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それは蚯蚓が這うような拙いもの  作者: 蒼山
それは蚯蚓が這うような拙いもの(ホラー)
1/4

一日目 ①

ホラー苦手な奴がホラーを書くとこうなる。(何)

この作品は、いつまでも読み専なのも、ということで書き下ろしたものです。

推敲甘いですが、短いので良かったら読んでやってください。

個別作品タグ【ホラー、ややコメディー】


▲▲注意▲▲

この作品には一部に実際の心霊体験が使われています。

文章自体は軽いので、霊感の無い人は気にすることなく読めると思いますが

霊感がある人はその部分に不快感、拒否反応を示すことがあるようです。

そのテの自覚がある場合はこの作品を飛ばして、

次の短編作品(打って変わってコメディです)からお読みください。

挿絵(By みてみん)


 毎年盆は、母方の実家に帰る。

 それが我が家の恒例行事の一つだ。

 けれど俺は今年で十四歳。


 純日本家屋で平屋の、広すぎて、それでいて面白い物など何一つも無い母方の実家は、俺にとって盆でも帰りたくなどない、つまらない場所でしかなかった。


 ――今年も憂鬱な一泊二日が始まる。


 母親にゲーム機を持ってくるのは禁じられ、荷物はキッズ制限が掛かった携帯電話と宿題ドリル一式くらい。

 そんな俺がやることと言えば、やはり面白くも何ともないテレビ番組を延々眺めることだけ……

 七つ年の離れた弟の面倒をみることも無く、俺はただひたすら祖父と一緒に午前中の時代劇を見流していた。

 そこへ、


「兄ちゃん、黒いペン貸して」


 居間の襖が開いたと思ったら、開口一番で人に物を要求してくるのは弟。


「ペン? 油性でいいか?」


 思わず疑問符を投げ掛けてしまったが、俺はその後の返事を待つことなく、自分の傍に置いてあった荷物一式の中から黒い油性ペンを取り出した。

 近寄ってきて俺の手元をじっと眺める弟に、それを渡す。


「おれ、えんぴつしか持ってなくてさー」

「ペンなんて一体何に使うんだよ」


 少なくとも勉強には鉛筆で十分だし、お絵描きをしたいのならば黒いペンを要求してはこないだろう。


「人生ゲームに大きな白いマスがいくつもあって、そこに自由に書いていいんだって」

「……何だかよくわかんねーけど、何となくわかった」


 多分その人生ゲームには、持ち主が自由にイベントを作って書きこめるマスがあるのだと思われる。

 あくまで予想でしかないが。


「じゃ、待たせてるから行くね」

「どこで遊んでんの?」

「家の前の、柵の中」

「……そこ、多分遊んじゃいけないぞ」


 母方実家の周囲はど田舎らしくほとんどが田んぼだが、両隣には民家があるし、目の前には白くて四角い箱のような建物が建っていた。

 ちなみにその建物は毎年盆に俺が見る限りでは周囲を白く染められた鉄柵で覆われていて、柵の入り口には必ず錠が掛かっている。

 看板も何も無くて一見すると何の建物だか分からないが、以前母から「あれはNTTだ」と聞いたことがあるからNTTの何かの建物なのだろう。

 ただし、平日に毎日社員が常駐するような建物ではなく、小さな基地局のような物だと思う。

 だからその建物の敷地内に、人が居るのを見たことは無い……

 否、ガキどもが柵をよじ登って勝手に入って遊んでいるのは見たことはある。

 敷地内は地面も白く綺麗に塗り固められているため、バトミントンやボール遊びをするにはうってつけの空間なのだ。


 そんな建物の敷地で弟は人生ゲーム(しかもコンシューマーではなく、アナクロなボード現物)をしているらしい。

 母方実家には年に一回しか来ないが、近所の住民は全て親戚で顔見知り。

 人生ゲームはそいつらの持ち物で、そいつらと遊んでいるのだろうと思われた。

 七歳の弟にとっては、それも楽しい夏休みの思い出となるのだろう。

 俺にもそういう時期はあった。


 けれど、


 俺が小さい頃遊んで貰っていた近所の姉ちゃんは、もう大学生になって県外に出て行って居ない。

 俺にはもう、この母方実家のある地において、遊び相手など居なくなってしまったのだ。


 隣の家の子どもは、確か弟より一つ下だったはず。

 遊び相手がいる弟が羨ましいな、と少しだけ思うほど、母方実家は退屈だった。

 だからといって弟達に混ざって人生ゲームなどやる年でも無いが。


「あーつまんね、何か食べる物無い?」


 時代劇が終わり、チャンネルのどこを回してもお盆特有のニュースと通販番組ばかりになってしまった。

 台所に居た母親に声をかけると、意外な言葉が返ってくる。


「これから皆で病院行くけど、あんたも行く? 病院行けば多分何かお菓子くれると思うけど」

「何で病院行くの?」

「おばあちゃん迎えに行くのよ」


 俺の祖母は看護士だ。

 ついでに言うと母も看護士だ。

 盆も午前中までは勤務で、母達はそんな祖母を迎えに行くらしい。

 けれど、病院に行ったら行ったで、今度は祖母の職場の人達に愛想を振りまかなくてはいけない。

 それはそれでゴメンな話。


「あーそう。行かない」

「そ、じゃあ留守番お願いね。携帯も持っていくけど電源切ってると思うから、何かあったらここに電話して」


 そう言って母は各部屋に常備してあるメモ帳を使い、さらさらと祖母の勤務先である病院の電話番号を書いて俺に渡した。

 母方実家にメモ帳がそこらかしこに常備してあるのは、勤務先の病院から大量に貰ってくるからだと思う。

 メモ帳には多分医療用品の名前と思われる意味不明なカタカナのロゴが判を押されており、どう見ても市販品ではない。

 ついでに言うと、そこに一緒に備え付けられているボールペンやハサミも全てそんな感じで非売品オーラが漂っている。


 電話番号が書かれた紙をジーパンのポケットに仕舞い、俺は父、母、祖父、そして家の前の建物で遊んでいたところを強制連行されたらしい弟を見送った。

 そして気付く。


「……家の鍵、貰ってない」

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