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ウンディーネは黄昏に踊る  作者: 咲佐きさ


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11/11

エピローグ

 僕の作曲はそれからほどなく完成し、ロスでのレコーディングも済ませた。

 グロリアについては、セデュが法的措置をちらつかせたのか、ちょっかいをかけてくる様子もない。

 そうこうするうち撮影も無事終わり、今日は打ち上げのパーティーだ。

 イヤらしい大人たちの権謀術数渦巻くパーティーから早々に離脱して、ティーナほか若手の数名と、スタッフさんの何人かと、セデュと僕はマリブのビーチに向かった。

 黄昏の海岸に焚火を灯して、ギターを持ち込んだ美術さんがムーンリバーを歌う。裸足でビーチに立ったティーナはくるくると優雅に無邪気に踊り、彼女の影が飛び跳ねる。うっとりとそれを見つめるソバカスに赤毛の若手俳優が、さかんに拍手を贈っている。

 僕らはそれを遠目に眺めて、波打ち際を散策した。

 サンダルを脱いで手にもって、裸足を波にくすぐられるに任せる。寄せては返す波は真昼の日差しにあたためられたままなのか、どこか生暖かくて、心地よい。ずぶずぶ足先が埋まりそうになるたび、砂ごと波が洗い流す。

 歓声の隙間に潮騒が聞こえて、ひどく懐かしいような気分にさせる。

 セデュは僕の隣を歩いている。波間に沈む、溶けてるみたいな太陽を見ているのか、それとも僕を見ているのか、振り向かない僕にはわからないけれど、彼がそばにいてくれることを痛切に感じる。

 砂からうまく足が抜けなくなってよろめくと、彼がすぐに僕の手を取る。

「大丈夫か」

「へーきだよ。まぶしくて、きもちいいねえ、黄昏の海。新しい曲想が浮かびそう」

「それはよかった」

 言いながらも手を離さないセデュを見上げれば、蕩けそうに見つめる瞳と目が合う。

 キスされるのかな、とぼんやり考える僕の肩にセデュは手を置いて、

「踊らないか」

 と、甘い声で囁いた。

「ええ、僕、踊りは苦手だなあ、やったことないもん」

「大丈夫、リードする。お前は揺れているだけでいい」

 肩と腰に手を置いたまま、耳元にセクシーな声を吹き込まれては、僕に抵抗する気力はなくなってしまう。

 遠く聞こえるムーンリバーと、潮騒に合わせて僕らは踊る。

 金色の夕日にきらきら輝く水面を前に、時を忘れて、離れないように、きつく抱きしめあって。

「愛している。おまえは、わたしの命だ」

「おおげさなんだよなあ、いっつもさあ…」

「おまえは? 私といて、幸せを感じていてくれるか?」

 揺れながら念を押す、心配性のセデュに、僕は満面の笑顔を向けた。

「しあわせだよ、ぼく、最高にしあわせだ!」





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