第2話 深い森の中
今回は智哉視点です。
おかしい。
確かに俺は駅前の交差点にいたはずだ。なのにどうしてこんな森の中にいる。
いや待て、落ち着け俺。現状をよく確認するんだ。まずここはどうやら本当に森の中らしい。真っ暗だと思っていたが、違うようで、頭上の木の葉が幾重にも重なり日光を遮っているようだ。
服装は、下は青めのジーンズ、上は白地になんか紋様が描かれている半袖Tシャツ、そして、腰に白と黒のチェック柄のジャケットを結んでいる。持ち物は財布や小物が数点合ったはずなんだが、どうも綺麗さっぱり無くなっている。
「つか寒っ!」
どうも日光が遮られているせいで、気温が低い。腰のシャツを羽織ると幾分マシになった。
「とりあえず、適当に歩くか。自転車も消えてるし」
歩くこと数分、周囲の風景はほとんど変わらず、生き物の姿も見当たらない。
「いや、虫すら居ないなんて。このまま餓死するんじゃない俺」
歩いても歩いても森に変化は無く、おまけに足元では木の根が複雑に絡み合っており、歩き難いことこの上ない。
「もうこの際何でもいいから何か生き物現れろ!」
寂しさに押しつぶされそうになり、心から叫んだ瞬間、すぐそばの草むらから、
巨大な猪が現れた。
「前言撤回。今すぐ俺の周囲半径一kmから居なくなってください」
猪の姿は〇ンハンのド〇ファンゴにかなり近かった。
だが、その大きさはゲーム画面で見るようなものではなく、軽自動車の大きさよりもやや大きいという冗談にしてもデカすぎるものだった。
そんなことを考えていると、猪はこちらを向きあしで地面をひっかき出した。
(まさか、突進でもしてくんのか?)
そう思った瞬間、猪は弾かれたように走り出した。
「チクショウ!やっぱりか!」
そう叫ぶと、一目散に真横に走り出した。
猪のスピードは車並だったが、何とか回避できた。だが、猪は避けられたと察すると素早く方向転換をし、再び突っ込んできた。
「うそだろ!」
泣きそうな声で叫ぶと同時に全力で横にからだを投げ出した。
猪が走っていった先に、周りの木より一回り太い木があった。
(そのままぶつかって目を回してくれ!)
猪はそのまま木にぶつかった。が、ぶつかった木が根元から折られたのだ。
「はは、ありえないだろ」
木を根元から折った猪はゆっくりとこちらを向き、また足で地面をひっかき出した。
(もうだめか。)
心の中で思うと、それに合わせたように猪は走り出した。
直後、猪の側面から火の柱が立った。
比喩ではなく本当に棒状の火が猪に突き刺さったのだ。猪はそのまま横に倒れ、しばらく悶えていたが、やがて動かなくなった。
「おーい、だいじょうぶですかー。」
火の柱が飛んできたと思われる方から声が聞こえてきた。
声のしたほうを向くとそこには、
紅い髪の少女が立っていた。
第2話目はいかがでしたか。
投稿は不定期です。書けるときになるべく出せるようにします。