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蛇公爵が、運命の人に出会ったら。〜こじらせ公爵と、幸薄令嬢の初恋物語〜  作者: 織子


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第三話ー毒か呪いか


「どこに行ってたんだ?」

アレンデルに言われて、マーシャルはハッとした。どこか現実感のない気分で、気分が高揚している。

(酒に酔ったのだろうか)


「マーシャル、このあと暇か?久しぶりに討伐組で飲み明かそうぜ」

「皆、来てるのか?」

「アーサーは婚約者がいるからか来てないけど、王城勤めだから声かけたら良いだろ?ダイアナはさっき会ったぜ」


アーサーは王宮魔術師。ダイアナは治癒師だ。2人とも魔王討伐を共にした仲間だ。

「ダイアナは聖職者だ。飲み明かせないだろう」

「そうだけど、ダイアナがいればさっきの陛下の命令なんとかなるだろ」


「ーウッ!」

マーシャルは動悸がして胸を押さえた。

「どうした?」


ー陛下の命令、先ほどのダンスのことを思うと、激しい動悸がする。さらにダンスの相手、イリス嬢のことを思うと、心臓を握りしめられたような感覚に陥るのだ。

味わったことのない恐ろしい感覚に、マーシャルは首を振って振り払おうとした。


友人の異常行動に、心配そうにアレンデルは声をかける。

「今日のお前、変だぞ···?」

「やはりそうか?今日はもう帰ろうと思う」

「ああ。そうした方が良い。顔色も悪い」


アレンデルと別れ、邸宅へ帰ることにした。







(ロズウェル嬢はもう邸宅へ帰っただろうか)

そう考えるだけで、体温が上昇していく。


(やはり今日は体調がおかしいな。早く休んだ方が良さそうだ)


「閣下、おかえりなさいませ····?!」

執事がぎょっとした。


「閣下?顔が赤いようですが····どうされました?毒でも盛られたのでは」

(やはり赤いのか)

「そんなヘマはしない。体調が悪いだけだ」

「マーシャル様が体調が?!」

体調を崩すより、毒を盛られる方が自然らしい。


「うるさい騒ぐな。今日はもう休むから下がれ」

慌てる執事に上着を押し付け、下がらせた。



「ーふぅ」

ベッドに仰向けに倒れ、目を閉じる。

(まぁ、一晩寝れば治るだろう)


ふと、目を閉じて考えてしまった。

(ロズウェル嬢はもう寝ただろうか?月夜に光る姿は本当に可愛らし····うぅっ)

また心臓が苦しくなってきた。ーまずい。本当に毒を盛られたのだろうか?確かに今日のパーティーでは呆けていた時もあるが、本来自身で毒を生成できる白蛇の獣人だ。一口でも毒を飲めば、分かるはずなのだが。


マーシャルはそのまま、目を閉じ、無理矢理睡眠に入った。






❋❋❋❋❋


ー夢を見た。クリーム色の髪の令嬢と、会場でダンスを踊っている。外の暗闇ではなく。

ダンスが終わると、2人は見つめ合い、マーシャルは令嬢を抱き寄せた。そしてー····


「ッッッ?!」

飛び起きた。マーシャルは混乱した。

ものすごい動悸だ。こんなことは初めてで、動悸の抑え方が分からない。体温も上昇している。

(治っていない?なんだこれは。毒ーでなければ、呪いの類いか?)



大国ダナンディアの剣、マーシャル·グレイシス公爵が、呪いにかけられたとなると、騒ぎになるどころではない。

隣接する帝国コナーや、侵略を狙っている蛮族たちが押し寄せてくるだろう。


「ーふぅ」少し深呼吸をして思考を整える。

(これはまずい。私の手では負えない。呼ぶしかないか)



ーコンコンコン。

「閣下、お目覚めですか?アーサー様が来られていますがいかが致しましょう?」

執事がドアの外から言った。


マーシャルは神の采配に感謝した。王宮魔術師の筆頭であるアーサー·ライナス。丁度助けを求めようと思っていた人物が、まさに邸宅に来るとは。

「ここへ通してくれ」









❋❋❋❋❋


「マーシャル。寝室に通すなんて珍しいな。やはり体調が悪いのか?」


さらりとした黒い髪、切れ長の紫の瞳。深い紫紺のローブを着て、アーサー·ライナスは現れた。王宮でも淑女からメイドまで、女性たちの視線は彼に注がれる。婚約者がいなければ王宮は火の海だろうとユリウス陛下が言っていたのを思い出す。


「相変わらず、お前は無駄に見目がいいな」

(このような外見ならば、ロズウェル嬢も喜んで手を取ってくれただろうか)


マーシャルの不躾な挨拶に、アーサーは呆れ顔で返した。

「お前にだけは言われたくないな。まぁいい。どうした?アレンデルにお前の様子がおかしいから、訪ねろと言われたんだが、本当に調子が悪そうだな?」



マーシャルは執事にも部屋から出るように指示し、扉を閉めた。


「呪いをかけられたかもしれない。調べてくれないか」


アーサーの顔色が曇る。

「何だと?お前にそんなことが出来る奴がいるのか?」


「それが分からない。だがどう考えても体調がおかしい」

「ーわかった。調べよう」


アーサーはマーシャルの前に膝を付いた。両手を地に着け、呪文を唱える。古代語のため、マーシャルには聞き取れない。


マーシャルの立つ床に魔法陣が浮かび上がり、淡く光を放った。


「····ん?」

アーサーが眉を寄せる。


(解読が難しい呪いなのか?)

マーシャルが考えていると、魔法陣は消えアーサーが立ち上がった。


「何も、かかってないぞ。体調も悪くない。健康そのものだ」


「なに?」

2人はしばし見つめ合った。








第3話、読んでいただきありがとうございます。

いいね、ブクマなど励みになります。


第4話は明日の更新予定です。

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