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第一話『エクストラモデル』(1/3)

 メイは絶体絶命の窮地にあった。

 背後には崖。目の前には二体の魔導スーツ。こちらも魔導スーツに乗ってはいるものの、剣を持っていたその右腕は破壊され、左肩に装着されたガドリング砲も沈黙していた。

 魔導スーツ。人類が作り出した魔法技術の粋を極めた巨人。人を内部に招き入れて操縦を許すその存在によって戦争は悲惨の一途を辿った。

 様々な国が滅び、様々なコミュニティが崩壊し、人は自らを縛る秩序という名の鎖を失った。

 人口は激減し、大地を覆わんとしていた人類は、各地に点々と住まうのみになった。

 そして今、小さな集落にある自警団の持つたった一体の魔導スーツ。それがメイが乗るものだった。


 脱出を考える。下策だ。

 この魔導スーツが失われれば、集落は野盗に蹂躙されるだけだろう。

 そして、結局はメイの命も失われるのだ。

 ならば、ここで死ぬか? それもまた、下策だ。


(どうすれば良いの……)


 剣を構えて近づいてくる二体の魔導スーツに対して後退しながら、メイは考える。

 その足が、崖を踏み外しかけた。砕け散った石が転がって、遥か下方に見える海に落ちていった。


(神様、助けてください。私はなんでもします。処女だって捧げます)


 メイは祈った。一心に祈った。


(食事も奢ってくれる?)


 返事が、あった。

 女神の声はフランクだった。


(はい、なんだって奢ります。豚の丸焼きだって奢ってかまいません)


「その誓い、乗った!」


 海から飛行物が上昇して来た。魔導スーツだ。魔導スーツが空を飛ぶ? その事実に、まずメイは驚愕した。

 それは、前方の二体の魔導スーツも同じらしい。メイの背後に翻る魔導スーツに戸惑い、後退し始めている。


 それは、綺麗な銀色の魔導スーツだった。背中から前方にかけ六本の肋骨のような突起が伸びている。美術用に作られたかのように、手足の造形が細かい。まるで、巷にある魔導スーツが紛い物であるかのように。手には、一本の剣を持っていた。


「エクストラモデル……?」


 メイは、思わず呟いていた。

 エクストラモデル。終末戦争をたった五体で沈静化させたという伝説の機体だ。その機体はいずれも空を飛び、銀の色に包まれているという。


「この子との契約があるからね」


 エクストラモデルから女性の声が響いた。さっきの女神様の声だ。


「あんたら二人は、ここで沈んでもらう」


 そう言うと、エクストラモデルは空を飛び、敵二体の頭上を取った。尋常な機動力ではない。

 敵二体の剣と、エクストラモデルの持つ剣が交差する。

 しかし、敵二体は押され、その手に持つ剣はひび割れた。

 エクストラモデルは空中で翻る。その肋骨のようなパーツから六つの緑色の光が照射される。それは、敵の足を見事に切断し、戦力を無効化させていた。

 敵パイロットは離脱し、逃げていく。


「ま、こんなもんでしょ」


 エクストラモデルは大地に降り立って、剣を担ぐと、コックピットの前に手を置いてしゃがみこんだ。

 そのまま、機体から女性が下りてくる。

 彼女は跳ねるように機体の上を移動して、地上に降り立った。


「あんたも降りてきなよ。飯奢るって約束、まだだからね」


 日光のように眩しい女性だった。長い綺麗な髪が風に揺れている。


「うちの集落に案内します。機体から降りるのはそこで。あと、敵の機体を鹵獲するのを手伝って下さい」


「了解」


 女性は再び髪を揺らしながら飛び跳ねて、エクストラモデルに乗る。


(凄いものを、見た……)


 メイは、そう思っていた。お伽噺としか思っていなかったエクストラモデル。それが、目の前にある。メイにとっては、世界がひっくり返らんばかりの衝撃だった。

 エクストラモデルは軽々と敵の二体を持ち上げて飛んで行く。なんという腕力だろう。

 その力強さが、まさに伝説の証明なのだ。

 メイは、胸が高鳴るのを感じていた。


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