第四話『リルカ』(1/2)
集落に戻ると、そこにはノーマルモデルの残骸が重ね合わせられていた。
これが彼らの脅しなのだという。
倒されたノーマルモデルはいずれも深々と斬られており、よほどの斬撃を受けたことが伺われる。
マイが戻るなり、緊急対策会議が開かれた。
壇上に上がったのは、マイが見たことがない女性だった。赤い縁の眼鏡をかけて、足元まで伸びる珍しい長髪をしている。
「ハクア博士です」
長が紹介をする。
ハクア、その名前に、マイは戸惑いを感じた。
タイプハクアと同じ名前だ。
しかし、偶然の一致だろうと片付けることにした。親がエクストラモデルに憧れてつけた、なんてありがちな理由かもしれない。
「タイプマリは確かに脅威です。十六体のノーマルモデルを一機で駆逐するエクストラモデルは中々いないでしょう。しかし、我々はそれに対するカウンターを持ち合わせている」
どよめきが起こる。
ハクアの指が、真っ直ぐにダイカを指差していた。
「タイプリッカです」
ダイカは戸惑うように後頭部に両手をやった。
「遠距離から狙い撃てってのかよ? タイプハクアにすら接近されたんだぜ?」
「タイプマリは……これは、タイプハクアも同じことなのですが、周囲からの魔力を吸収して自らの力に変えます。タイプハクアは回復の力に、タイプマリは破壊の力に。その周囲からの魔力の供給がストップするとどうなるか」
再び、どよめきが起こる。
「ま、ノーマルモデルと大差ない性能になるでしょうね。その、魔力供給防止の結界を張る、または解除する力をタイプリッカは有しているわけです」
喝采が巻き起こった。
「おお、いきなり俺っち英雄?」
「機体の力ですよ」
浮かれるダイカに、メイが釘を刺す。
マイは、ゆっくりと挙手していた。
周囲の声が静まり、ハクアが怜悧にも見える感情の伴わぬ視線をマイに向ける。
「はい、そこ」
「その魔力供給防止の結界が事実だとして、貴女はどうしてその事実を知り得ているのですか?」
再度、どよめきが起こる。
長が、口を開いた。
「ハクア君は考古学の才女でね。同時に魔導スーツのエンジニアでもある。我々がこれだけの台数の魔導スーツを所有できたのも彼女の力が大きい。今回破壊されたノーマルモデルも、きっと彼女の手によって修復されるだろう」
「そうですか……」
何か、喉の奥に魚の小骨が引っかかったような違和感があった。
けれども、それを追求できる空気ではなかった。
早速、タイプリッカの魔力供給防止の結界を張る実験が行われた。
ハクア博士が、真っ二つに切ったリンゴをタイプハクアに手渡す。しかし、いくら回復させようとしても回復の光が出なかった。
「回復、出来ません……」
どよめきが起こる。
「これは凄い」
「本物だ。流石ハクア博士」
実験を終え、機体を降りる。すると、ハクア博士が待っていた。
耳元で呟かれた。
「タイプマリと接触したなら、コックピットを潰して」
マイは一瞬で真っ青になる。
「何故、そんなことを」
「タイプジンが出てくる前に、ことを終わらせなくてはならない……」
そうとだけ言うと、ハクア博士は長髪をなびかせて去って行った。
違和感は、ますます増すばかりだった。




