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小春「笑顔イズビューティフル」七鞠「限度があるわ!」

「今日も良朝!!集団ストーカーサーチャーON!集団ストーカー率0%!!」

「出陣だ!母さん、大学に行ってくる!」


外に出た有海は不自然なことに気がついた。道に存在するあらゆるものに、にこちゃんマークが書かれているのだ。そして行き違う人間も皆笑顔。

「なるほど。笑顔か。なるほど。ブロック塀の一つ一つのブロックにも、よく見れば笑顔が張り付いている。見た目の年齢も精神年齢も低いだろうから、あまり難しいことは考えられないのかもしれないな。人間からするとおかしなことでも、躊躇なく実行してしまうというわけか。まあ可愛いじゃないか。」

「いや、ウェディングドレスの‥‥新城小春と言ったか‥‥?あいつの方が精神年齢が低い気がしてきた。‥‥あいつのことは忘れよう。」

有海はあの悪夢をなるべく忘れるようにした。


「しかし、常にだれかに見られているような気がする‥‥‥‥。」

そう。陰謀論者の有海は、人一倍他人の悪意に敏感である。集団でストーキングすることにより、精神病に仕立て上げる手口を誰よりも理解していた。彼は、通学路でも警戒心を解かない。故に、どこを見ても笑顔がある状況は、彼を狂わせるのに十分だった。実際、何もしていない物陰にいるだけの人間を有海は見逃さなかった。


「貴様!今物陰から覗いていただろう!こんなに笑みを浮かべて‥‥何をたくらんでる!」

「あ!?笑顔から顔が動かせねえんだよ。別にお兄さんに悪いことしようとしていたわけじゃねえ。‥‥あー、笑顔じゃ迫力でねえや。腹立つが今日はこれで勘弁しといてやる。」

「そうか。なら仕方がない。僕にも責任がある。」


「監視員!‥‥いや、水道か。あ、忍者!‥‥‥‥‥風船か。くそう!!紛らわしい!何なのだこれは!あの小春とかいったか‥‥あの花嫁、余計なことを!」

結局、有海はあらゆる笑顔が自らを嘲るように感じてしまうのである。


ストレスに包まれた一日が終わった。当然、警戒心を最大限に高められた彼はそうとう気力を使い果たしているのである。しかも両親まで集団ストーキングの手口に疎いためどうしようもないのだ。

「有海、今日もアルミホイルを巻いて外に出たのか!何を考えているんだ!!」

「来週はお母さんと精神病院に行くからね。」

笑いながら息子を病人呼ばわりする両親に、有海は苛立ちを覚えた。

「うるさい!脳内麻薬の奴隷め!精神病院に行くのは精神病患者だけだ!」

有海は眠りにつく。


翌朝。有海は大人気モーニングニュース番組「朝王ニュース」をみる。

『突如発生した笑顔現象。あらゆる物体ににこちゃんマークが描かれているのです。皆さん、さがしてみましょう!可愛いですね。うふふ。コメンテーターの金田四四きんだよんよんさんのつるつる頭にもにこちゃんマークが。』

園沢要そのざわかなめアナウンサーは快活な喋りで人気がある。有海も彼女のファンであったため、基本毎日見ているのだ。

『はははは。これでもう薄毛も恥ずかしくないですね。』

『うふふふ。薄毛だなんてご謙遜を。立派なハゲじゃああーりませんか。』

『あはははは』

『うふふふふ』


大好きな園沢アナの笑顔さえも、既に有海の精神を蝕む害虫となっていた。

「異常に思わないのか!?どこを見ても笑顔がある!気が狂いそうだ!父さん!母さん!」

「お前は元から狂ってるだろ。笑顔って素晴らしいとおもうけど。」

「全く。有海はいつも神経質だからな。笑うことも重要だ。たまにはいいじゃないか。」

「なんだと‥‥取り込まれたか‥‥この世の‥‥闇に‥‥。」


有海はアルミホイルを巻きなおす際、鏡に映る自分の顔を見る。もちろん、その顔には笑みが纏わりついている。

「だめだ、笑顔から顔の筋肉が動かせない‥‥。」

「痛い!顔が攣った!うぐぐぐ‥‥‥‥。」



こうして笑顔に満たされた一週間が過ぎた。

「ああ!顔が痛い!腹が立つ!‥‥すみません。夜のニュースです。今日5時ごろ、新宿の交差点で男が暴れ出しました。さらに6時ごろ、東北地方で車が小学生の列に突入。2人が死亡しました。そして12時ころには渋谷のデパートで乱闘が発生し、機動隊が突入する時代となりました。」


「おかしい‥‥明らかに暴力などの加害事件が増加している‥‥。」

「そうか!全人類が顔の筋肉を固定されていることで多大なるストレスを感じているのか!これはゆゆしき事態だ‥‥‥‥。明日は日曜。研究所に行かねば‥‥。」



朝王ニュースは大好きだが、それよりも何とかしなければならないことがある。

有海はとにかく早く研究所に行きたかった。

「よし、いくぞ、『チャリオット@脳内麻薬盗まれない』!!」

有海はバイクにまたがり、発進!しかし彼は見てはいけない物を見てしまった。


「あははははははははははははははははははははは!!」

「は?」

空を見上げると太陽が笑っていたのだ。この時有海の中で、何かが、弾けた!

「うわあああああああああああああああ!!」

「普通の人間が笑うのはいい!!工作員どもも俺を笑うことを許す!だが、一つだけ許せないことがあるんだよぉぉぉぉ!!太陽!お前だよお前!恥もなく真っ赤に染まりやがって、共産主義者が!!僕を!僕を笑うなああああああああっはっはっはっはっはっは!!!!」

有海は「チャリオット@脳内麻薬盗まれない」のエンジンをフルスロットルにする。そして近くのビルの外壁をエンジン力を使い昇りつめる。

「おい見ろ、あいつ垂直の壁をバイクで駆け昇ってやがる!!」

一般脳内麻薬奴隷市民は、重力に逆らう人間を見逃さなかった。

90度の傾斜を摩擦力だけでグリップし、高みへと!

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」ガリガリガリガリ

そうして、屋上へたどり着いた。

「死ぬには、良い眺めだ‥‥。」

「さあ、今こそ、太陽へとぉぉぉおおダイブゥゥゥゥゥゥ!!」

そう!有海は柵を突き破り、屋上から飛び立った!

つまり、太陽へ突撃しようとしたのだ!これぞいわゆる、『怒殺』!

「これで、もう誰も僕を笑わせない!!許される、はずが、無いんだ!」

大空を駆ける『チャリオット@脳内麻薬盗まれない』。しかし、当然この高さから落ちれば人間はひとたまりもない。


「今日朝5時ごろ、ビルの屋上から‥‥ふふ‥‥バイクに乗った男が走行中のまま飛びおりました。くすくす‥‥乗っていた大学生、大宰有海さんが上半身がち、ち千切れる……ブフォー‥‥失礼。重傷を負い‥‥‥‥もうだめ!何よ、千切れるって!!うひゃひゃひゃひゃ!!」

「ちょっと、園沢アナ。笑ってはいけませんよ。人が怪我しているんですよ。」

「あー、ストレスたまるわーはははは。こんなんやってられんわーはははは。」

「園沢アナ?」

「あたし、やめるわ。こんなハゲ散らかしたコメンテーターの隣でニュース読むだけとかマジストレスたまるんだけど。うふふ。笑顔現象もイライラするんだよ。いっつもカメラの前で媚びうってさ。いや、カメラの前ならいいんだよ。でもなあ、24時間ずっと笑顔ってすっごくつれえぞ?皆そう思ってんだろ?笑顔がいいなんてポリティカルコレクトネス、糞喰らえだ!うひゃひゃひゃ!」

「へえ?ハゲですか?むしろ髪の毛で隠さないといけない、後ろめたい頭皮があるんですか?」

「なんだとぉーハゲ!?」

「やるのか糞アマ!!」

2人は笑顔のまま喧嘩を始めた。

「しばらくお待ちください」


これを研究所で見ていた小春となななな様、そして七鞠はこの結末を悲しんでいた。

「こんな結末許せませんです!もとの世界に戻します!!」

「うえええーーーん‥‥‥‥。有海くんがー!王子様が‥‥ごめんなさい‥‥‥‥。」


「安心しろ、小春。有海の上半身は「チャリオット@脳内麻薬盗まれない」にくっつけておくぜ。これであいつも明日には目を覚ますだろうよ。」

七鞠は何とかして有海を研究所に運搬することができた。ただ、下半身は砕け散ってしまっていた。なので仕方なかった。仕方なかったので有海は上半身が人間、下半身がバイクとなったのだ。人は生きなければならない。恥を、晒してでも。そうだろう?

「有海さん、かっこよくなりましたね!」

「わー、まるで『けんたうろす』だー。」


七鞠は今回得た教訓を頭の中でまとめていた。

(ううむ‥‥。お願いをしても、それをこいつがどう解釈するか‥‥?そこの調節が難しいというわけか‥‥。ふわふわしたお願いだと結果が意味不明なことになり、詳しすぎるお願いだと理解できない。案外厄介だな、なななな様は‥‥。まあ、いいか。)


(そんなにうまくいきすぎちゃあ、つまんねえからな!)


「面白ければ、いいんだよ、面白ければ!」

「そうですね!面白ければいいんです!」


「しっかし、顔が痛え‥‥‥‥。」

「日頃から笑ってないからだよー、なまりん。」

小春はいつも笑みを浮かべているので、常時笑顔のダメージが少ない。

「なまりん!?俺のことか!?」


つづく

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