第四話『リルカ』(2/2)
今回出発した機体は三機のみだった。
タイプハクア、タイプリッカ、タイプセツナ。いずれもエクストラモデルだ。
しかし、敵はエクストラモデル最強のタイプマリ。油断できる相手ではない。
「なんでいつの間にお前が仲間になっているかなあ」
「俺は仲間になったつもりはない。故郷のメリットを考えて、交渉の材料として協力しているだけだ」
「本当ならその機体取り上げられてるんだからな、感謝しろよな」
ダイカとルキが言い争っている。
「それは本当ならダイカも一緒だろぉ……?」
思わず口を挟むマイだった。
「そりゃそうだけどよお。俺は今はマイの仲間だからな、な?」
メイが聞いていたらまた癇癪を起こしそうだなあとマイは思う。
その時のことだった。
ルキが強張った口調で言った。
「結界を貼れ!」
「まだ早いだろ」
ダイカは呑気な口調だ。
「良いから結界を!」
その時のことだった。間一髪でパイロットへの直撃は避けたが、コックピットが貫かれていた。
矢のように飛んできたタイプマリが、タイプハクアのコックピットを貫いたのだ。
そのまま、剣が振り上げられ、タイプハクアは大きく切り裂かれる。
「うわああ!」
ダイカが魔力供給防止の結界を張ったのが感じ取られた。回復能力が機能しない。
タイプマリは後方に飛んで、着地した。遥か後方に撤退しようとしたのに、失敗したといった感じの動きだった。
そのコックピットを、タイプリッカの魔導レーザーが貫いていた。
「ダイカ……!」
「言うな、マイ。今回は、仕方がないことだった。ハクア博士にも言われていたことだ」
「けど……! 重荷を貴方だけに背負わせるなんて」
「どうせ汚れた手」
「油断するな!」
剣が飛んできて、タイプリッカの腰に突き刺さった。それを、タイプマリを踏み越えて、ノーマルモデルが掴み取り、切り下げる。
「うわっ、空戦能力が!」
「だから油断するなと言ったのだ!」
状況にはまだ余裕があった。敵はノーマルモデルが一機。こちらにはタイプセツナがいる。
だが、当然と言えば当然。ノーマルモデルは、手負いのタイプハクアを狙ってきたのだ。
「危ない!」
タイプセツナが前に出て、タイプハクアを庇う。
そして、切り結び始める。しかし、決めきれない。
「何……?」
ルキが戸惑いの声を上げる。
そしてノーマルモデルは、タイプセツナを踏み越えて、タイプハクアに再び挑みかかった。
空中でタイプハクアとノーマルモデルが切り結ぶ。しかし、すぐにノーマルモデルは落下していった。
「あはははは、面白い! あの、タイプマリの一撃を避けるだなんて!」
落下地点のセツナの攻撃を、ローラー移動としゃがむ動作でノーマルモデルは回避する。
「ねえ、貴女の名前はなあに? 私は、リルカ!」
「マイ……タイプハクアのパイロット、マイ!」
不安に突き動かされるように、マイは叫んでいた。
このパイロットは、どこかおかしい。そんな予感があった。
「そう、マイ。マイね。また遊ぼうね! マイ!」
そう言って、リルカは去って行った。
「追うか……?」
ダイカが言う。
「結界を解いて。回復能力で取り敢えず全員の機体を万全の状態にしましょう」
「わ、わかった」
ダイカが結界を解く。
タイプハクアの回復能力によって、損傷したコックピットが回復していく。
「後は北の集落を攻めて長を説得するだけだけど……タイプマリを放置しておくわけにはいかないわ。一時、撤収しましょう」
「そうだな……さっきの敵にタイプマリを手渡すなんて、考えたくもないぜ」
「了解した」
そうして、三機は一機を鹵獲して撤収を始めた。
リルカ。
その名前は、奇妙な予感とともにマイの胸に刻みつけられた。
まるで、前世の知り合いと会ったかのようだと思ったのだ。
集落に戻ると、歓声がマイ達を待ち受けていた。
「もうエクストラモデルの脅威に怯えなくて良いんだなー!」
「これで平和な王国が誕生するぜー!」
皆、お祭り騒ぎだ。
マイはそれを、複雑な心境で眺めていた。
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マイは、集落の長の家へとやって来ていた。
「長、話があります」
「なんだね、改まって」
「この集落は、他の集落の自治を認めていないと聞きました。何故、そのようなことを……?」
「王国の体制を万全にするためだよ」
「と言いますと?」
「人が栄えると、貴族と言うものが産まれ始める。西の集落、北の集落、東の集落、いずれも既得権益を持った層がのさばっていた。そう言った層が力を持つと危うい。日が沈まない王国もそう言った層に力を持たれると危うい」
「しかし、他の集落は他の集落です。亡命してくる層を引き受け、認める層は認めなくてはいけないのでは?」
長は、しばらく考え込んでいたが、窓の外に視線を向けた。
「……王国に一番あってはならないものは何かわかるかね?」
「佞臣でしょうか?」
「国王に疑念を持つ英雄、だよ……」
その言葉の意図を察した時には遅かった。マイは腹部に熱を感じていた。剣が、自分の腹部を貫いている。長は予め、兵を潜ませていたのだ。
よろけながら、部屋を出ようとする。
そして、入ってきたハクア博士と目が合った所で、意識が遠ざかっていくのを感じた。
ハクア博士はいつもの無感情な様子で、こう告げていた。
「タイプジンが、目を覚ましました」
「何……?」
長の動揺したような声が、部屋に響いた。
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リルカは考えていた。
(空を飛べるなんてずるいなあ……)
集落はタイプマリを失って、右へ左への大騒ぎだ。
そんな中で、リルカはノーマルモデルのコックピットに座って、ただ考え込んでいる。
(空を飛べるだけで良い。それだけで、マイと遊べるのに……。遊びたい、遊びたい、マイと遊びたい……)
その一念は、具現化しそうなほどの狂想的な思いとなってリルカの中を駆け巡った。
その時だった。
リルカは、それを察した。
リルカの後部で、土が盛り上がってきている。そして、それは立ち上がった。
エクストラモデル、タイプジン。
決闘型エクストラモデル。
その内部に、自身の生体コードがスキャンされたことをリルカは察した。
リルカはコックピットから外に出ると、廻るように踊り始めた。
「あははははははは、あはははははははは」
これでマイと遊べる。
マイともう一度、遊べる。
次回『マイ対リルカ』




