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第27話 散髪と失敗

どうも作者です

今話は今年最後の投稿です

今思うと連載し始めてから約半年よくもまあ続けてこれたなと思います

アクセス数も気付いたら8万越え!驚きました

ただ半年もやってて若干投稿数が少ないんじゃないかな、と思いました

来年はもっと早く投稿していけたらなと思いました

そんじゃ、どうぞ

 ある日、窓から射す暖かな陽の光を浴びながら、俺は自室で本を読んでいた。

 今日はクレアはメイドさんたちの集まりで、ランとリンは家庭教師の人が来るとかでいないので、今日は部屋にはエルナとフィナとアリスしかいない。いつもみたいに大勢でいるのも楽しいけど、こういう少ない人数でまったりするっていうのもいいもんだ。

 なんてことを考えながら、俺は本のページを捲り進めていった。

「(ぐしぐし)」

「………」

「………」

「………」

「(ぐしぐし)」

「………」

「………」

「………」

「(ぐしぐし)」

「………」

「………」

「………」

「(ぐしぐ――)」

「あーもうさっきから気になるわね!どうしたのよ!?」

 黙々と編み物をやっていたはずのエルナが急に叫びだした。何?俺?

「いや…あの…さっきから髪が目に入って…」

「髪?確かに長いわね」

「チクチクしてうざったいんだよ」

「ふうん……アタシが切ってあげましょうか?」

「え、出来んの?」

 当然でしょ、と言って自慢げに胸を張るエルナ。まったく、張るような胸も無「トモヤ……?」なんでもございません。

「…それじゃ、お願いします」

「…分かったわ。で、どれくらい切……」

「え~っと、けっこうざっくり――エルナ?」

 俺の髪に触れたエルナが急に黙り込んでしまう。え何?白髪でもあった?それともシラミの卵でもあった?

「ア…アンタ……」

「な、何?なんかあったの?」

「なんで………なんでこんなに髪質いいのよッ!?」

「……はい?」

 予想外でした。

「なんでこんなにサラサラで……どうやってんの!?」

 いや知らんよ。

「………本当だった」

「ふわぁ……柔らかい…」

 おいコラ。三人で頭こねくり回すな。

「トモヤ、あんたメシュラとか使ってる?」

 今エルナが言った『メシュラ』というのは、俗に言うリンスみたいな物です。なんでも髪に良い植物のエキスを濃縮した女性御用達の一品らしい。この城の風呂場にもあったけど…

「使ってない……けど?」

「じゃあなんでこんなに髪いいのよ…?なにアンタ、ケンカ売ってる?」

「なんでそんなに怒ってんの!?」

 よく分からんが恨みを買ったようだ。

「はぁ…まあいいわ。それより髪切りに行くわよ。街には美容室くらいあるだろうし」

「ええ~、いいよ面倒くさい。こんなのはさみでちょっちょっとやれば…」

「ダメよ!そんな良い髪を適当にするなんて、一人の女として我慢できない!」

「いや俺の髪だし…」

「アンタの意見なんてどうでもいい!」

 うわぁ、酷い横暴だ。

 そのまま俺はずるずると引きずられて扉へ近づいていった。

 ガチャ。扉を開けると、

「いいじゃねェか。髪くらい」

「ダメです。一国の王なら身だしなみくらいしっかりしてください」

「じゃあ王様辞める」

「下らない事言ってないでしゃんとしてください!………あ」

「お…」

 同じように引きずられているユアンと引きずっているリアさんがいた。

『どうも……』

 妙な空気が流れた。




「ったく…どうして女ってのはあんな細かいことを気にすんだろな」

「まったくだ」

 俺とユアンは愚痴っていた。

 今いるのは城ではなく街の中。方角的には東南の辺りらしい。ここらへんにユアンがよく使っているという美容室があるそうだ。

 ちなみに護衛なんかはいない。王様が外出するんだから護衛の一人や二人、少なくともリアさんくらいはついてくるものだと思っていたけど、

「護衛なんて意味ありません。なにより私はユアン様が残した政務を処理しなければならないので」

とのことだ。ちゃんと仕事しろよ国王様。

 さらにユアンは服装を変えていない。いつも通りの着流し姿だ。周りの人がちらちらこっち見てる。隣を歩く俺の姿が普通だから余計に目立つのかもしれない。

 今俺が着ている服はこの世界の一般的な服だ。元々着ていた服は穴ぼこで破けたりしてしまっているので直してくれているらしい。ありがたい話だ。

「着いたぞ」

 ユアンの声に前の建物を見る。普通の白い漆喰の壁、はさみを模ったかわいらしいデザインの絵。店舗名は『乙女の園』と書いてある。

「なんか……普通だな。店名以外は」

 王様御用達って言うからもっとすごいのかと思ってたけど…案外平凡だった。

「俺は名より実を取る派だからな。店はこんなでも店員の腕は確かだぞ…………ちょっとアレだけど…」

「?」

 最後のほうなんて言ったのか聞こえなかったけど……いいか。

 ユアンがドアを開けるとカランコロンとドアベルの音が鳴る。ああ…いい音だ。


「あらぁ、ユアンちゃんじゃない。いらっしゃい」


(…ん?)

 おかしいな。何だ今の声?優しい大人のお姉さんが言いそうなセリフなのにものすごく野太かったぞ?

 声の主は店の奥にいるらしい。ちょうど日陰になっていて姿は見えないが、徐々に近づいてくるにつれて、その全貌が見えてきた。

 丸太のように太い脚。着ているタンクトップに浮き出ている八つに割れた腹筋と逞しい胸板。熊くらいなら数秒で絞め落とせそうながっちりとした腕。そんな見事なマッスルボディの持ち主は、


 ――口紅とマスカラで彩られた、角刈りが似合う濃ゆい顔のおっさんだった。


「…………………それじゃあユアン。私は買い物に行って来るから、ちゃんと切ってくるのよ」

「お母さんみたいなことを言って逃げようとするな。しかも下手だし」

 くそっ。回り込まれた。

「ユアンちゃん、そこの男の子どちらさま?」

 ユアン『ちゃん』て。国王様をちゃん付けって。

「ああ、こいつは俺の客だ。ちょっと姉さんが世話になってな」

「あら、メイラちゃんが?裁判で騒動が起こって助けられたって風の噂で聞いたけど…もしかしてその子が?」

「そうだ」

「まあそうなの!私からもお礼を言うわ。ありがとね」

「……どうも」

 うん。根はいい人なんだろうね。ちょっと感性とかが歪んでるだけで。

「そうそう自己紹介が遅れたわね。わたしはガイル・ロゼルタ。可愛らしくガッちゃんって呼んでね?」

 ………根はいい人なんだろうな…。

「なあガッちゃん。お話はそれぐらいにして本業のほうさっさとよろしく」

「もぅ分かってるわよ。ユアンちゃんったらせっかちねぇ」

 ガッちゃんって呼んでたよ。

 見た感じ従業員は彼(?)一人らしく、必然的に髪を切るのは彼(?)のようだ。あの太い指ではさみなんか持てるのかと思ったが、意外にちゃんと扱えていた。小指がピンと立っているのが無性に腹立たしいが。

「あらそうなの。またリアちゃんにせっつかれて?」

「そうなんだよ。リアのヤツ毎度毎度うるさいのなんのって…」

「ふふふ。女の子っていうのは好きな人にはちゃんとしていて欲しいものなのよ」

 美容室恒例の美容師さんとのトークが始まっている。俺ああいうの苦手なんだよな。話してるくらいなら雑誌とか漫画読んでるし。

 まあそんなこんなで

「はい終わり。お疲れ様でした。でももったいないわねぇ…。ユアンちゃんは髪型を少し変えればもっとカッコよくなれると思うのに…」

「いいさ。俺は十分カッコいいからな」

「あら言うじゃない」

 笑いあう国王様とオカマ美容師。改めて考えてみるとなかなかにシュールな光景だな。

「はい。それじゃあ次は坊やの番ね」

 ……ついに来てしまったか…。正直イヤなんですけど。

「ほらさっさとしろトモヤ。早く帰らねぇと怒られるぞ俺が」

 いやどうでもいいけど。

「でも……なあ…」

「大丈夫だ。慣れてくれば目を開けていても視界がハッキリしないようになるから」

 なりたくねえ。というかそんなに鏡に映った『アレ』の姿は衝撃的なのか。

「ほぉら早くして」

「いいから行け」

 二人にせかされて俺はとうとう観念する。そしてガッち――ガイルの前にある椅子に座った。うぅ…後ろからの威圧感が半端ない…。

「それじゃあ、はじめるわね」

 鏡に映ったガイルがウィンクをしてくる。オエッ。

「どんな感じに仕上げま――」

 ピタッ。俺の髪に触れたガイルが動きを止める。あれ?また?

「んまぁぁぁああああああああああああああああ!スゴいわ!素晴らしい!この手触り!この指通り!このツヤ!完璧だわ!百年に一人の逸材よ!」

 グワァアアアアアアア!耳がぁ!耳がキーンってなるぅ!

「こんな素敵な髪を切れるなんて……わたしの生涯で一番名誉なことよ!今この瞬間に、わたしの美容師人生のすべてをかけるわ!」

「重ッ!たかが髪切るだけなのになんでそんなに意気込んでんの!?」

「任せて頂戴ィィィィィ!!」

「もう黙れぇぇぇぇぇぇ!」

 ………ついつい怒鳴ってしまった。反省。

 ただガイルの腕は確かだったといっておこう。まああんま切られずに形整えられただけだけど。




「そうだ、カジノへ行こう」

「破産しろ」

 時は昼。昼食も終わり、部屋に帰って本の続きでも読もうと思っていると唐突にユアンが言い出した。その言い方はどこで知ったんだ?

「つれないこと言うなよ。いいじゃん行こうぜカジノ。豪遊しようぜ国民からの金で」

「お前は今すぐ国王を辞めるべきだ」

「冗談だって冗談。ちゃんと俺の小遣いから出すって」

「いや小遣い制かよ」

 きっと財布の紐を握っているのはリアさんなんだろう。本当に尻にしかれてるな。

「つか真昼間からカジノなんか行けるかよ。夜行け夜」

「いや門限あるし」

 子供か。

 その後なんやかんやでカジノ行きを承諾。そして連れて来られたのはこじんまりとした小さな一室。部屋の中央には石製と思われる魔法陣が設置されていた。

 今回俺は《飛鳥》を所持している。なんでも自衛のためらしい。どんなに立派な人でも酒が入って金が関わればどうなるか分からないから…らしい。なんとも悲しいことだ。

「これはカジノ行きの転移魔法陣。使えば国王専用のVIPルームに出られるぜ。ちなみにこれは代々レパーラ国王の間で伝わってきたものだ」

 余計な補足をありがとう。おかげでさらにこの国の行く末が心配になってきたよ。

 そんなことを思いながら、割と興味津々で魔法陣に近づいてみる。

「けっこう古いな。大丈夫なのか?」

 かがみ込んで魔法陣の線を見ながら聞いた。ところどころ小さな傷もある。

「なんのなんの。ちゃんと整備はしてあるから平気だ。ちょっとやそっとじゃ傷なんてつかねえさ」

 バシバシと足で魔法陣を叩くユアン。ったく、物を大事にしろ――

バキン

「「あ」」

 見事にユアンの足の下の線が壊れる。その瞬間、魔法陣がピカーッと光りだした。

「……なあユアン」

「……なんだトモヤ」

「…光ってるんだけど」

「…光ってるな」

「……俺内側にいるんだけど」

「……内側にいるな」

 ははは、と笑いあう。その間にも魔法陣の輝きは増していく。

「なあユアン」

「なんだトモヤ」

「これからどうなるんだ?」

「さあ分かんねぇなぁ」

 魔法陣の外側に出ようにもなんか見えない壁があって出られない。そろそろ光でユアンの顔が見えなくなってきた。

「なあユアン」

「なんだトモヤ」

「俺は……これからどうすればいい?」

「…………………まあ……頑張れや」

プチッ

「っざけんなこのバカヤロォォォォ―――!!」

 怒号の最中、光が一際眩くなると――


「――へ?」

「?」


 鳥と――眼が合った。



どうでしたでしょうか

主人公が髪を切りに行く話なんて見たこと無いなと思ってこんな話を書いてしまいました

非ッ常に書き難かったです

なんとか繋げるために主人公を無駄に美髪にしました(笑)

そして最後の方

こちらも無駄にひっぱってみました

来年からはまた新しい事態が起こります

章分けはしません面倒なんで

拙い文ですが来年も読んでいただけることを願いつつ

それではこれにて失礼させていただきます








後書きこんなに書いたの初めてかもしれない…

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