凛「永遠=無限ッスか?」小春「そんなの知らないやい!」
凛ちゃん登場です!
「何なのだこれは!!下半身が『チャリオット@脳内麻薬盗まれない』と結合している!ドクター七鞠!!貴方には説明する義務がある!僕に一体何をした!?」
「ははは。お前は罠にはまっちまったのさ。手術費+修理費分、助手してもらうからな。」
「マッドサイエンティストめ。改造人間を作り何をするつもりだ?答えろ。」
「何もしねえさ。何もな。今日はちょっくら大学に行ってくる。バイクケンタウロスに出来ることは、なななな様とあそぶことぐらいだろうよ。あ、今日お願い事しに女子高生が来るらしいから、手を出すんじゃねーぞ。有海。」
「下半身がバイクなのに、どう手を出せというのか。もう僕は子宮崇拝主義者じゃない。馬鹿にしないでもらいたい。」
「さーて、お願い事をしにきたよーっていうのはきみかなー?」
座っている女子高生は、ちょっと変な人間である。頭に赤い蝋燭とマッチを挿している。ただ、それを除けばそこらへんにいそうな少し華があるJKと言える。
「はいッス。初めまして。怨怪凛ッス。凛とよんでくださいッス。」
「すごくこわい名字ー。呪術の一族なのかなー?」
「そうッス。名字のせいでからかわれて‥‥‥‥。」
「でも、頭に蝋燭がささってるよー。なんか形からはいってるよー。」
「これは、SM用ッス。赤い奴は融点が低く、豚に被虐・隷属的快楽を叩き込むのに非常に有用ッス。」
「えすえむ‥‥?ぶたさんにたたきこむものだよねー‥‥。そうか!小麦粉かー!」
「トンカツでも作る気ッスか!?」
なななな様はみかん箱の上に乗り、大げさなポーズをとる。
「人の子よ‥‥。汝に幸あらんことを‥‥。」
「すごいッス。幼女の神様と言えど、威厳たっぷりッス。」
「凛よ!お願い事と言うのは何なのだ?さあ、懺悔の時であふ!」
「噛んじゃだめだよー。」
「慣れないことをするものではないですね。ごめんなさい。」
一瞬で馬脚を現した神様の前で、少女は己が願いを述べる。
「‥‥‥‥わたしは、人一倍愛されたい欲求が強いッス。だからおじさんたちとデートしたりして、心の隙間を埋めているわけッス。」
「うーん、そんなものなのかなー。わたしはいつも、鳥さんやミミズさんとお話してるよー。」
「わたしは人間からしか愛を受け取れないッス。わたしが年を取ったらもう私は愛されないんじゃないかって不安になってるッス‥‥。」
「つまり、どういうことですか?」
「ずっと女子高生でいたいッス!」
「わかりました!!」
「‥‥‥‥ん?学校のセンセからッス。もしもし。」
『凛。お前は淫乱すぎるので留年だ。』
「‥‥‥‥。」
「ものすごく単純だな。」
「いやいやいやいや、そういうことじゃなくて、ずっと若くいたいってことッスよ!」
「でも戸籍がある以上、どうしても公的には年をとるだろう。何らかの方法で今の肉体を維持したとしても、この日本で年をとること自体は避けられない!それが、人類の罪なのだ!!」
有海の発言は的を得ている。結局年齢はざっくり言えば『現在の年マイナス生まれ年』なのだ。いくら凛が不死の肉体を手に入れようが年齢は増えていく。留年できる年数にも限界があり、高校生であり続けることは不可能だ。
「そうか!なら戸籍を無くせば良いッス!」
「そうすると高校には通えないだろうな。」
「うーん、むずかしいッス!!」
「まー、年齢なんていくらでもごまかせるッス。とりあえず肉体を維持したいッス。」
「わかりました!なななな、なななな、なななななー!!」
「呪文が適当すぎる!」
しかし凛はこけしになってしまった。
「確かにこけしは年を取らないっす!でも人外になるのは勘弁ッス!」
「うわーん、また失敗してしまいました‥‥。」
「とにかく、元にもどそうよー。かわいそうだよ。」
「まあ、こっちがお願いしている側ッスから、あんまり無理強いは出来ないッス。でも、凛は寂しがり屋ッス。愛されるためにずっと若くいたいっす。」
こけしから戻った凛は、やはりお願い事を変えるつもりはない。その意思に、なななな様は共鳴したようだった。
「‥‥‥‥その願い、明日までには絶対に叶えます!今日は帰っていいですよ。」
「わかったッス。ありがとうございまッス!」
「‥‥そう言えば、おふたりの名前を聞いてなかったッスねえ。」
「僕は大宰有海。脳内麻薬泥棒と闘う戦士だ。ともに闘おう!この矛盾した社会と!この社会はおかしい!未来ある大学生が、下半身をバイクと結合させられるのだから!」
「私は新城小春。こはるどんってよんでねー!私、実は『虹の橋』のおひめさまなんだー。」
「わかったッス!それじゃあ、達者でッス!」
「ふー。今日もいい汗かいたッス。」
夜道を歩く凛。しかし、それに忍びよる不穏な影。
「え‥‥。」
とにかく相手を刺激しないように早足で歩くも、あっという間に距離を詰められる。
「なんなんッスか、あんたは‥‥ってあれ!?」
「あれー。凛ちゃんだー。」
「ははは‥‥。小春さんッスか。ちょっと冗談きついッス。」
「ははははは。」
しかし気がついてしまった。小春がウェディングドレスに似合わない何かを持っていることに。
そう。凛の身長を優に超える巨大な虹色の鎌。しかし幾多もの血を吸っているからか、赤が大部分を占めているのだが‥‥‥‥。
「か、かかかかっかかかかか鎌‥‥‥!血みどろ‥‥‥‥あはははははははははははははははは!!」
「主文!凛ちゃんは、虹の橋でみみずさんとお茶会の刑だよー!」
ズシャッ!鎌は確実に、凛の首をとらえた。
「いやー、いいことしたー。」
そして小春は空を見上げたのだった。
「私はね、夜にかかる虹なんだよー。」
小春は生首となった凛に話しかける。もちろん、彼女に悪気はないのだが‥‥。
「朝王ニュースです。」
「園沢アナ!どうしたんですか!?鎧を着て‥‥反省したんですか!?」
園沢アナウンサーは鎧を着こんでいた。まるで中世の騎士である。
「もちろんだ。私の不適切な発言により、テレビ局は大損害を被ってしまった。私はこの鎧に身を包み、謝罪の念を表明する女騎士となるのだ。」
「なぜ、鎧に包むことが反省の意になるのですか!?」
「実はこの鎧、内側は満遍なく触手が這っている。本当に申し訳ないという思いがあるならば、女子アナは触手の快楽に耐えながら、原稿を淀みなく読むことができなければならない。」
「なるほど、その心がけ、素晴らしい限りです。」
「ではニュースと行こうではないか!」
「名門高校である蟹針高校。そこに通う女子高生怨戒凛(17)が無残にも殺害された。首を刈られたようだ。」
「首を‥‥。犯人は何者なんですか!?」
「『虹色の死神』だ。最近世間を騒がせている殺人鬼。鎌のような武器で首を刈る。一時期イタリアで暗躍していたようだが、とうとう日本にもやって来たようだ。そもそも日本で事件が起こる前は、都市伝説の域を出なかったが、ついに実現してしまったのだ。」
「なるほど‥‥。恐ろしい限りです。」
「残念ながら、イタリア政府と日本政府の情報共有が進んでいないせいでどうも捜査が難航している。ただ1つわかっているのは、虹色の死神は何らかの思想を持って動いているということだ。シリアルキラーにありがちな、こだわりを持った殺人方法。それが見られる。まあ、虹色の死神など私の剣でねじふせて見せる!あいつだけは、あいつだけは、絶対に許さない!奴を八つ裂きにできるのなら、悪魔とでも契約する!!」
園沢アナウンサーは剣を天に掲げた。
「頼もしい限りですね。朝王ニュースでした。」
次の日曜、小春は意気揚々と研究所に戻って来た。
「るんるんるーん。」
しかしドアを開けた瞬間、小春は自分以外が敵になったことを感じた。
「来た!あいつッス!あいつが、わたしを‥‥!」
凛が存在することに、小春は動揺を隠せない。
「有海くん!そいつは偽物だよ!だってここにいるわけないもん!不思議だなー不思議だな―なんでだろーだんでなろー‥‥。」
「とぼけるなッス!わたしは先週、小春さんに殺されたッス!はっきり、覚えているッスよ!」
「んー‥‥‥‥。なんか変だなー。」
「小春。死んでいた者がここに存在できる筈もない。そう思っているのだろう?」
「そうなのー。流石王子様!お姫様のきもちは、ぜんぶおみとおしなんだー。」
「そうか。なら君からあふれ出る焦燥の念も、偽りではないのだな?」
「偽りじゃないよー。なんで生きてるんだろー。ちんぷんかんぷんぶんぷくちゃがま。」
悩む小春に、なななな様が得意げに話す。
「ふふん!それはですね!このなななな様と七鞠さんの合体技なのです!」
「みなさん、付いてきてください!」
町はずれの廃工場。そこに七鞠は待ち構えていた。
「よく来たな。」
「貴方が七鞠さんッスか‥‥。よろしくッス。」
「おう。‥‥‥‥ここに広がっている光景は、今までの常識を覆すものかも知れねえ。それを見る勇気はあるか?」
「あるに決まっている!もったいぶらず中に入らせてもらおう!」
「そうか。じゃあ克目しやがれ!常識ってのはなあ、覆さねえと意味ねえんだよ!」
扉を開けば、何らかの製造プラントが広がっていた。そして、そこらへんの培養液の中には凛が浮かんでいる。それも、何人も。
「凛ちゃんがいっぱいだー。」
「そうです。クローンですよ。凛ちゃんはクローンを無限に作ることで、永遠の若さを手に入れたんです。」
「そう!俺のマッドサイエンティストとしてのアイデア!そしてその実行力としてのなななな様!2人合わされば、どんな常識だって覆るね!」
確かになななな様だけでは、凛はこけしになってしまった。だからなななな様はあの後七鞠に相談し、クローン人間にすることを提案したのだ。しかし、なななな様は納得がいっていないようで、
「うーん‥‥。なんでこんなわざわざややこしいことを?」
「お前は願いの叶え方をコントロールできない。『永遠の若さ』だとどうなるか予想もつかないが、俺がそれを解釈し、『クローン人間』にすることである程度具体性を持たせた。既に『クローン人間』は今まで多数のSF作家が書いてきた蓄積がある。だから具体化しやすいと判断したんだよ。」
「な、な、な、なるほどー。」
「じゃあ、研究室に戻ろうぜ。カラクリはわかっただろ?」
「これでわかったッスね?わたしは無限に蘇生できる。そして、新城小春にわたしは殺されたッス!」
「うーん、そのふたつ、つながりがないんじゃないかなー。」
「言い逃れを!独自の情報筋で手に入れたものだけど‥‥この捜査記録を見るッスー!」
凛は研究室の机の上に資料を叩きつける。
「イタリアで起こった連続殺人事件‥‥。『虹色の死神』はウェディングドレスを着ていて、虹色の鎌を持っているらしいッス!」
「ウェディングドレス!?完全に小春じゃねえか!?‥‥しっかし何で機密事項をお前が持ってんだ?」
「話はそれるけど凛はすごいッス!私は女子高生にして、最大手非合法JKデートクラブの首領!つまり、警視総監クラスの人間ともデートしたこともあれば、あの大物議員とも密会!だからいろんな方面に顔が聞くッス!」
「ためして見るッスか?新城小春。あなたのお父さんは脱税疑惑で捕まってるッスね?」
「そうなんだよー!ひどいよねー!」
『もしもしー♡ぱぱあー!凛ねー、とても困ってるんだ。新城宝蔵さんを釈放してほしいんだー。え、理由は聞かないでほしいな‥‥‥‥。うん!わかった、ありがと愛してる♡』
「で、ニュースを見ると」
凛はテレビのスイッチを付けた。
「新城宝蔵さんの脱税疑惑についてのニュースですが、警察は新城氏を不起訴処分としました。はたして、新城氏は無実だったのでしょうか?」
「そうとしか考えられぬ。奴は嵌められたに違いない。私の騎士道精神あふれる報道からすれば、考えられぬことだ。」
「ね?」
「声も出ねえな。」
「何だこれは、こんなこと、許される、はずが、無いんだ!?」
「おとうさん‥‥‥‥。よかった‥‥‥‥。」
「今度はあんたが牢獄に入る番ッスよ!!」
「とにかく、これもその筋から取り寄せた情報ッス。虹色の死神の犯行がイタリアで終わった時期と、日本で連続殺人が始まった時期‥‥それが、新城小春の渡航記録と一致しているッス。日本に来たのが1年前ッスね。ただ一つ言えることは、そこにいる新城小春の正体はイタリアを震撼させた連続殺人鬼、『虹色の死神』だということッス!」
「ええ!?私『虹色の死神』だったの!?殺人鬼だったのー!?」
「何故君がとまどっているのだ?」
「説明しろ!どういうことなんだ!?」
小春はしばらく押し黙った後、喋る決心が湧いたようだが‥‥。
「やだなー、みんな。殺人なんて、わたしがそんなことできるわけないよー!」
笑顔のまま煽ってくるのだった。
「わたしを殺そうとしたのは?」
「だから、あれは解放だってー。無駄なおにくがついてるとね、魂が虹の橋にはいけないんだよ。それが分からない人は殺人っていうけどー、とにかくあれは解放なの!ぷくーっ」
「虹の橋‥‥‥‥何だそれは!?どこにあるのだ!?」
「ここではない、どこか、かな?良い場所だよ。はちみつとミルクが流れる川もあるんだよー。」
「話すだけ無駄ッス。こいつは危険人物には間違いないッス。」
「みんな、何で私をにらむのー?笑顔わすれちゃだめだよー。‥‥‥‥いや、あの時ほどはいらないとおもうよー。もしかして、とんかつソースと豆乳が流れる川の方が好きだったりするー?」
「ああああ!!話が通じなくていらいらするッス!!」
この状況を七鞠は疑問に思っていた。何かが、七鞠のなかで引っかかっていたのだ。
(‥‥‥‥そうか、そういうことだったのか!!)
「凛。落ち付け。小春の殺人も、お前の願いの実現、その一部なんだ。」
「え‥‥どういうことッスか?」
「おかしいと思わないか?あいつがイタリアから帰って来たのは1年前。今日にいたるまで、あいつは何をしていた?」
そう。『虹色の死神』は日本に戻って来てから1年間、殺人を行っていないのだ。イタリアでの犯行ペースと照らし合わせると不自然。つまり、彼女は殺人鬼を既に引退していたと考えることができる。ならなぜ凛を殺したのか‥‥?
「‥‥‥‥。つまり、あいつが私を殺すことも、願いのうちに含まれていたってことッスか?願いが適った結果、近くにいた殺人鬼が活動を再開した‥‥?」
「もちろん。これでお前は社会的に死亡した。つまりお前がいても女子高生の幽霊という風に皆は認識する。幽霊が年を取らなくても何も不自然じゃねえ!」
「‥‥なるほど!死人は年を取らない!」
「つまり、公的な年齢と肉体的な年齢、同時に若く出来たってことだ。」
「願いは叶ったってことッスね!」
「虹の橋におくろうとしてごめんねー。まだこの世に未練があるんだねー。」
「ま、まあ、わたしのクローンを大量に作れたってことは『恩』があるッスから、殺された『怨』と少しは差し引けるッスね!!」
「その代わり、小春は二つのお願いを聞くッス。これは絶対ッス。」
「まず、わたしを必ず守ること。上記のとおり、わたしは多くの大物政治家の秘密などを握ってるッス。死んだことになったとはいえ、いつ命を狙われてもおかしくないッス。だから単純に強い小春にわたしを護衛してほしいッス。つまりデートクラブの用心棒ってことッスね。」
「いいよー。」
「そしてもう1つ‥‥。わたしもこの集まりに混ぜてほしいっす。政財界とのコネをもったわたしは、絶対にお役にたてるッス!!しかもクローン=労働力を大量にゲットしたわたしは、JKデートクラブの事業拡張を狙えるッス!!」
「もちろんだ!大歓迎に決まってるだろ!?」
こうして、ビッチ女子高生も助手となることが決定したのだった。
(クローン人間‥‥。ある程度のSF知識が無ければ、なななな様は思いつきもしない存在だ‥‥。しかし俺が具体性を持たせたことで、ある程度コントロールできたかもしれない。ただ、もう1つの方だ。凛が殺されてしまった事実に変わりはない。やはり、曖昧なお願いは危険だ‥‥。とにかく、言いたいことが一つある。)
「とんかつソースと豆乳‥‥。絶対まずいだろ!!」
次の日、凛は何食わぬ顔で登校する。もちろんクラスメートは驚愕するのだが‥‥。
「凛!?お前、殺されたんじゃなかったのか!」
「殺されたッス。今は幽霊ッスね。わたし、ものすごーくこの高校に未練があるッス。」
「そうか。俺たちが卒業しても、ずっとこの高校にとりつく気なんだな。」
「白装束来てるし、どう見ても幽霊だね。」
「ん?よく見たらお前が着てるのはバスローブじゃねえか!!」
「白装束が家になかったッス!!とにかくわたしは皆と一緒に授業を受けるッスよ!だめだというのなら呪い殺すッス!!」
「まあ、幽霊でもお前は俺たちのクラスメートだよ。」
「当然ッス!」
つづく。




