第6話 どこでも変わらない事
これからはドンドンいきます。
「エルナ、どこにいるんだ」
アレフさんの店から歩いて数分、エルナをさがして歩きまわるも見つからない。はじめてきた街で歩き回るのが無謀だったと思う。じっとしてた方が早く逢えたかもな。
そして何より・・・・・・目立つ!
黒髪に黒い瞳ってだけでも注目されるのに、おまけにこっちでは見慣れない刀を持って歩いている。好奇の目に曝されるのも仕方の無い気もする。…しかし、指差されてこそこそ話されるのは、あまり気分のいいモンでもないな。
「エルナを見つけてとっとと帰るか」
そして、エルナがいないかと辺りを見渡す。・・・・・・・・・・いた。
だが、正直あまり関わりたくない状況だ。なんでアイツ・・・
「王道っぽい不良に絡まれてんだよ!」
確かにアイツは見た目だけならかなりの美人だろう。そう、見た目だけなら。
中身を知らない二人組の不良は口々に言っていく。
「キミ、カワイイね~」
「俺達と一緒にお茶でもしない?」
(いや、ベタ過ぎんだろ)
不良の方々の言動にそう思い、同時にやや同情の念を覚える。エルナならあんな奴ら殴り飛ばすか、魔法で追い払うか、どちらかだろう。
なんて達観していた俺の耳に信じられない言葉が飛び込んできた。
「あ、あの、困ります。連れがいるので」
・・・・・・・・・はい?
俺は我が耳を疑った。あのエルナが、あんな殊勝なセリフを言うなんて…
俺が唖然としている間に、不良達は言葉を重ねる。
「またまた~、さっきから見てたけどそんな奴いなかったじゃん」
「悪いようにはしないから、お願い、少しだけでいいんだけど」
「え、あの、ですから・・・」
さらに困ったような声を出すエルナ。
「おっと、ボケッと見てる場合じゃないな」
気を取り直すと、エルナの元へと歩き出した。
「ちょいとお兄さんがた」
なるべくフランクに不良の方に話しかけてみる。
「あん?んだよガキ」
「こっちは今立て込んでんだよ」
手のひらを返したような態度。分かりやすいっつーか、単純っていうか。
改めて、不良達を見てみる。いかにも悪ですって言ってるような服装。二人でお揃いの短剣のようなものを首からぶら下げている。・・・どこの世界でもこんな奴らはいるんだな。
「それ、うちの連れなんで。お世話になりました」
言いながらエルナの手をつかむ。
「あ、ちょ、ちょっと」
エルナが何か言っているが、無視してその場から逃げ出そうとする。
「待てよ」
あー、やっぱダメか。
「何いきなり来てほざいてんだよ」
「俺たちはこれからその娘とお茶しに行くんだよ。とっとと失せろ」
不良は凄みながら脅してくる。正直、これっぽっちも怖くは無い。面倒くさいが仕方ない、・・・ちょっと遊ぶか。
「分かりました。ではこれで」
そのまま俺は帰ろうとする。エルナの手を掴んだままままで、
「待てや」
「何ですか?失せろって言ったじゃないですか」
「いや、その娘は置いてお前だけで消えろって意味だろ」
「なんだ。そういうことは先に言ってくださいよ」
「普通わかるだろ」
「見ず知らずの女の子をお茶に誘うような人に普通なんて言われたくないです」
「んだとコラァ!」
「じゃ、これで。お疲れ様でした」
再び帰ろうとする。もちろん手を掴んだまま
「おう!・・・ってコラァ!」
「その娘は置いてけよ!」
「イヤですけど?」
「てめぇ!」
「俺らのこと馬鹿にしてんだろ!」
「あ、ばれました?」
「やっぱりか!」
「もう少しはいけると思ったんですけどね。アンタらバカっぽいし」
「ケンカ売ってんのか!」
「ただいま3割引です」
「おちょくってんのか!」
ツッコミうまいな~この人たち。芸人にでもなればいいのに。
「すいません。そろそろ飽き・・・時間が無いので失礼していいですか」
「今、飽きたって言おうとしたよな!」
「言ってませんよ。言いがかりはやめてください、クズ野朗」
「誰がクズ野朗だ!」
「申し訳ございません。ゴミクズ様」
「丁寧に言い直したところで意味ねぇよ!てかちょっと悪化してる!」
「おい、ちょっと声落とせ。周りの奴らが見てきてる」
横目で周りを見てみると、確かに通行人がこっちを見ている。・・・そろそろだな。俺はこの二人を撃退するためのトドメの一言を大声で言い放った。
「僕の体ならどうしてもいいので、お願いです!この娘だけは見逃してください!!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
・・・沈黙。
騒がしかった街中が沈黙に支配される。
永遠とも思える数秒間。耳が痛くなるような沈黙を破ったのは、ジャリッという後ずさりするような靴の音だった。
その音を皮切りに周りの人たち(おもに男)の後ずさりする音が連続した。
その音に不良達は正気に戻ったようで、
「ちょっとォォォォォォ!なに言ってんのォォォォ!」
「おまっ、馬っ鹿じゃねえのォォォォ!」
と元気に叫んでくる。そして、俺はさらに追い討ちをかける。
「あの、僕初めてなので、やさしくしてください」
『・・・・・・・・・・・・』
「もうやめろォォォォォ!周りが俺らを見る目が人を見る目じゃなくなってるから!ゴミを見る目より酷くなってきてるから!」
「おい、逃げるぞ!このままだと警備兵が来るかもしれねぇ!というより一秒でもこの場に居たくない!」
「ち、畜生!俺ら、そんなに悪い事したか!?」
「どうでもいいから走れ!」
「お、覚えてやがれ!」
不良二人は元気に走っていきましたとさ。めでたしめでたし。
「じゃ、帰ろうか」
振り向いて後ろにいるエルナに言うと、
「アンタ、悪魔?」
なんて言われてしまった。ちょっとショックです。
帰り道、俺たちは街の人から「大変だったねぇ」、「元気出せよ」などのお言葉とともに、たくさんの食べ物を頂くことになりました。
いかがでしたか。
トモヤと不良のやり取りはすこし不自然でしたね(笑)
もっといい文章を書けるよう、精進していきます。