第30話 森での生活
気でも狂ったのか、唐突にモンハンの小説をはじめてしまいました。この小説もろくに更新できてないのに。
まあどちらも手を抜いたりしないように頑張ります
ではどうぞ
「……おぉ…」
俺は今、モーレツに感動している……!
何故かって?それは、今俺の目の前に―――本物のマンガ肉があるからだっ!
すっげぇ~。ホントに骨ごと焼いてる、と感心しつつ、俺はゆっくりと手を伸ばした。触った骨は多少熱かったが我慢できないほどでもない。両手でしっかりと骨の両端を握り、かぶりつく。
「熱っ!でもうまっ!」
美味い。とにかく旨い。ちょいっと硬くて筋を感じるのはやはりもとが食用じゃないからか。でも味付けが塩だけだからか食欲を刺激されて食べるのをやめられない。口の周りにべったりと肉汁がついてるのに気にならない。
「お口に合いましたか?」
「ふぁい!ふぉってもおいひいでふ!」
「そうですか。それはよかったです」
正面に座ってご飯を食べているシルフィアは俺とは違い、ナイフとフォークを使って少しずつ削いで食べていた。くそぅ、これが育ちの差か。悔しいのに食べるのを止められない。
「そんなに慌てて食べなくてもお肉は逃げませんよ。それにおかわりは一杯あるんですから」
どうぞ、と渡されたおしぼりで口の周りをぬぐい、どうにか気を静める。さっきまでの俺ははじめてのマンガ肉でちょっとおかしくなっていたようだ。
時は夕暮れ、偶然にも俺がしとめた猪のおかげで豪勢な夕飯になった。八つ当たり気味に倒したことが申し訳ない。
それはともかく、この世界はまだ電気なんて便利なもの普及していないので、夜になると主な光源はランプかろうそくになる。でも真っ暗い中、ランプの灯りに照らされながらご飯を食べるのはちょっと…、というシルフィアの要望で、夕ご飯はまだ早いうちに食べることになった。とは言っても用意したのはシルフィアだけどね。
そういやこの子はとにかく俺に気を使うよな。いきなり押しかけたのは俺なんだし、どっちかっていえば気を使うのは俺のはずなんだけど…どうかしたのかな。
「……?」
じっと見られていることに気付いたシルフィアが首を傾げる。小さい子どもがするような仕草をしっかり者のシルフィアがすると、
(うっ…可愛い…)
そう思ってしまったのが恥ずかしくて、俺はやや俯いて肉を食べ始める。
今更ながらシルフィアってかなりの美少女だよな。同じくらい美少女のエルナやフィナやアリスと一緒にいたからかそこら辺の感覚が麻痺してるな。もとにもどさないと。
……………ハッ!今気付いたけどこんだけ美少女に囲まれてる俺ってかなりのリア充なんじゃ…って、んなわけないか。シルフィアとは会ったばかりだし、エルナとフィナとアリスとはそういうんじゃなくて、友達とかそういう関係だし。
あ、肉全部食っちゃった。もう一本いけるか……いけるな。よしおかわり。
そうやってぐるぐるといろんなことを考えていたからか、俺は気付けなかった。
「……………」
俺を見るシルフィアの瞳がどこか寂しげだったことに…。
夜、俺はむくりと布団から起き上がる。
「眠れない…」
あれだよ、寝すぎたんだよ昨日から今朝にかけて。よくあるよね、日中眠りすぎて夜眠れないの。俺は基本的に学校の授業中だったけど。
どうする?このまましばらく起きているか、それとも眠りにつくのをひたすら待つか。
「…ちょっと散歩でもするか」
少し考えてそうすることにした。外の空気を吸えば眠くなるかもだし。
布団から出て、出来るだけ音を立てないようにして進む。途中、シルフィアが寝ているであろう部屋に視線を向ける。
寝るときは大変だった。どうしてもベッドを俺に使わせたいシルフィアと、家主を布団に寝かすことの出来ない俺。しばらく言い争って折衷案としてシルフィアが「じゃあ一緒にベッドで寝ましょう」と言い出したときはマジで焦った。危うく悪魔の誘惑に負けそうになったし。
最終的に俺が「布団で寝かしてくれなきゃ腹を切る!」と《飛鳥》の切っ先を腹に押し当てることによってなんとか押し切ったけど。
暗い中、何回もどこかに脚をぶつけ、そのたびに焦ってシルフィアの部屋のほうを確認したりしながら外の出る。
外は月明かりのおかげで明るかった。見ると、あと数日で満月になるであろうという微妙な形の月だった。
ちなみに俺が一番好きな月は半月。自然の中で丁度半分になったってところがすごいと思ったから。まあ満月も好きだけどね。
「グルゥ」
「ん?」
横を見るとそこにはドラゴン。名前は確かグラだったな。グラの足元には骨が散らばっている。多分猪の骨だな。半分は俺達でもう半分はグラ。かなり大きかったから二つに分けても結構な量があった。俺もあの後四本ほど食ったせいで腹パンパンだし。
最初会ったときは驚きが増してたけど、こうやって落ち着いて見ると、
「かっこいいな、お前」
ドラゴンがいるって事は知ってたけど、まさか実物を見れるなんてな。
やっぱり強いのかな?コイツはまだ子どもだって言ってたけどすでにかなりデカいし。大人になったらそれこそ怪獣レベルだ。勝てる気がしない。
でもギルドとかあるし、やっぱりドラゴン討伐とか卵運びとかの仕事もあんのかな?
俺はやりたくないな~、と考えつつ、そっとグラの頭に触ってみる。
堅いけど…どことなく暖かい。やっぱり生き物なんだよなと思う。
「…ガルルァ」
しばらくグラを撫でる。やがて手を離すとグラは一声鳴き、俺から数歩離れてどこかへ飛んでいった。暗い空を飛んでいくその姿を目で追う。
ガタッ
「?」
今、家のほうからなんか物音がしたような………気のせいか。
「………戻るか。眠くなってきたし」
ふわぁ…、とあくびをしながら来た道を戻る。明日は早く起きてシルフィアを手伝おう。そう思いながら。
「おりゃぁあああああああああ!!」
全力で《飛鳥》を横なぎに振るう。その一閃によって俺の目の前にあった樹はズゥンと重苦しい音を響かせて地面に倒れる。
「ふぅ…とりあえずこれでいいか。んじゃグラ、あとはよろしく」
「ガルル」
グラは短く鳴くと、俺が切り倒した樹をその強靭な両足で掴み、翼を羽ばたかせ一気に飛んでいく。ちゃんとシルフィアの家の近くまでは運んでくれるはずだ。
夜が明けた次の日、やる気満々の俺に与えられたお手伝いはまたしても薪拾いだった。昨日拾ったではないかというと、猪を焼くのに使ったので少し足りないと返された。
やや渋った俺だったが、申し訳なさそうにお願いしてくるシルフィアを見ていて断る気になれなかったのだ。
またデカい生き物と遭遇したらやだな、と考えながら外に出た俺の目の前にグラがいた。その巨体を認識した瞬間、俺の頭の中にいいアイデアが浮かんだ。それは樹をまるごと一本持って来たらいいのではないか、という考えだった。
少し考えて出来なくもないと判断した俺はグラを連れて森の中で手ごろな樹を切り倒した。あのサイズならしばらくは持つだろうから、明日からは他のお手伝いだろう。
ちなみに何故今日からやらないのかというと、初日にシルフィアから手伝いは一日一回と条件付けられてしまったからである。
しっかし、改めて目にするとすごいな、《飛鳥》の切れ味は。剣の腕は素人にケガ生えた程度の俺が振るっても樹を一刀両断にできるんだから。古戦器だからかな。
でもそうなってくると、この切れ味を活かすためにも俺も少しくらい剣の心得があってもいいと思う。幸いここは森の中。見る人なんていないしな。俺は努力を人に見せたくないタイプなのである。
やっぱりこういうのは型から入るべきだよな。なんかいい感じの記憶に無いかな………
「あ、あれでいいか」
ちょっと考えたら出てきたのはモ○ハンの太刀の動き。あれなら分かりやすいし、大まかな動きは頭に入っている。伊達に使用回数が200回越えてるわけじゃないぜ。もっと多く使ってるのもあるけど。
基本は振り下ろし、突き、切り上げの繰り返しだったな。気刃斬りは…よくわからんので、とりあえず基本の動きを適当にやってみることにする。
振り下ろし、突き、切り上げ、振り下ろしを繰り返す。たまに振り下ろしを二回続けたり、斬り下がりを加えてみたりといろいろ試行錯誤する。頭の中にあるゲーム画面の動きと自らの動きが少しずつ重なっていく。そして、画面では分からないような細かい動きなどをこの場で考え出し、少しでも動きやすくなるように微調整を重ねる。
ある程度一連の動作が体に染み付いたところで《飛鳥》を振るう手を止める。かなり息が上がってるし、そろそろ帰るかと思い、ちょっと離れた場所においてあった鞘を拾い、刃を戻す。
今日気付いたことなのだが、どうもグラはこの“鞘”を怖がっているらしい。最初は《飛鳥》自体を避けているのかとも思ったが、刃を抜き、鞘を適当放り投げると、明らかにそれから離れるように動いたので判明した。一体何故“鞘”なのだろうか。何か嫌な匂いでも染み付いているのだろうか?
(そういえばユアンがこの鞘は『龍の胃石』とかいうので作られてるって言ってたな。『龍』ってついてるしなんか関係あるのかもしれない。帰ったらシルフィアに聞いてみよ)
というわけで、帰宅。
「ただいま~」
「おかえりなさい」
俺の声に反応して台所から小走りでやってくるシルフィア。
「…………………」
「どうしたんですか?顔を逸らして」
「いやなんか…今のやり取り、結構恥ずかしいっていうか……いや、なんでもない」
「? …とにかく、座っててください。洗い物が終わったらお茶にしましょう」
促されるままに椅子に座る俺。さっきのやり取りのせいで顔は俯いたままである。
なんだよさっきの!家族か!つか夫婦か!ああもう恥ずかしい!ていうかあれ?俺こんな純情なキャラだったっけか?
自分のあり方に首を捻っていると、洗い物を終えたらしいシルフィアがお茶とお菓子を持ってきてくれる。お茶とお菓子を楽しみつつ、楽しい会話に花を咲かせる。
しばらく歓談をし、お菓子とお茶もなくなりかけた頃、俺は小さな疑問をぶつけた。
「シルフィア、『龍の胃石』って知ってるか?」
「『龍の胃石』ですか?確か………ちょっと待っててください」
そう言って席を立ったシルフィアが部屋に入っていき、数十秒後、一冊の本を持ってきた。皮の表紙が擦り切れていてかなり古いものだとわかる。
「確かこの本のどこかに…………あった。ここです」
シルフィアが開いたページを見せてくれる。こういう時、こっちの文字を勉強してて良かったなと感じる。読み聞かせてもらうのは恥ずかしい。えっと、なになに…
【『龍の胃石』とは、ドラゴン種の中でも炎を吐く炎獄龍の仲間の胃に堆積された鉱物のことである。この鉱物はもとはただの岩石だったが、炎獄龍の吐くブレスの熱と、胃液などの体液の影響によって変化したものである。この鉱石は炎に対し、圧倒的とも言える耐性を持っており、それを持っていれば炎から避けていくとまで言われている。
ただ、この『龍の胃石』は、年を重ねれば重ねるほどに強靭な固体になっていくドラゴン種の中で、特に老成した炎獄龍の体内から僅かしかとれない上に、熱することで軟らかくすることが不可能なため、加工が難しいとされ、これを用いた武具は超一級品として扱われる】
「………なにこれ…?」
これを読む限り、そして俺が理解できる限りだと、『龍の胃石』というのはすさまじく貴重なものらしい。それをただの鞘に使うなんて…。
「私が知っているのはこの本に書かれていることだけですけど……どうしていきなり『龍の胃石』なんてものを?」
「あ~、いや、実はね…」
俺はグラが鞘を避けていることを説明する。すると、
「ああ、それはですね、きっと怖がっているんですよ」
「怖がってる?」
「はい。おそらくですけど、長年龍の体内にあった『龍の胃石』には炎獄龍の臭いが染み付いてるんだと思います。人や他の動物は分からなくても、おなじドラゴン種のグラには分かったんじゃないでしょうか」
「なるほどねぇ…」
俺はしみじみと呟きながら鞘を見る。これがそんなものだったとは……俺今まで抜刀した後は邪魔だったからそこらへんに投げていたんだけど大丈夫かな?傷とかついてないよね?
「あ、そうだシルフィア。この本、しばらく借りていい?俺の知らないことがけっこう載ってると思うし」
「ええ、構いませんよ。私は何度も読みましたし
「そうか。ありがと」
許可を貰った俺はさっそく本を読み進めていくことにする。
「……………くすっ」
シルフィアはそんな俺を見て、なにがおかしいのか小さく笑っていた。
「…ふぃ~…」
肩まで湯船につかり、息を吐きながら空を見上げる。夕暮れ時で空が赤い。
あれから時が経つのも忘れて本を読んでいた俺。するとシルフィアが「お風呂に入りませんか?」と言ってきたので、俺はお言葉に甘えることにした。
驚いたことに風呂とは木桶風呂。それを見た俺はこの世界に来て何度目かの感動を覚えた。
俺が本を読んでいる間に風呂を沸かしておいてくれていたシルフィアにお礼を言い、申し訳なさを感じつつも風呂に入った。
風呂といっても、いってしまえば家のそばに木の桶をドンと置いてその中にお湯を入れたもの。体を洗ったりすることは出来ないが、熱いお湯に浸かるだけでも大分違うものである。
十分に風呂を堪能し、体を拭いて服を着る。濡れた頭に貰ったタオルを巻きつつ、再び読書に勤しむ。
それからいばらく経って、
「あ、《飛鳥》忘れた」
シルフィアに風呂に呼ばれたときになんとなく持っていき、それから家の外の壁に立て掛けっ放しだ。
今までだったら明日取りに行こうと思っていたのだが、いよいよアレの価値が分かっていると、放置しておくのは不安だ。
どうしようもなく小市民な俺は、結局《飛鳥》を取りに行くことにした。
陽はまだ完全に落ちきってはおらず、やや薄暗い程度。周りを注意したりすることもないので、俺はすたすたと歩いていく。
木桶風呂は家の裏側にあり、《飛鳥》はそこの壁の端に立てかけた。はっきりと場所を覚えていた俺は、前を見ずに少し歩けば入ることの出来る森の中を眺めていた。
「――あっ!」
転ぶ。地面から飛び出ていた木の根か何かに躓いてしまったらしい。咄嗟に両手をついたのでどこかを擦りむいたりはしたいないようだ。
いたた…、とついた両手を振りつつ立ち上がる。ちょうど角から飛び出すかたちで転んだらしい。気をつけないとダメだな、と呟きながら前を向き、
「………………………」
木桶風呂に浸かっていたシルフィアと眼が合う。
「………………ぁ」
いきなりのことに俺も固まってしまい、見詰め合っている状態になる。
少し考えれば分かることだった。俺が風呂から上がってからシルフィアに会わなかったんだから、彼女がここにいることは予想できたはずだ。てっきりシルフィアはもう風呂に入ったのかと思った。
「……………い」
呆然としていたシルフィアがわずかに声を発する。それと同時に彼女の顔がどんどん赤くなっていき、
「いやぁあああああああああああああああああ!!」
ばっ、と突き出された彼女の手に青白い光が集まっていき、俺目掛けて飛んでくる。
それに対して俺は微動だにしなかった。理由は二つ。
一つは、このままアレを浴びれば、少なくともこの状況から脱することができるから。
もう一つは、なにか疑問を感じたから。
そして、
「ぐぎゃあああああああああああああああああ!?」
青白い光を受け、俺はゆっくりと倒れる。
頭の中に小さな引っ掛かりを覚えながら。
さて、前書きでも書きました。新しく始めたモンハン小説。
ストーリーなどはともかく、出てくるモンスターや主人公の装備などは完全に自分の趣味です
各話投稿の割合はあちらの方を二話出してからこちらを一話出すという風にいきたいと思います
どちらもどうかよろしくお願いします