帝「ワイは『BE 最強』や!」有海「BEをつける意味があるのか?」
「『なななな様』と喧嘩しちまった。今日はあそこで拗ねてる。」
「ストライキです!階級闘争です!」
「みてみてー。私掃除機ロボに食べられてるよー。」
小春は精一杯なななな様の機嫌を取りなおそうとしている。
「どっちが子供なんだ‥‥。」
「とにかく、分かったことが一つある。なななな様は願いをかなえることはできても、叶い方まではコントロール出来ねえ。そう。まるで複雑なプログラムを間に合わせで訂正したというよりかは、プログラマーと上司の意思疎通が取れていない‥‥。そういった印象を受けるんだ。」
「確かに、そう考えるのが当然か‥‥‥‥。この世界はプログラムだったということか?」
「そんなわけないです!神様が言うから間違いありません!」
「なななな様自体に世界改変の力が無い可能性がある。」
「つまり、神様は他にもいるということか‥‥?」
「その可能性は十二分にある。あいつとの会話で、しばしば天界という言葉があったんだよ。」
「どうせ、私はポンコツの神様です。」
「いやいや、おもしろけりゃいいんだよ。細かいこと考えるな。お前は最高の神様だぜ!」
「ほめてもお菓子しか出ませんよ!」
「出してみろよ!」
「いいんですか?」
その瞬間、窓の外で異変が生じ、有海はそれを見逃さなかった。
「何だこれは!流星群!?」
「夜空の星をこんぺいとうにして降らせてます。勝手に拾って食べてください。」
「わかったー!いってくるー!」
小春は我先にと研究所を飛び出していったのだ。
「鎌は没収したからな。まあ大丈夫だろう。」
「‥‥‥‥ドクター七鞠。卓越した考察と緻密なる精査を喪失した科学は、悲劇を巻き起こすだけだ!僕の故郷だってそうだった‥‥。」
「ふん!もちろん面白ければ細かいことを考えても良いぜ。とにかく、3人も助手が入った。これでなななな様の研究も捗るだろう。さて、そろそろ助手募集も締めきるか‥‥。これ以上門戸を広げても何も起こらないだろうからな。」
「それはどうやろなあ?」
「な、な、な、なんですかこの気配は‥‥‥‥。」
嵐が吹き荒れ、雷鳴が轟く!まるで、この後に起こるかもしれない惨劇を予兆するかのように!全員が感じていた‥‥。
ドアの向こうに、『いる』!!!
「ただものじゃねえな?入りやがれ!」
「おいーっす!真打ち登場やで!!」
ドアを開けて入って来たのは何の変哲もない男子高校生だった。ただ、手にカラーコーンを持っているが、それを除けば普通の男だ。だが、『気配が違う』。
「油断するな有海!おそらくお前じゃ勝てねえ!‥‥名前は?」
「ワイは服陣帝!関西生まれの関西育ちや。例のチラシを見てきたで!」
「面白いのが来たじゃねえか。面接を開始する!さあ、何だお前の個性は!」
「『BE 最強』。」
「な、な、な、なんですとー!?人ならだれしもが追い求める『BE 最強』ですか!?」
「具体的には――16歳にして身長192cm 体重130kg 100m走 マイナス2秒、握力300kgや。プロ棋士を手足に10kgの重り付きで殴り倒したこともあれば、プロボクサーに飛車落ちで勝ったこともあるで。」
「マイナッスか!?走っている間時間が戻るってことッス!?」
「どうする?俺たちにすら扱えないほど強力かもしれねえ。」
「身長192cmとか、すごいッスねえ。」
バイク人間になった有海は身長という概念から既に解き放たれており、七鞠は椅子に座っているので分からない。凛は155cmぐらいなので、この空間で一番身長が高いのは帝だ。だから彼が身長を450cmと言い張っても、誰も反証できない。皆、彼より背が低いのだから。
緊張が張り詰めている間に、小春が帰って来た。
「ただいまー。こんなにたくさんひろったよー。」
手にどっさりこんぺいとうを持ってたいそうご満足げだ。
「なななな様。全部戻してくれ。」
「はいはい!」
小春の手の金平糖がはじけ飛んだ。それは弾丸のような速さで天井を突き破り、天球まで飛んでいったのだった。
「もどっちゃったー‥‥‥‥。」
しかし、小春が戻って来たことによって、1つの事実が明らかになる。
「‥‥てあれ?殺人鬼。身長は何センチッスか?明らかにこの関西人より高いような気がするッス‥‥。」
そう。小春は意外と身長が高い。175cmぐらいある。帝は165cmぐらいしかないので、帝の嘘を可能にしていた状況が崩れ去ってしまったのだ。
(まずい!この女の身長は175ぐらいや!ワイはそれより低いんや‥‥下手したらばれてまう!嘘がばれたら‥‥嘘がばれたら‥‥あああああああああほんと無意識に嘘ついてまう‥‥‥‥どうしたらええんや‥‥。)
「震えている‥‥。即死攻撃を放ってくるに違いない!構えろ!」
七鞠はおもちゃの拳銃を帝に突きつけるが、それを無視して小春が口を開いた。
「んー?私はおひさまと同じぐらいの大きさだよー。ちなみに体重はリンゴ-2個分。」
「体重マイナッス!!?いや、それはどうでもいいッス。じゃあ帝っちの身長も太陽より小さくても矛盾はないッスね。たとえ192cmでも太陽より小さくて当然ッス。」
「帝っち‥‥?‥‥まあそうや!ワイはでかいんや!」
(女の子からはじめてあだ名で呼んでもらえた‥‥ありがとう、神様!)
「どういたしましてです。‥‥でもおかしいですよ!どう考えても小春さんの身長はおひさまよりないです!」
「目に見える物が正しいとは、限らない。神ともあろうものが、錯覚に惑わされることがあってはならないと思う。」
「う‥‥うん‥‥?」
「遠近法だ。お前は部屋の角にいるから分からないだろうが、実は小春より帝の方が手前にいる。人間の目は、近くにある物ほど大きく見える。だから太陽が遠くにあり、人間が近くにいるからあまり差が無いように見える。」
「は、はい。わかりました、有海さん!」
「‥‥たしかに、戦力にはなりうるぜ。だが、大切なのはヒート・ハート!そしてユニーク!お前の闘志を示しやがれ!」
「まず、ワイの闘志は、これや。」
「人を殺したことがあるで。すでに3人。力を制御できない故の悲劇。ダークヒーローや。」
「なんや、おどろかんのか?」
「いや、この人50人は殺してるらしいです‥‥。」
「え、この子が!?な、ならワイはあの山本総理大臣と喋ったことがあるで!」
「なんや、おどろかんのか?」
「わたしと既に男女の仲ッス。山本パパはああ見えて意外とバブみを求めているッスよ。膝枕してあげたらものすごくオギャってきたッス。」
「何を言っているのかよくわからないのに、頭が痛い。」
「嘘だと思うなら、このおしゃぶりの唾液をDNA鑑定すればいいッスよ。」
「あんたも、顔に似合わず肉食系なんやなー。ならこれはどうや?ワイは秘密結社ユーフォリアの一員や。電磁波工作をやっとるで。」
「何だと!?貴様ユーフォリアだったのか!?しかし不自然だ。ユーフォリアは主に重力波を使って脳内麻薬工作をする。電波を複合した電磁波工作をするとは聞いたことが無い。詳しく聞かせてほしい!」
「最近寒いし、気分も変わったんや。そうであってほしいで!」
「嘘を言うな!ユーフォリアは極寒マイナス238度惑星から来た宇宙人軍団だ。何故地球の寒さ如きで気分が変わる!?」
「!?ご、ごめん‥‥‥‥。」
「ま、まあいい。帝!お前の個性を見せてみろよ!こんなもんじゃねえだろ!?」
「ああ!!そうや!ワイはすごいんやで!これを見るんや。『BE 最強』の帝様にふさわしい、『ALWAYS BE 最強』のアイテムや!」
帝は手に持っていた『ALWAYS BE 最強』のアイテムを見せびらかす。
「どう見てもカラーコーンじゃねえか。」
「カラーコーンッス。」
「カラーコーンだねえ。」
「カラーコーンだ!これは、まぎれもないカラーコーンだ。」
(ああ‥‥神様‥‥お願いや‥‥‥‥‥‥。助けてくれ‥‥‥‥。道端で拾ってきたカラーコーンじゃ何にもならへん‥‥これがドラえ○んの四次元ポケットやったらええのに‥‥ていうかきっとそうや。ワイは『BE 最強』。最強なら最強のアイテム持ってて当然やろ。だから持ってない方がおかしいんや。だからこれは四次元ポケットなんや。ああ。なんでワイはこんなしょーもない人間なんや。もっと世間を騒がせたい。強くなりたい‥‥。)
しかし、有海が何かに気がついた。カラーコーンは、普通のカラーコーンではなかった。
「!!カラーコーンをよく見てみろ!人類が決して見逃してはいけないサイン、ここにある。」
「なんじゃこりゃあ!?『打ち出の小づち』!?」
七鞠ですらびっくりするそれは、ただのカラーコーンではなかった。
「そうやで!カラーコーンに見えるやろ!でもよく見ると『打ち出の小づち』って書いてあるんや。ここからいろんなものがでてくる!好きなもん言ってみぃ!」
(よーし、こうなったら言ったもん勝ちや!!)
「幸福。」
「ほら。出してやったで。ちょっと幸せな気分にならんか?」
「誤差の範囲内だが‥‥幸福度が少し増したか?プラシーボ効果か!?わからない‥‥わからない‥‥‥‥。だが否定するのに十分な根拠もない!」
「宝石がほしいなー。100カラットでいいよ。」
「ふふふ‥‥。そのリクエスト、待ってたで!ほい!!」
「わーい!きれいだー!んー?これ、唐揚げかもしれないなー。うーん‥‥。」
「SWK48のチケットをくれ!」
「ああ、お安いご用や!」
「なるほど‥‥。本物だ‥‥。だがこれは去年のライブチケットだな。」
「さあ。そこのお姉ちゃんも言うんや!」
「子宮用爆竹。」
「え?」
「子宮用爆竹。」
「‥‥あんたはかぐや姫か?まあいい。宝石やチケットならまだしも、へんてこな物は取り出すのに時間がかかるんや。明日には持ってきたる。」
「とにかく。こいつは仲間に加えて損はないと思っている。何よりもおもしれえ奴だ。皆もそうだろ?」
「そういうことや!幼女研究に混ぜてもらうで!」
「‥‥ちょっと待ってもらおうか。帝。」
「なんやなんやー?打ち出の小づち持ち最強関西人、服陣帝様になんの用やー?」
「握力300kgなんだろう!?人を殺すぐらい力加減ができない貴様が、何故カラーコーンを握り潰さず持てている!」
「あ‥‥。」
「なるほど。全てうそだったッスか。」
「プロ棋士を殴り倒してプロボクサーに将棋で勝ったのはほんまや。」
「思い返してみれば、偉業でも何でもないじゃないか。」
「だが、打ち出の小づちは使えるぜ。ここにいてオーケーだ!」
「有りがたき幸せ!ほんま、感謝やで!」
「よろしくやで、有海!小春!そして凛ちゃん!」
「わたしだけ馴れ馴れしいッスねえ~。帝っちのそういうとこ、嫌いじゃないッス。」
「あははははは!」
続く。




