第3話 遭遇
少しずつ本筋に入っていきます。
「おーい。大丈夫かって聞いてんのよ。」
目の前の紅髪の少女が再び聞いてきたが、答えることが出来なかった。先程目の前にした光景で頭がいっぱいだった。
「ってゆーか、何あんな猪如きにやられてんのよ。少しは反撃とかしなさいよ。」
「い、いや、反撃って言われても」
あんなバケモノ、丸腰でどうこうできる訳が無い。
「何言ってんのよ。あんな雑魚、魔法で一発でしょう」
………………………は?
「…え、えっと、魔法って、あの魔法?」
「あの魔法ってどの魔法よ?」
質問に質問で返すのはどうかと思う、何てこと考えてると、少女は小さく嘆息した。
「はぁ…。とりあえずここで話すのもあれだから家まで来てくれる?………それとも、腰が抜けて立てない?」
少女は小馬鹿にするような目で見てきた。
俺はそれにむっとすると、
「んなわけねーだろ」
といって立ち上がった。
少女は、立ち上がった俺を一瞥すると、
「それじゃ、あたしに着いてきて」
そう言うと、さっさと歩き出してしまった。
「しゃーない、行くか」
俺は小走りで少女に追いつくと、隣に並んで歩き出した。
しばらく並んで歩いていると少女が突然言ってきた。
「それにしても、アンタ、変なかっこうしてるわね。」
「は?別に普通だろ?それを言うならお前の方こそ…」
そういって俺は少女の姿を改めて見た。布製の質素な服とスカート、革のベストを羽織っている。森が暗いせいで気づかなかったがこうして近くで見ると、少女はかなりキレイだった。
整った顔立ちをしていて、目はややツリ目、紅髪はポニーテールにしておりそれがまた良く似合っている。
じっと少女の顔を見ていると、少女が
「何、人の顔じっと見てんのよ」
と、頬を赤らめながら睨んできた。
やばい、怒らせたか、と考え、
「いや、カワイイ顔をしているなー、と思いまして」
正直な思いを伝えた。すると少女は、
「……ッ!な、何言ってんのよ!馬鹿!」
顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。
(あれ?褒めたつもりだったんだけど)
「ま、まあいいわ。それよりアンタ名前は?」
まだ頬を赤らめたまま、少女が聞いてきた。
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は篁 智哉だ」
「タカムラトモヤ?へんな名前ね。あたしはエルナ、エルナ・コーレインよ」
「エルナ、か。よろしくな。俺はトモヤでいいぞ」
「うん。よろしくねトモヤ」
そういって微笑む少女_エルナの顔に不覚にもドキッとしてしまった。
そんなこんなで森を歩いているといつのまにか周りに木の数も減り、明るくなっていた。
「なぁ、エルナの家まで後どれくらいなんだ?」
「もうすぐよ」
歩いている場所もいつの間にかちゃんとした道になっていた。この分だともうすぐだというのも本当だろう。
歩き続けること数分、道の先に木で出来た結構大きい家が見えてきた。
「ほら、あれがあたしの家」
そう言うとエルナは家に向かって走り出していった。
「ちょっ、待てよ」
走っていったエルナをあわてて追いかける。
「ただいまっ!」
大声で言い、思いっきり扉を開いたエルナの額に、
高速で飛んできたおたまがヒットした。
「いったぁ!」
額を押さえてうずくまるエルナ。
「扉はもっと静かに開けなさいって何度も言ってるでしょう!」
家の中からでてきたのは、恰幅のいいやさしそうなおばさんだった。どうやらさっきのおたまは彼女が投げたものらしい。
「うぅ、ごめんなさい」
よほど痛かったのか涙目になっているエルナ。
「全く、落ち着きを持ちなさいってあれほど……エルナ、あそこにいる男の子は知り合いかい?」
叱っている途中で俺の姿を見つけたおばさんがエルナに聞いている。
「うん、森の中で出会ったの。名前はトモヤだって」
「そうかい…。トモヤくん、ちょっとこっちに来ておくれ」
「は、はい!」
呼ばれて近づいていった俺の頭を彼女は両手でガシッと掴んだ。
「え、ちょ、何を」
「黒い髪に黒い瞳…、間違いないね」
俺の顔を覗き込んだおばさんは何かを確信したように言った。
「な、なに?どういうこと?」
訳が分からないという顔をしているエルナが、おばさんに聞く。
「この子はね、『渡り人』だよ」
「本当!?本当にトモヤは『渡り人』なの!」
分からん。話が見えん。
「あの…、『渡り人』っていうのは何ですか」
尋ねた俺に、深刻そうな顔をしたおばさんが答えてくれる。
「そうだね、色々説明があるけどまず最初にひとつ言っておくことがある」
そう言っておばさんが俺の目を見ながら、言った。
「ここは、アンタがいた世界とは違う、別の世界だ」
………………………………………………………………………………………………………………………………………へ?
次はこの世界のことや魔法について書きます。