龍を鎮めたわけではありません。煙突の向きを変えただけです 【十五文化圏周縁抄 龍人都市リンアン】
「シンリ。お前、龍を鎮めたのか」
工房署の下庭で、灰役人がそう言った。
やめてほしい。
朝一番に言う言葉ではない。
こちらはまだ、灰で喉がざらついている。
髪にも灰が入っている。
袖にも灰が入っている。
靴の中にも、たぶん灰が入っている。
その状態の者へ向かって、龍を鎮めたのか、はない。
「鎮めていません」
わたしは答えた。
「では、なぜ白龍の息が止まった」
「煙が都の方へ戻らなくなったからです」
「だから、龍を鎮めたのだろう」
「違います」
灰役人は、長い爪で帳面を叩いた。
龍人の爪は硬い。
だから、帳面を叩く音も硬い。
こつ、こつ、と鳴る。
怒っている音である。
「シンリ」
「はい」
「お前は方術師ではない」
「はい」
「天命官でもない」
「はい」
「徴を読む学びも終えていない」
「はい」
「高炉主の血筋でもない」
「はい」
「ただの煙道下役だ」
「はい」
「では、どうやって龍を鎮めた」
「ですから、鎮めていません」
わたしは、煤で黒くなった手を見せた。
「煙突の向きを変えただけです」
*
龍人文化圏では、白い煙はよく龍にされる。
リンアンでは、特にそうだ。
朝焼けの雲が長く伸びれば、東龍が起きたと言う。
山の霧が谷へ下れば、眠る龍が息を吐いたと言う。
高炉街の煙がまっすぐ立てば、工房の火が天に通じたと言う。
逆に、白い煙が都へ戻れば、龍が怒ったと言う。
そう言った方が、みんな納得するからである。
納得するだけなら、まだよい。
問題は、役人が動くことだ。
役人が動くと、札が増える。
札が増えると、署名が増える。
署名が増えると、会議が増える。
会議が増えると、高炉は止まる。
高炉が止まると、工房が怒る。
工房が怒ると、煙道下役が走る。
つまり、最後にわたしが走る。
よくない。
非常によくない。
*
リンアン。
龍人文化圏の都であり、白磁と高炉と官署の街である。
わたしは、その外れにある高炉街で、煙道下役をしている。
高炉街は、都の中ではない。
都の外でもない。
城門から見える。
しかし、貴人の窓からは遠い。
官署の帳には載る。
しかし、宴の詩にはあまり出ない。
火がある。
灰がある。
金属がある。
焼き物がある。
石炭がある。
煙がある。
そして、その煙をリンアンの内側へ入れないための煙道がある。
煙道は、偉いものではない。
地味である。
汚い。
狭い。
熱い。
詰まる。
鳥が巣を作る。
子どもが石を投げ込む。
工房主が勝手に枝道を足す。
灰捨て場の壁が勝手に高くなる。
雨が降れば水が入る。
乾けば煤が舞う。
風が変われば、全部戻る。
それでも、煙道がなければ都は咳をする。
咳をするリンアンは、たいへん面倒である。
貴人が咳をすると、まず香炉のせいにされる。
次に厨房のせいにされる。
次に高炉街のせいにされる。
そこまではよい。
だいたい高炉街のせいでもある。
だが、その次に「龍の息が濁った」と言われる。
そうなると、方術師が来る。
天命官が来る。
礼官が来る。
白い布を持った神官もどきが来る。
工房主が袖を整えて来る。
役人が筆を持って来る。
わたしたち煙道下役は、その全員の後ろで、詰まった灰を掻き出す。
それが仕事である。
*
わたしが煙道下役になったのは、賢かったからではない。
咳が軽かったからである。
龍人は長く生きる。
角も伸びる。
皮も硬い。
声も低くなる。
長命の者は、ゆっくり考える。
ゆっくり怒る。
ゆっくり許さない。
しかし、煙はゆっくり待ってくれない。
煙はすぐ戻る。
すぐ目に入る。
すぐ喉に来る。
すぐ都へ行く。
わたしは若く、官位もなく、家も細く、咳が軽かった。
だから煙道へ入れられた。
最初は嫌だった。
煙い。
熱い。
灰まみれ。
しかも、間違えると怒られる。
東の抜け穴を開けすぎれば、炉の火が暴れる。
西の灰口を閉じ忘れれば、雨の夜に水が逆流する。
南の煙突を高くしすぎれば、上だけ抜けて下が詰まる。
北の逃げ壁を塞げば、朝の風で煙が都へ戻る。
わたしは何度も間違えた。
煤を吸って声が出なくなった。
灰水を踏んで足を滑らせた。
煙突の向きを変え忘れて、工房主に二刻叱られた。
火が落ち着いたと思って枝道を閉じ、別の炉をむせさせた。
だから覚えた。
覚えなければ、煙道では生きられない。
煙は、上だけを通らない。
壁を舐める煙。
床へ沈む煙。
灰穴から戻る煙。
高い煙突へ行く煙。
途中で冷えて下りる煙。
雨の後だけ重くなる煙。
昼の熱で跳ねる煙。
夜明け前に都へ這う煙。
同じ白でも違う。
同じ風でも違う。
同じ煙突でも、昨日と今日は違う。
わたしは方術を知らない。
天命の文字も読めない。
でも、煙がどこで戻るかだけは、少しずつ覚えた。
*
事件は、白磁祭の三日前に起きた。
白磁祭。
リンアンの高炉街と白磁工房が、年に一度、焼き上がりのよい器を官署へ納める祭である。
白い器。
薄い器。
光を通す器。
天命の清さを映す器。
そういう言い方をする。
だが、高炉街の下役から見ると、白磁祭は、煙と灰と怒鳴り声が増える日である。
工房は火を増やす。
炉は休まない。
灰捨て場はすぐ山になる。
煙突は全部使う。
煙道は詰まる。
そして、偉い人が来る。
偉い人が来る日に煙が戻ると、たいへんまずい。
その朝、リンアンの南門から白い煙が入った。
細い煙ではない。
幅のある、低い、長い煙だった。
都の通りをなぞるように流れ、官署の前で薄く広がり、祭壇の屋根へ絡んだ。
誰かが叫んだ。
「白龍の息だ!」
違う。
煙である。
だが、一度誰かが白龍と言うと、煙は白龍になる。
市場の女が口を覆う。
役人が空を見る。
工房主が顔を青くする。
方術師が呼ばれる。
天命官が走る。
礼官が白布を探す。
そして、灰役人がわたしを探す。
「シンリ!」
呼ばれた時、わたしは灰穴の底にいた。
灰穴の底は狭い。
呼ばれてもすぐ出られない。
しかも、上から呼ばれると灰が落ちてくる。
「はい!」
「都へ煙が入った!」
「見れば分かります!」
「龍の息だ!」
「煙です!」
「早く上がれ!」
「梯子を下ろしてください!」
「なぜ下りた!」
「昨日、灰が詰まったからです!」
「なぜ詰まった!」
「捨てすぎたからです!」
「誰が!」
「工房全部です!」
灰役人は黙った。
工房全部。
それは便利な言葉である。
誰の責任でもなく、全員の責任で、つまり誰もすぐには謝らない。
わたしは梯子を上り、外へ出た。
空は白かった。
都の方が白い。
高炉街ではなく、リンアンの内側が。
よくない。
非常によくない。
*
官署前の広場では、すでに会議が始まっていた。
早い。
煙はまだ出ているのに、会議が早い。
龍人の役人は長く考えるが、会議を始めるのだけは速い。
「東の天命が乱れている」
方術師が言った。
「いや、南の火徳が強すぎる」
別の方術師が言った。
「白磁祭の前に、白龍が息を返したのだ」
礼官が言った。
「それは吉兆か」
「凶兆か」
「吉凶を決めるには、まず古例を」
「古例を出すには、まず書庫を」
「書庫を開くには、まず印を」
長い。
煙より会話が長い。
その間にも、白い煙は都へ流れている。
市の子どもが咳をしている。
馬が鼻を振っている。
白布を持った役人が、白布を白く保てずに困っている。
わたしは、広場の端から煙を見た。
白い。
低い。
細い粒がある。
匂いは高炉の煤。
焼き物の窯ではない。
金属炉の東列。
ただし、東列の煙突なら、普通は北へ抜ける。
今日は南から風が来ている。
なのに、煙はリンアンへ戻っている。
おかしい。
わたしは地面に落ちていた灰の葉を拾った。
葉と言っても、木の葉ではない。
薄く剥がれた灰の膜である。
軽い。
風を見るのにちょうどよい。
わたしはそれを落とした。
灰の葉は、まっすぐ下へ落ちず、都の方へ滑った。
低い風が戻っている。
上ではない。
下だ。
煙突の上だけ見ても分からない。
灰捨て場の壁だ。
たぶん。
「シンリ」
灰役人がわたしを見た。
「何か分かるか」
「灰捨て場の壁を見ます」
「龍は」
「龍ではありません」
「白龍の息と呼ばれている」
「呼ばれているだけです」
「言い方に気をつけろ」
「はい。白龍の息と呼ばれている煙の戻りを見ます」
「よし」
面倒である。
だが、言い方は大事だ。
特に官署の前では。
*
灰捨て場は、高炉街の北西にある。
そこには、白磁祭へ向けて出た灰が山になっていた。
山だけなら、まだよい。
問題は壁だった。
新しい壁が積まれている。
灰が都へ飛ばないようにするためだろう。
親切である。
親切だが、位置が悪い。
南から来た風が高炉街の屋根へ当たり、煙突を抜けた煙を北へ送る。
普段なら、その煙は灰捨て場の低い逃げ穴から外へ流れる。
だが、新しい壁がその逃げ穴を塞いでいた。
行き場を失った煙は、壁に当たり、灰山の熱で押し返され、低いところを通って都へ戻る。
なるほど。
龍ではない。
壁である。
白龍の息ではない。
煙の帰宅である。
「誰がこの壁を」
わたしは聞いた。
灰役人は、顔をそらした。
「白磁祭のために、上から命があった」
「どこから」
「美観局」
美観局。
強い。
白磁祭の前に、灰が見苦しいと言ったのだろう。
見苦しい灰を隠すため、壁を積んだ。
その結果、見苦しくない白い煙がリンアンへ入った。
よくない。
非常によくない。
「壁を一部落とします」
わたしは言った。
灰役人が固まった。
「落とす?」
「逃げ穴を作ります」
「美観局の壁だぞ」
「煙が戻ります」
「しかし、壁を壊すには許可が」
「煙が戻っています」
「申請書が」
「煙が戻っています」
「印が」
「都が咳をしています」
灰役人は黙った。
しばらくして、低く言った。
「小さくなら」
「大きく要ります」
「小さく」
「大きく」
「中くらいで」
「足ります」
交渉成立である。
*
壁を落とすのは簡単ではない。
美観局の壁は、見た目だけはたいへん立派だった。
白い石灰が塗られている。
上端が揃っている。
飾り線まである。
灰捨て場の壁なのに、無駄に美しい。
そのせいで、壊す場所を選ばなければならない。
全部壊せば怒られる。
少しだけでは風が抜けない。
高すぎる場所を抜いても、低い煙は逃げない。
低すぎると灰水が流れる。
幅が狭いと笛のように鳴る。
鳴ると、また誰かが龍の声だと言う。
それは避けたい。
非常に避けたい。
「ここです」
わたしは壁の下を指した。
「この幅で」
「広すぎないか」
「狭いと鳴ります」
「鳴る?」
「龍の声にされます」
灰役人の顔が真剣になった。
「広くしろ」
分かってくれた。
龍の声は避けたい。
壁を抜く。
灰を掻き出す。
下に溜まった湿った煤を外へ出す。
その先に、古い逃げ溝があった。
やはり。
壁がその上に乗っていた。
逃げ溝を潰していたのだ。
「溝がある」
灰役人が言った。
「古い逃げ溝です」
「帳にあったか」
「古い煙道図にはあります」
「見たのか」
「はい」
「いつ」
「叱られて暇だった時です」
「暇ではない」
「煙道待機中です」
「言い方を覚えたな」
「はい」
逃げ溝を開けると、風が変わった。
低いところで、すっと抜ける音がした。
鳴らない。
よし。
灰山の熱が逃げる。
煙突から出た白い煙が、都の方へ戻らず、外へ流れた。
空の白さが少しずつ薄くなる。
リンアンの屋根が見える。
官署の旗が見える。
白布を持った役人が、白布を見て安心している。
たぶん、白く戻ったのではない。
煙が減っただけだ。
それで十分である。
*
だが、まだ終わりではなかった。
煙が抜けた瞬間、広場から歓声が上がった。
なぜか。
誰かが叫んだのである。
「龍が鎮まった!」
違う。
逃げ溝である。
しかし、白い煙が引いた。
空が戻った。
祭壇の屋根が見えた。
方術師が袖を広げていた。
礼官が白布を掲げていた。
灰役人がわたしの肩をつかんでいた。
その絵は、たいへんそれらしかった。
非常によくない。
すぐ、記録係が走ってきた。
「シンリ、何をした」
「壁を抜きました」
「龍を鎮めたと聞いた」
「壁を抜きました」
「白龍の息が止まった」
「煙が抜けました」
「方術か」
「煙道です」
「天命か」
「風向きです」
「では、どう書けばよい」
「灰捨て場北西壁、旧逃げ溝上に築かれ、低煙戻り発生。中幅開口により排煙回復」
記録係は、筆を止めた。
「長い」
「正確です」
「もう少し祭向きに」
「だめです」
「白龍の息を」
「だめです」
「鎮煙の儀」
「もっとだめです」
記録係は困った顔をした。
わたしも困った。
正確な記録は長い。
祭向きの記録はだいたい危ない。
灰役人が横から言った。
「表札には、白煙戻りを修める、と書け」
「裏帳には?」
記録係が聞く。
「シンリの言った長いものを書け」
よい。
表と裏を分ける。
これならよい。
わたしは頷いた。
「あと、美観局の壁の件も」
灰役人が咳をした。
「それは、後で」
「後で消えます」
「消えないようにする」
「本当ですか」
「……薄くはなる」
「だめです」
灰役人は、少しだけ空を見た。
まだ煙が残っている。
彼はため息をついた。
「書け。美観局による新壁設置、旧逃げ溝を塞ぐ」
記録係の目が光った。
面倒なことを書く時の目である。
よい目である。
*
夕方には、都の煙はほとんど消えた。
白磁祭は予定通り行われることになった。
方術師は、天命の乱れは軽かったと言った。
礼官は、白龍は怒りを収めたと言った。
美観局は、壁の意匠が煙の流れと調和しすぎた可能性があると言った。
何を言っているのか分からない。
工房主は、炉を止めなくて済んだので喜んだ。
灰役人は、裏帳に長い注記を書いた。
記録係は、表札と裏帳を分けた。
そして、わたしは灰穴へ戻された。
煙道下役なので。
当然である。
ただ、少し変わったことがあった。
翌朝、工房署の下庭に、小さな札が出ていた。
白煙戻りの件。
煙道下役シンリ、北西壁下旧逃げ溝を開き、排煙を回復。
白龍鎮めの儀にあらず。
煙道修繕である。
最後の一行がよい。
とてもよい。
誰が書いたのかと思ったら、灰役人だった。
見直した。
少しだけ。
*
しかし、噂は札より速い。
市場では、わたしは龍を鎮めた下役になっていた。
子どもが聞いてくる。
「白龍、怖かった?」
「煙でした」
「龍、いた?」
「いません」
「でも、煙が長かった」
「長い煙です」
「龍じゃないの?」
「煙です」
「つまらない」
「煙道はだいたいつまらないです」
子どもは笑った。
それでよい。
つまらない方が安全である。
煙道が面白い時は、だいたい事故である。
別の日、白磁工房の若い職人が来た。
「シンリ殿」
「殿はいりません」
「龍を鎮める煙突角度を教えてください」
「ありません」
「では、白煙を天へ返す方術を」
「ありません」
「秘伝を」
「ありません」
「では何を」
「煙突の口を風下へ向けない。低い逃げ穴を塞がない。灰山の熱を溜めない。雨の後は下を先に見る」
職人は少し黙った。
「地味ですね」
「はい」
「でも、役に立ちますね」
「はい」
「覚えます」
「それがよいです」
よい若者である。
派手な名より、手順を覚える者は信用できる。
*
その後、高炉街には新しい札が増えた。
煙突口、風向き確認。
灰山、熱あり。
旧逃げ溝、塞ぐな。
美観壁、建てる前に煙道へ聞け。
白煙、上へ行くとは限らない。
低煙、都へ戻る。
鳴る穴、龍の声にされるので避ける。
最後の札は、わたしが書いた。
灰役人は最初、渋い顔をした。
しかし、方術師が一度本当に「龍の声か」と言ったので、札は残った。
よかった。
*
今でも、わたしは方術を使えない。
天命も読めない。
白龍を見たこともない。
龍を鎮める儀礼も知らない。
高い官位もない。
美しい白磁を焼く才もない。
ただ、煙道へ入る。
灰を掻く。
煙突の口を見る。
逃げ穴を見る。
灰山の熱を見る。
風が上を通るか、下を戻るかを見る。
軽い灰の膜を落として、どちらへ滑るかを見る。
若い下役が入ると、わたしは最初に灰の膜を渡す。
「落として」
若い者は嫌な顔をする。
「汚れます」
「もう汚れています」
「これが仕事ですか」
「これも仕事」
「龍を見るのでは」
「見ません」
「天命は」
「上の方が読みます」
「方術は」
「方術師がします」
「では、私たちは何を見るんですか」
わたしは、煙突の下を指す。
「煙が勝手に戻るところ」
若い者は、まだ分かった顔をしない。
昔のわたしもそうだった。
だから、強くは言わない。
ただ、灰の膜を落とさせる。
灰の膜は、まっすぐ落ちない。
低い風に押され、少し横へ滑る。
若い者の顔が変わる。
その時だけ、わたしは少し笑う。
龍を鎮めたわけではありません。
煙突の向きを変えただけです。
天命は読めません。
方術も分かりません。
ただ、煙が戻る穴を見ていただけです。
それは自慢ではない。
奇跡でもない。
龍に選ばれた証でもない。
ただ、煙にむせ、灰に滑り、叱られ、壁を見落とし、逃げ溝を掘り返して覚えたことだ。
それだけで、すべてが救えるわけではない。
煙突を直しても、炉は詰まる。
逃げ穴を開けても、灰は溜まる。
壁に札を貼っても、美観局はまた何か積む。
だから、わたしは龍を鎮める者ではない。
ただ、煙が都へ戻るのをそのままにできないだけの煙道下役である。
白龍の息と呼ばれた煙は、今日も出る。
出るなら、逃がす。
逃がすなら、穴を見る。
穴を見るなら、塞いだ者の名も帳へ書く。
それが煙道の作法である。
龍ではなく。
天命でもなく。
煙が低いところから戻ってくる前に。
──白霧都市リンアン──




