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第29話 考え過ぎはよくない

遅れて申し訳ありませんでしたぁ!以上!

 翌朝、起きるとものすごくお腹が空いていた。軽く死ねるレベルで。

 今思うと大体午後二時くらい(だと思う)に空から落ちてきて、それから一切飲まず食わずだったから当然か。

 食べ物を探すためにベッドから出ると、体の痺れは無くなっていた。我ながら頑丈な体でよかったなぁ~、と思う。

 んで、適当に部屋を移動してると、昨日の少女がいた。

「あ、おはようございます。もう体は大丈夫ですか?」

「うん。もうぜんぜん平気」

「そうですか、よかったです。これから朝ごはんですけど一緒に食べますか?」

「ぜひお願いします」

 少女に案内されるままにテーブルに着き、しばらくするとパンとかサラダとかスープとかが運ばれてきた。ありがたいです。

「むぐむぐ……このパン美味いな」

「そうですか。手作りなんですけど、喜んでいただけて何よりです」

 そう言って微笑む少女。ええ子やなぁ…。きっとご両親の育て方が良かったんだろう。

「あれ?そういえばキミ、家族は?」

 パンをもしゃもしゃしながら聞くと、彼女の顔に影が射す。

「その……母は数年前に病で亡くなって「すいませんでした」えっ!?あ、あの、気にしないでください」

 彼女がいいと言ってくれたので土下座体勢をやめる。まったく、自分のデリカシーのなさには呆れるな。こっちの世界に来てから何回こんな話を聞いたんだよ。いい加減ちょっとくらいは考えろよ俺。

 ともあれ、目の前の少女の顔に影を射したままにしておくのは忍びない。何か話題を。

「あ、そういやまだ自己紹介もしてなかったな」

「あ、本当ですね。うっかりしてました」

 俺はこほんと咳払いをして、

「俺は篁智哉。昨日は泊めてくれてありがとう。礼を言うよ」

「私はシルフィア・リーフレットです。気にしないでください。責任は私にあるんですから」

 笑っている少女――シルフィアの顔がまだ少し暗いことに気付いた俺は、ここぞとばかりに質問をする。

「ここってどこらへんなの?まだレパーラの中?」

「? はい。ここはレパーラの北東にあるアルトリアの森ですが……知らなかったんですか?」

「えっと……それが…」

 首を傾げているシルフィアに簡単に事情を説明する。

「それは……大変でしたね…」

 哀れまれた。

「ここから城…ってか、ミナレットまではどれくらいかかる?」

「そう…ですね。ちゃんと計算したわけではないのではっきりとは言えませんけど……2日、いや3日くらい歩き詰めれば着くと思います」

 OK。帰りたくないです。メンドイです。かったるいです。………はぁ。

「……どうすっかなぁ…」

 ぐでー。テーブルに突っ伏す。ちなみにもう食事は終わってたりする。

「………………あの」

「ん?」

 食器を流しに置いて戻ってきたシルフィアが声をかけてくる。

「もしよろしければ、何か手段が見つかるまで…ここにいませんか?」

「え?」

「その…トモヤさんがよかったらですけど…」

「………」

 じっと目の前の少女を見つめる。

 普通は、会って間もない他人を家の泊めるなんてそう無い。よっぽどお人好しか、なにか考えることがあるかのどちらかだろう。

 今思うとこの世界に来たばかりの俺を家に泊めてくれたエルナとおばさんはそのどっちだったのだろうか?

 エルナとおばさん、そして目の前の少女。いい人だとは思う。それでも他人を家に泊めるほどだろうか………?

 ………………………………………………。

 ………………………………。

 …………………。

 ……考えんの面倒。

「じゃあ……お願いします」

 そう言うとシルフィアの顔が輝いた………気がした。

「分かりました。それじゃあ私は食器を洗ってくるので、トモヤさんはゆっくりしてて下さい」

 流し台へ向かうシルフィアの足取りは軽かった―――ような気がした。

「…………」

 ……よく分からん。



 ゆっくりしていてくれと言われたものの、ただじっと人が働いてるのを見ているだけというのはなんか落ち着かない。

 ということで手伝いを申し出たところ、薪拾いか洗濯と言われたので薪拾いを選んだ。……手伝いをさせてくれるまでかなりの問答があった。

 そんなわけで現在森の中。木々の間をくぐり、えっちらおっちらと木の枝を集めています。

 いっそのこと樹をまるっと一本切り倒してしまおうか、と一瞬思ったりもしたがやめた。切ったら切ったで運んだりするのが大変だし。

 でも、ちまちま枝を拾っていくのは結構腰にくる。

 なので上半身を捻ったり適当にストレッチしていると、


 バキバキと木々を押しのけながら、前方より巨大な猪が出現した。


(あ、なんか既視感(デジャヴ)……)

 呆然とする俺を見つけた猪は、前足で地面を引っかき始める。突進の予備動作だ。

 鼻息荒く身構えている猪を、ぼーっと見つめる。

 何故だ…?なんでこんな状況に俺はいるんだろうか…?とりあえずこの猪のせいではない。偶然遭遇しただけだし攻撃してこようとしているのも自然の中では普通だろう。

 シルフィアも違う。薪拾いを選んだのは俺だし、そもそも手伝いだって強引に請け負ったところがある。

 俺がこんな森のど真ん中に落ちる要因を作ったのはユアンだが、あれは事故だと割り切ろう。どこか釈然としないものがあるが。

 じゃあ、いつからだろう。こんな不幸なのは。異世界に落ちたのは…まあいいや。面白いし。

 ていうかあれ?幸せって何だっけ?俺今まで幸せだったのか?いや待て俺。そんなこと考え出したらキリがない。きっと俺は幸せだったさ。そう信じよう。

 ここまでの思考に数秒。その間ずっと地面を引っかいていた猪は、猛烈な勢いで突っ込んで来る。一歩進むたびに地面に根付いている木の根が砕けていくのを見るとすごい威力なんだと分かる。

 急いで避けよう。そう思って横に飛んで回避しようとした――その時、猪が砕いた木の根の破片が額に直撃した。

 それなりの勢いだったものの小さいものだったためケガにはならなかった。少しヒリヒリする程度だ。

 だが、そのわずかな痛みを認識した瞬間、俺の中で……何かが弾けた。

 猛烈な勢いで迫ってくる猪。それに対して俺は回避行動を中断して向き直る。漫画やアニメで見た姿を真似して、《飛鳥》を構える。森は危険だからとシルフィアに持たされたのが役に立つとは思わなかった。

 猪との距離が数メートルを切る。前の世界で得た知識、そしてこの世界に来てからの経験。それらを総動員して刃を振るう。………同時に、今までの人生で体験した理不尽なことを思い出す。

 そして、

「こんちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「ブモォッ!?」

 叫ぶとともに繰り出した渾身の一撃。腕だけでなく体全体で踏む込むよう放った突きは、猪の小さな目と目の間――眉間に真っ直ぐに吸い込まれていき、貫通。猪は悲鳴を上げながらもその体は慣性の法則に従い進み、鍔近くまで猪の体内に納まったところで動きを止める。程なくして、猪の目から生気が失われ、ズゥン…、と重苦しい音を立てて地に伏した。

「……っ」

 右腕が痺れる。流石にこのサイズの生き物の頭蓋骨は硬い。フェンシングとかを参考にして片腕だけで突いたのは間違いだったな、と考えながら猪の亡骸から《飛鳥》を抜き取る。刃を一振りして血を飛ばし、鞘に収める。

「しっかし…どうしたもんかなぁ、これ」

 改めて見ると猪はまじでデカい。一人で運べるものでもないし、そもそも森の中だと運びにくい。かと言って放置すんのもなぁ……。

「…………トモヤさん、何してるんですか?」

「え?」

 不意に後ろから声をかけられる。振り向くとシルフィアが小走りで駆け寄ってきていた。

「一体何を……わっ、スゴい!こんなに大きいのはじめて見ました。トモヤさんがやったんですか?」

「ん、ああ。突然飛び出てきたから。でもこれどうするよ?二人じゃ運べないだろうし…」

「あ、それなら大丈夫ですよ」

「?」

 俺が首を傾げていると、シルフィアは片方の人差し指と親指を口に咥え、ピー、と指笛を鳴らした。F○10を思い出して切なくなった俺は間違っていないだろう。

 しかし、こんな森の中で指笛なんか鳴らして、どうするつもりなんだろうか。

 

 ――バサッ、バサッ


「ん?」

 頭上に影が射す。もともと樹が生い茂ってたからあまり陽の光は入ってこなかったが、それが遮られた。気になって上を見る。

 緑。

 それしか視界に無かった。わずかに見えていた青い空が、緑色のなにかで見えなくなっている。

 いや違う。なんなのかは分かっているんだ。ただそれを受け入れるのを脳が拒否しているだけなんだ。

 その何かは自らの翼を動かし、ゆっくりと降りてくる。やがてそこいらに生えている木々よりずっと太く頑丈そうな脚で地に降り立った。

 それの体の大部分はこの森にあるどんな緑よりも深い緑で彩られていて、部分部分にこげ茶色が混ざっている。

 バギィンッ! とそれが尻尾を一振りしただけで、その範囲内にあった樹が折れる。

 …………うん。いい加減現実を見よう。今、俺の目の前にいるのは――ドラゴンだ。

 俺が呆然としていると、シルフィアがドラゴンの方へ歩いていく。俺は止めない。だってそうだろ?あのタイミング、どう考えてもシルフィアが呼んだんだ。

「ゴメンね、いきなり呼んじゃって」

「グルルゥ」

 シルフィアがドラゴンの頭を撫でると、ドラゴンは気持ちよさそうに鳴いた。

「あ、紹介しますね。この子は緑地龍(アースドラゴン)の子どもで、名前はグラです」

 子どもて。少なめに見積もっても全長十五メートルはあるんだが。

「じゃあグラ。あれ、私の家まで運んでくれる?」

「グルゥ」

 グラは小さく喉を鳴らすと猪の死体を両足で掴み、再び空へと飛び立っていく。というか飛ぶときの風がものすごく強いんですけど。

「これで大丈夫です。グラは頭のいい子なんで、ちゃんと運んでくれると思います。今日はご馳走ですよ、トモヤさん。……………トモヤさん?」

「お、おぅ……」

 風で乱れた髪を直しながらシルフィアが話し掛けてきたが、ついつい呆然としていた。

「…驚きましたか?」

「うん。あんな近くでドラゴンを見たことなんかし」

 そもそもドラゴンがいる時点で驚きだし。

「そうですか。でも、すぐに慣れると思いますよ」

 慣れたくないです。

「じゃあ帰りましょう。薪もしっかり集めてくれたようですし」

 シルフィアは俺が置いていた薪の束を抱えて歩いていく。俺はそれを追いかけシルフィアから薪を取り上げる。「私が持ちます」と言ってくるシルフィアをぬらりくらりとかわしながらふと思う。

(俺は今幸せなんだろうか?) 

 

なんなんでしょうね今回は。遅いくせに中身は短い。もうすこしがんばりたいです。

それはさておき

前書き・後書きに何を書けばいいのか分かりません。他の方の小説を見るといろいろ書いているのですが、自分はああいうのがにがてなのでどう書けばいいのいかかなり悩みます。

……苦心して書いたものがうっかりで消えてしまうこともしばしばありますし。

まあこの場は近況報告的なものとして使っていけたらな、と思います。

それでは

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