帝「銭湯は男の戦闘場や!」有海「闘い、闘ったんだ‥‥!」
「言っておくが、戦闘と銭湯という下らないごろ合わせではない。」
「銭湯には、反社会的勢力の人間も来る。対抗手段を持たなければ、当然、死ぬ。」
「油断が命取りだ!分かったか?」
有海は、七鞠が隠し持っている拳銃を持ちだしてきたらしい。
「いやいやいやいや、武器持って入ったら余計狙われるで?大人しくしとるんが一番や。あと銭湯で拳銃は湿気るから無意味やろ!?」
そして、ついてきたなななな様も文句を垂れる。
「な、な、な、何で私が一緒に入るんですかーっ!?小春さんと凛さんがいるのに!」
「なななな様も風呂に入るんや!庶民の生活を堪能せんで、何が神や!笑わせる!」
「そんなの、私の勝手です!」
「小春は今音信不通や。そして凛は1日で交代するクローンやから風呂に入る必要が無い!」
「な、な、な、なるほど。小学生ぐらいなら保護者と入っていてもおかしくないです!」
湯船につかる帝を尻目に、有海はなななな様を見守っている。ちなみに有海は下半身がバイクなので、女児の裸を見ようが何も感じない。有海は変態では、ないのだ!
「シャンプーハットってゴムで出来てるんですね。ずっと触っていたくなります。」
「1人で身体を洗えるなら先に言って欲しかったが‥‥。まあいい。変なことをする子宮崇拝主義者どもから、なななな様を守るという役目がある。」
「あー、良い湯やなー。」
湯船につかる帝は、カラーコーンを股間のところに浮かべていた。もちろん、それを快く思わぬ者も、またいた。
「おう、兄ちゃん。そのでかいカラーコーン、馬鹿にしとるんか?」
全身入れ墨の男が、帝に話しかけてきたのだ。
「おう?そっちこそ。そのタトゥー。偉い間抜けやな?なんで女の裸を刺青しとるんや?恥ずかしくないんか?」
男の入れ墨は、いわゆるアイコラであった。女の裸と顔写真を合成して行う遊戯。それが、男に刻まれていた。
「このタトゥーはな、一度俺の皮膚を全部はがして作んだよ。」
「ど、どういうことや!?痛くないんか!?」
「痛いさ。だがそれが愛だ。」
男は、自らの痛みの遍歴を語り始める。
「具体的には、俺の大好きなアナウンサーのアイコラ画像を用意する。そしてはがした皮膚に業務用プリンターでプリント。その皮膚をまた貼り直したんや。どうや?すごいやろ?俺の肉体は、園沢様への忠誠‥‥それを表している。」
男は、園沢というアナウンサーに陶酔しているようだ。
「貴様、その狂信、もはや芸術だ。」
有海はその異常な愛情を揶揄するも、男は無視した。
「話を戻すで。股間のところになあ、カラーコーンを置くって言うのはなあ?男のシンボルのでかさ、プライドをかけた挑戦状やぞ?兄ちゃん。わかっとるんか?」
「そ、せや!ワイのシンボルの方がでかいで!」
性懲りもなく、帝は虚勢を張る。
「本当にそうか?」
男は湯船から立ち上がる。その股間には、長刀が生えていた。2mはある。
「な、なんやて!?あいつ、長刀使いやったんか!?こりゃかなわんで!」
「はははは!これに懲りたらもう変なアピールはせんことやな!」
帝は諦めないところがいい。彼が不良を名乗っているのもそれで、喧嘩は全く強くないが、ハッタリと嘘で相手をビビらせてきた。さらに今回は、打ち出の小づちカラーコーンがある。勝てないわけがない。
「いや、これは打ち出の小づち‥‥なにか長い物を出せば、あの長刀野郎を短小扱いできるで‥‥。何がいるんや‥‥考えろ‥‥考えるんや。」
「有海。あんたは正しかった!銭湯は、戦闘場や!」
「そうや!これや!」
帝は、活路を見出した。
「はあー。そんなSサイズで気張ってるようじゃ世話無いで。みいや。この服陣帝様のマグナムは長刀なんかよりずっと、ずっと太くて長いで!」
「見せてみろや。そのちっぽいカラーコーンに折れ曲がって入ってるのかあ?」
「生で拝ませてやるで!ここからはほぼ18禁や!!なななな様も目をつぶっとき!」
股間のカラーコーンをゆっくり上に持ち上げていく。そこには、電信柱があった。
「な、な、な、何ですとー!?で、電信柱!?」
「そうや。ワイは『股間から電信柱生えるマン』。『服陣帝』はその略称にすぎなかったというわけや。」
「ほれ。信じられんなら見せてやるで。」
そのそびえたつ電信柱を男はまざまざと見つめる。
「た、確かに本物だ。俺の負けだわ。兄ちゃん。」
こうして帝は笑い、友情が芽生えるはずだった。しかし帝は器が小さいため、そうはならない。赦す代わりに、帝が放った言葉とは‥‥
「舐めろや。」
「え?」
「敗者は勝者の靴を舐めるんやで。でもここに靴はない。だから電信柱を舐めろや。ほれほれー!」
「!やめろ!湯船に電信柱を付けたら感電‥‥うごごごごごごごごごごごごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「あ。」
電信柱の先端部分が湯船についたせいで漏電。
「あわわ‥‥どうしよう。ワイ捕まってしまう。ここで捕まったら一生牢屋や‥‥。死刑もありうる‥‥。」
友の危険を察知した有海は、なななな様をとりあえず外に出し、凛に電話することにした。
『というわけで、帝を助けてほしい。彼に悪気はないのだ。』
『ええ!?そんなのギャグじゃないッスか!?でも少年法があるし‥‥。』
『いや、股間の電信柱の巨大さと漏電のせいで帝を銭湯から出せないのだ。だから逮捕できない。故にその場で殺処分もありうると聞いた。SATがあの銭湯に突入するまであと12時間!それまでに上層部を説得してほしい!ちなみにもしSATが入ってきた場合、僕も巻き込まれる!』
『わ、分かったッス!じゃあ電話切るッスよ!』
凛が考えることは1つ。コネの活用である。
『もしもし。パパ?凛、ちょっとお願いがあって。友達が冤罪で射殺されようとしてるの。警察に顔が利くでしょ?助けて♡』
『うーん‥‥さすがにSATはどうにもできないなあ。』プツッ
「だめだ!あの人役に立たないッス!こういう場合はテレビで同時に情報を収集‥‥。」
「夜王ニュースだ。宿命の女騎士、園沢だ。」
「どうも!金田四です!」
「現在銭湯に立てこもっている男は○○市在住の中学生とみられている。彼の股間に設置されている電信柱から漏電していることにより、既に銭湯の客が電気ショックで心肺停止している可能性が高い。SATは電信柱の中学生の殺処分を先ほど決定したが、12時間後に突入を決めているようだ。どうやらこのあたり一帯の電力供給をストップすることで漏電を止めようということだな。それができるのが12時間後ということだと思われる。」
「しかし金田四。なぜ電信柱が銭湯にあるかわかるか?」
「い、いえ、特に‥‥。」
「社会情勢への知見が足りぬな。ARK。最近騒がせている怪盗ARKだ。ARKはちょうど昨日、電信柱を盗むという予告状を市役所に届けている。つまりなんとなく電信柱を盗んだはいいものの、大きすぎるため処理に困り、何の罪もない中学生の股間にくっつけたのだ。怪盗ARKはよく意味が分からない物を盗む傾向にある。しかも必ず予告状を送りつけるマメさを見せている。」
「なるほど、園沢アナ、さすがです!」
「この異常な男根崇拝からして、怪盗ARKはユーフォリアの一員であると私は睨んでいる。」
「ゆーふぉりあ?なんでしょうか、それは。」
「脳内麻薬を盗み、生み出し、支配する。そうして全人類を快楽の奴隷とすることを目的としている悪の秘密結社だ。」
「だからここで言ってやろう。断言してやる。」
「いやいや、机のうえに乗らないでください!!」
「言ってやる‥‥邪魔をするな‥‥。そう、『幸福は罪だ』!」
「しばらくお待ちください」
『もしもし有海!』
『なんだ?』
『ユーフォリア‥‥とやらと今回の一件、関係あるらしいっすよ!黒幕がユーフォリアだとかニュースで言ってたッス!』
『ああ。僕も今銭湯の休憩スペースで見ている。』
『は!?帝はほったらかしッスか!?』
『いいや、なななな様に聞いたよ。どうやらあの打ち出の小づち、ドラ○もんの四次元ポケットに似たような構造になっているようだ。なら話は早い。四次元ポケットは入れ直すこともできる。つまり、電信柱に打ち出の小づちカラーコーンをかぶせれば奴の股間は元に戻る。』
『そうです!あと有海さんのおねがいで、銭湯にいた皆さんの身体を全部ゴムにしました!びよんびよんしてて楽しいですよ!』
『いててて!やめるんや!いくらゴムでもひっぱったら痛いことには変わりあらへん!』
『ゴムは電気を通さない。だから皆無事ってことッスか。』
『しびれるねえ、兄ちゃん!ここまでやれるやつは初めてだ。』
『ああ。ワイは『BE 最強』やからなあ!』
こうして、友情が芽生えたのだった。
「貴方にお願いがある。僕も園沢アナウンサーファンクラブに入れてくれないだろうか。」
「ははははは!いいだろう。だが条件があるわ。ファンたる者、必ず園沢様のタトゥーを入れなければいけないで。」
男は有海とも語りあい、そして、笑いあった。
「なるほど。痛車か‥‥。アイコラじゃないといけないのだろう?皮膚を全部はがして、印刷して貼り付ける‥‥。それは流石にできないから、『チャリオット@脳内麻薬盗まれない』の部分にペイントするとしよう。」
「そうや。アイコラは自分で作りな。ポルノ女優の顔に園沢アナの顔を貼り付けるといえば簡単そうに聞こえるやろ?でも実際やってみると難しいで。」
「分かった!ありがとう!感謝の極みだ!」
「ああ!また何かあったら兄ちゃんに任せえ!同じファンなんやからな!」
こうして、銭湯の先に戦闘はある。だが、そこで終わりではない。
闘いの後には、友情があるのだ。
つづく。




