3.「魔法サーカス」
どうも。フェアベルゲンです。
魔法サーカスの雑用として働くことになった僕は
サーカスを見せて貰えると聞いてワクワクの気持ちだったのに今絶望のどん底に立っています。
何故かって?
「何があったのか正直に言いな!事と次第では許さないよ!」
烈火のごとくブチ切れたヒッツさんが僕を責め立てているからです。
「ち、違うんです!客席の場所がどこか分からなくて!この方がたまたま僕のことを見ていたので場所を聞いたら急に…!」
本当なんだ!信じてくれ!
殺さないでぇぇ!
「そうなのかい?」
「ううぅ…うん…」
少女も泣きながら頷いてくれたみたいだ…。
「はぁ…。全く。驚かすんじゃないよ。悪かったね疑って」
「いえ…誤解が解けて良かったです…」
「この子はアリス・ハイルング。うちで雑用係として働いてくれてる。ちょっと人見知りすぎる人見知りでね。その上泣き虫だからこういう事は珍しくないんだけど…」
だとしても急に号泣は心臓に悪いよ…!
「ごめん…なさい…ヒック…」
「許してやってくれ。フェア」
「全然気にしてないですよ。むしろ僕の方こそ急に話しかけてしまい申し訳ありませんでした」
「アリス。この子も今日からアンタの同僚なんだ。歳もそう変わらないように見えるし仲良くするんだよ。いいね?」
「…うん」
「よろしくお願いします。アリスさん」
「う、う、うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「わぁぁぁぁぁ!ごめんなさい!」
「はぁ…しょうがない子だね…」
この子の扱いは気をつけなきゃいけなそうだな…。
その夜。ついに公演の時間になった。
この街の住人なのだろうか。多くの子供連れが見に来ているようだ。広いサーカスのテントの中が狭く感じるほど客で埋まっている。
余程人気なのだろう。すごい盛況ぶりだ。
「楽しみになってきた!」
しかし。ひとつ懸念が…ある。
何故か隣に座っているアリスさんだ…。
「…」
俯きながら座っていると思ったらたまにこっちをチラチラと見てる。
目が合ったら泣かれかねないので合わせないようにしてはいるが……正直気まづい。
「あんた達一緒に見な!一緒に仕事するんだ早く仲良くならなきゃね!」
ヒッツさんめ…!
「あの…」
「は、はいっ!?」
び、びっくりしたぁ!
「さ、さ…さっきは…ごめんなさい…」
「い、いえ!気にしないでください…!」
「…私。昔からこうなんです…。人と話すと緊張しちゃって……それで…それで…ううっ…」
やばい!また泣かれたらたまったもんじゃないぞ!
「そうなんですね!それなのにちゃんと席教えてくれてありがとうございました!お優しいんですねアリスさんは」
「…え?」
「僕なら中々できないですよ。苦手に立ち向かうなんて怖いですもん。かっこいいですアリスさん」
「……え?本当に?」
「はい!凄いです!」
「え…えへへ…そうかな…?」
セーフ!!!
無理やりなよいしょになってしまったが泣かせずに済んだ!ナイス判断!僕!
「あっ。ここのサーカス…すごいんだよ」
「そうなんですか」
「ほ、他のサーカスよりもこうどな魔法を使ってるってヒッツが言ってた」
「高度な魔法…。へぇ〜それは楽しみです」
「わ、私も…!楽しみ……です…」
なんだかこう接してると可愛いな。
って何を考えてるんだ僕は!
突如テントの灯りが消え辺りを闇が包む。
トラブルか…?なんだろう少し怖いような…。
アリスさんは大丈夫だろうか!泣かせてしまうんじゃ…!
「レディースアーンドジェントルメーン!」
暗闇の中に聞いたことある声が響いた。
ファータだ。
その瞬間
「いいぞ!団長!」
「待ってました!」
「キャァァァー!ファータ様ァー!」
次々と観客席から歓声があがった。
どうやらサーカスが開演するらしい。
なんだ演出か…びっくりしちまったぜ
瞬間。大きな炎がステージの中央に急に現れた。
その炎が現れると同時に盛大でポップな音楽が辺りを包んだ。
炎はただ燃えているのではなく。宙に浮き時々散る火花は花の形をしている
「すげぇ…綺麗…」
思わず口をついで言葉が出てしまった。
「まだまだこれからだよ」
アリスさんがそういうと
大きな炎は弾け辺りに飛び火する。
その炎はそれぞれ人の形になってゆく。
しかもただの人じゃない!ピエロだ!
炎のピエロは音楽に合わせタップダンスを踊っている。
華やかステージの中央が開きファータがヒッツさんを含めたサーカスの団員さん達と登場する!
「イッツ!ショータイムッ!」
ファータが指を鳴らすとテントが開き客席が宙に浮いた!
「うわぁぁっ!?!」
「あはははは!すごいすご〜い!」
アリスさんがこんなに笑顔に…!
ほかの観客も大喜びで大歓声が上がっている!
僕は!ちょっと怖い!でもすごい!
その後は怒涛の展開だった。
浮くだけじゃなくステージの周りを縦横無尽に動き回る客席とステージ上の規格外の曲芸はあまりに壮観だった。
空中に作られた炎の輪をファータが超高速で飛びながらくぐったり何百本もあるであろうナイフを使いそのナイフを浮かせ動かした残像で絵を描くヒッツさん。
見た事もない猛獣を操る男の人もいたりとサーカスの次元を大きく超えたとんでもないステージだった。
これが魔法サーカス…。なんて…なんて…最っ高に面白いんだ!
「おぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
圧巻のステージだったが空中に浮くギミックに体が耐えられなかった…。
「大丈夫…?」
「は、はい…」
アリスさんが心配してくれてる…。優しい…。
「凄かったでしょ…?」
「はい…とっても楽しかったです!」
「良かったぁ… 」
数時間前の号泣が嘘かのような笑顔に少しドキッとしてしまった。
それにしても魔法サーカス。想像の何倍も綺麗で凄かった…。
そういえばファータは団長って呼ばれてたな…。
もしかしてファータってめちゃめちゃ凄い人なのでは…?
「お、いたいた。おーい!フェアベルゲン〜!アリス〜!」
噂をすればだ
「どうだった!俺たちのステージは!」
「最高でした!」
「だろう!アリスはどうだった!」
「凄かった…!ぱぁってなった」
「そうか、ならいいんだ」
ファータは突然僕たちの頭を撫で始めた。
どうしたんだろう?
「やっぱこの瞬間が仕事してて良かったって思う瞬間だな」
なんて嬉しそうな顔するんだ。
やっぱりファータは良い奴だ。
心からこの人に買われて良かったと思う
「やっとガキらしい顔してくれたな」
「そうですか?」
「あぁ。とびっきりの笑顔だったぜさっきのお前」
「ふっ…確かにそうですね」
自分が何者で何をしててなんで奴隷になったのか。
全ての記憶がない。それは怖い事だ。
ファータやヒッツさんの目に映る僕はどこか怯えているような印象があったのだろう。
だから元気づけるためにこの公演を見せてくれたんだ。
記憶を取り戻すという漠然とした目標のために牢を出た。一人では出ることすらままならなかっただろう。
それに例えファータではない誰かが僕を買おうとしても外に出るためなら喜んでついて行ったと思う。
でもこれほどの感動を与えられる男は紛れもなくファータしかいない。
そんな人に拾われるなんて僕は幸運だ。
記憶はもちろん取り戻す。
でもファータにはしっかりと恩返しをしたい。
明日からビシバシ働くぞ!
それが今の僕の存在価値であり存在理由なんだから。
4話に続く




