戦に負けた将の行く末
前書きは無い
ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
遠くから無数の人間の雄たけび声が聞こえる・・・
我が陣の防衛戦は悔しくも打ち砕かれ・・・
期待をしていた本国からの応援も来ず・・・
ただ・・・
ただ私は茫然としていた・・・
そんなとき一人の兵が走って来た
隊長!お逃げください!
彼は動かずに茫然としている私に言った・・・
この旨を本国へお伝えするのです!
だが・・・私は確信していた・・・
本国に応援要請をしてそれが来ない・・・
つまり本国で何かしらの問題があったのだ・・・
補給路を断たれ・・・
砦の城壁は崩れ去り・・・
後は敵兵にこの身を撃ちとられるのみ・・・
そう思っていた・・・
だが・・・私ものとに来た兵の言葉に私は目を覚まされた
隊長が居たからここまで頑張れた
中には本国で失敗して此処へ飛ばされた奴も居る・・・
しかし隊長はそんなものにも等しく接してきた・・・
欲の張った貴族が視察に来た時もそいつをからかって私たちの鬱憤を晴らしてくれた
隊長が居たからこそ・・・
隊長だからこそ・・・
私たちは命を投げうって守り続けたのです
今隊長が死んでしまったら我々一同捕虜などにならず全員自決いたします!
私は彼の言葉に目を見開いた
私の指揮力不足のせいで落ちてしまった砦・・・
私の指揮力不足のせいで死んでいった仲間たち・・・
私が彼らに優しく接していたのはただの罪滅ぼし・・・
かつて愛する人とその子供を守れなかった罪滅ぼし・・・
そうやって言い聞かせて行動していた・・・
しかし彼らの目には私が罪滅ぼしをしていたのではなく
私が皆に対して優しく接していたとみていたのだ・・・
私は思った・・・
たとえ私の今までの行動が嘘だったとしても・・・
私をしたってくれている人間が居る限り・・・
私は・・・
私はいつまでも彼らから慕われる隊長でいよう・・・そう思った
そう思った私は決断をした
この砦を捨て傭兵に身をやつそうと決めたのだ
第二陣を守っている兵に爆薬を仕掛けるように伝えると
私は・・・
砦の地下にある地下廊へと向かった
扉はさびている・・・
それを蹴破りまず負傷した兵から外に運び出して行った
全ての負傷兵が砦から出た後私は第二陣の兵に撤退を命じその城壁を爆破した
轟音と石が崩れていく音
私たちは地下廊を駆け抜けた
ところどころに爆薬も仕掛け最後に爆発させる・・・
私たちは砦を守る兵ではなく・・・
今この時から
傭兵へとなった・・・
後になって知ったのだが・・・
私が本国に応援を要請した時にはすでに国は落ちていた・・・
国王は死去し
姫は失踪・・・
そう・・・姫は失踪したのだ・・・
私たちは彼女を探した・・・
私たちが守る砦は辺境にあり
武器なども初めは使い物にならなかった
そんな私たちに武器などを送ってくれたのが姫だったのだ
私は誓った
かつて守れなかった愛すべき人とその子供・・・
そして砦を守って死んでいった仲間たち
彼らに報いるため
私たちは必死になって探した・・・
あれから半月がたち国も少しは落ち着いてきた
そんな中あるうわさが流れてくる
北のとある村に姫と思しき人間が居る
私たちはそこへ向かった
だが遅かった・・・私たちが到着しときにはすでに村は盗賊に襲われていた
私は悔しかった
しかし仲間は言った
今からでも遅くない追いかけて救い出しましょうと
私はその言葉に同意し馬を走らせた
走らせて走らせて走らせた
そして盗賊の根城へとたどり着いた
そして私は茫然とした・・・
かつて私が守っていた砦と瓜二つなのだ・・・
仲間も動揺し驚愕した・・・
しかし同様に好機だと思った
この砦には牢への抜け道と司令官室への抜け道がある
あわよくば盗賊の首領と姫様を助けられるかもしれない
そう思い夜を待った
砦からはどんちゃん騒ぎが聞こえてくる
そして私たちは抜け道を通って行った
居た・・・
牢につながれた姫様が居る・・・
私たちは早々に行動を起こした
見張りの盗賊を殺し姫を救い出す
さらに抜け道を使い領主を殺害
完璧だった・・・
誰にもばれずに事を為し得た・・・
姫はお礼を言って来た・・・そして驚くべき言葉を口にしたのだ
貴方の事が好きでした・・・
私はもちろん拒絶した
もちろん心の底から嫌だと思ったわけではない
ただ恐ろしかったのだ
かつて愛し結ばれた者を守れなかった恐怖・・・
それが私をがんじがらめにしていた・・・
姫を助け村に行きそこで村人に交じり普通の生活を送った
その間にも何度も何度も求婚されたが私は全て断った
仲間は言った何故断るのかと・・・
私は言った怖いのだと・・・
また守れなかったと思うようなことになるのは怖いのだと・・・
そして頬を張られた
張ったのは私に撤退を進言してきた少年だった
少年は激怒していた
そんな恐怖で愛してくれる人をそでにするのか・・・
そんな恐怖で愛を無駄にするのか・・・
そんな覚悟で姫様を救い出したのか・・・
私はその言葉に驚愕した・・・
私よりも彼の方がずっと大人だったのだ・・・
私は過去の呪縛にとらわれた只の子供だったのだと・・・
そして私は覚悟を決めた
姫を愛し・・・そして愛されると・・・
私たちは結ばれた
あるとき盗賊が村を襲った
私は恐怖におののいた
姫が死んでしまうかもしれない・・・
愛すべき人が死ぬかもしれない・・・
しかしそんなことにはならなかった・・・
そう・・・
仲間が命を賭して戦って守ってくれたのだ
当然私も戦った
しかし私よりも彼らは戦った
姫を守るだけでは無い・・・
私も守るためだった
彼らは言った
たとえ姫を守っても貴方が死んでしまっては姫様が悲しむと
私は感謝した・・・
そしてあの少年に感謝の言葉を伝えようと思った
あの砦での言葉・・・
この村での言葉・・・
あの言葉が無かったら私はここに居ない・・・
伝えよう・・・そう思った・・・
だがしかしそれは叶わなかった・・・
少年はこの戦いで死んだ・・・
私を守り死んだのだ・・・
私は泣いた・・・
泣いて・・・
泣いて・・・
泣き続けた・・・
そうして悔み続けて幾年がたち私も死んだ・・・
私は死に際に願った
死後の世界であの少年に会いたい・・・
彼に感謝の言葉を述べたい・・・
私は・・・
私はその後彼に会えたのだろうか・・・
会えなかったのだろうか・・・
死んだ私にはわからない・・・
だが・・・
あの少年の笑顔が見えた気がした・・・
後書きも無い