴女達は、地球の王としては欠陥品だ」
「地球の王になんて、なる気はないさ」
デウスエクスマキナが動く。マイは剣を構えて、その続きを待った。
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メイは炎弾に追われていた。その数たるや尋常ではない。百は軽く越えている。
「メイ、スイッチ!」
ダイカに言われ、その意図を読む。
タイプマリとタイプリッカはすれ違った。
タイプマリを追う炎弾はタイプリッカの炎の防壁に阻まれて爆散し、タイプリッカを追っていた炎弾はタイプマリの爆破障壁にて四散した。
次の瞬間、十数本のレーザーが放たれて二機は距離を離した。
タイプマリは、手に浮かぶ魔力の剣を次々に投じて行く。徐々に、敵の数は減っている。
「持久戦ですね」
メイは、手に汗握っているのを感じた。
「頭空っぽにして殲滅戦に移りたいが、タイプリッカが三十機ともなると話が違ってくる」
「考えるようになりましたね……」
「馬鹿みたいに言うな!」
声を荒げる彼は、いつも通りの調子で、メイは思わず笑ってしまった。
「マイさん達は、大丈夫でしょうか……」
全てのエクストラモデルを超えるエクストラモデル。タイプ、デウスエクスマキナ。その性能を思って、メイは思わず震えた。
「こいつらの足止めだけで俺達の仕事は終えていると考える。殲滅次第援護に向かう。長い戦いになるぞ、気を抜くなよ!」
「はい!」
言いながら、メイは魔力の剣を投じた。それは一機を貫いて、爆散させた。
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ルキとリルカは曇天の下にいる。
「ねえ、情けないと思わない?」
リルカが、悔しげに言う。
「機動力が足りないから戦力外通告だなんて」
「しかし、あれは、我々の対処できる範囲を大きく越えていた。事実、お前はメインカメラを壊されている」
「サブカメラもあるし、コックピットハッチを開けば周辺は見えるわ」
「大規模魔法には対処できまい」
「やれることはあるってことよ」
リルカは、曇天を見上げる。
「私達にも、まだまだ出来ることはある。エクストラモデルなのだから」
そう、珍しく覚悟の篭った声で言われたので、ルキは唾を飲んだ。
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タイプハクアの剣がデウスエクスマクナに肉薄する。しかし、それはバリアに阻まれた。
デウスエクスマキナの腹部からレーザーが放たれる。それを、マイは辛うじて回避していく。
「バリアをどうにかしなければ!」
一人で叫ぶ。折れそうな心を鼓舞するために。
そして、頭に案が浮かぶ。
全てを断つ剣はあった。タイプジンの、魔法剣。
剣を水平に構える。
そこを、デウスエクスマキナに頭を掴まれた。
レーザーのエネルギーが充填されているのがわかる。
しかし、こちらは魔法剣へと一瞬意識をやった。一手遅れた形となる。
「その考えに至ったのは、貴女が初めてではありません」
そう言って、デウスエクスマキナの腕がタイプハクアの突起を破壊していく。
「人間、何故足掻く。貴女達の種は保たれると約束したではないですか」
「本能なんだよ……!」
マイは叫ぶ。まさに、本能のままに。
「生きたいこと、大事な人と過ごしたいこと、一人じゃ寂しいこと、全て、本能なんだよ!」
「ならば、次は、本能を消すところから始めましょう」
レーザーが放たれようとする。自らの首を断って自由を取り戻すか? いや、デウスエクスマキナ相手にメインカメラを失って勝とうなんて無理な話だ。
(ここまで、か……)
「マイー!」
ルキの叫び声が聞こえた。見ると、タイプセツナが雲を突っ切って、青空のフィールドへと入り込んでいた。
デウスエクスマキナの体が、タイプセツナに向き直る。
そして、レーザーは発射された。
それを回避して、タイプセツナは突進する。
何か、違和感があった。その違和感の正体が何なのか、マイにもわからない。
タイプハクアを動かす。水平の形に、剣を構える。
「無駄です!」
タイプハクアの首がもがれた。メインカメラが破損し、マイはコックピットハッチを開く。
タイプセツナに向かって、炎弾が放たれる。三十はある数だ。それは、タイプセツナを包囲し、爆破し、空戦能力を失わせた。
回復させてあげたかった。けれども、距離が遠すぎる。
だから、彼らからデウスエクスマキナを遠ざけたと言うのに。
その、落ちていくタイプセツナの背後から、現れた機影があった。
タイプジン。剣を水平、やや後方に隠すように構えて前進している。
「なに……っ?」
デウスエクスマキナに、初めて動揺が見えた。
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
リルカの高笑いが響き渡る。
デウスエクスマキナのバリアに、剣が入った。そしてそれは、バリアとその生成装置を破壊してデウスエクスマキナを切り裂いていく。
「馬鹿な、機動力で劣るタイプジン風情が……!」
「この力をくれた人は言った! 最後の一秒まで、生き抜くことを考えろ、と! 私なりの答えが、これ!」
そして、タイプジンは落下していく。
「後は、煮るなり焼くなり好きにしてー」
そこに向かって、星の奏者はレーザーを放とうとする。
そこを、タイプハクアの魔法剣がコックピットごと真っ二つに切り裂いていた。
デウスエクスマキナは落ちていく。機械じかけの神は落ちていく。かと思われた。
しかし、その下半身は、その場に残って微動だにもしていないのだった。




