第23話 宴の場で
どうも、すっかり深夜に投稿するのが通例になっている作者です
学校の勉強を全くといっていい程やらずにサブカルチャー分野にどっぷりつかっているので一日が短いのです
どうしたらいいでしょうか?
ちなみに作者が目下のところ一番楽しみにしてるのは―――
―――あとがきに続く!(単なる場稼ぎ)
愛人の子ども。
殺人事件で犯人になって悲しい過去を語ったり、突然親のもとへ連れて行かれて跡を継ぐことにされたりする、フィクションの世界では割かし取り上げられることの多いポジションだと思う。
だが実際のところそんなことになるのはごく一部の少数。生まれる前に中絶されるか、生まれたとしても片親の顔を知らずに生きていくことも多いと思う。よく愛人とその子どもが正妻に虐げられたりするような作品もテレビでやっている。実際あんなモンだろう。
んで、本題。その愛人との間に生まれた子どもであるメイラ・ベルティ――通称おばさん。彼女は王様と愛人との子どもであり、最悪殺され、それが黙認されることがあってもしょうがない立場だ。
しかし、レパーラの前国王アロイス・ウィリスは大変な女好きであったらしく正妻のほかに妾やら愛人やらをたくさんつくっていたらしい。彼曰く『オレは全員を等しく愛してる!』とのことらしい。まあそんなこんなで国のお偉いさん方も呆れ、そんな残念な性格でありながら彼の政治の手腕は目を見張るものがあったらしく、女好きなのは黙認されたらしい。
そんな彼だが、どうも子を作りにくい体質だったらしい。何人もの女性に囲まれ、………を繰り返したが、なかなか子どもが出来なかったらしい。そんな折、愛人の一人が身籠った。正妻より先に愛人が子を宿したことにより、城は大騒動。後に愛人との子どもが女の子であると判明し、同時期に正妻の妊娠も発覚、それが男児だったことによって事態は沈静化したらしい。
それはさておいて、問題は愛人との子。仮にも王の血を引く者であり、国の伝統では一番最初に生まれた子が王位を引き継ぐことになっている。一時期は愛人の子か正妻の子、どちらが王位を継ぐかで論争があったらしいが、正妻との子であること、男児であることから、最終的に正妻の子――ユアンが王位を引き継ぐことになったらしい。
それでも、王位を引き継げなかったが王の血が流れている愛人の子。下手をすると事件に巻き込まれる可能性があったが、立場や伝統上の問題で城にいることは出来なかったらしく、城下に家を与えられた母親とともに暮らすことになった。暮らしは豊かとはいえず、城からの最低限の支給によって支えられていた。そんな姿を見た王様は心を痛めた。『彼女たちを何とかしてやりたい』と。幸いにもその子どもには魔法の才があった。そこに目をつけた王様は新しい組織を結成。その隊長にその子を指名した。当然お偉いさん方は反発したが、彼とその腹心の部下、そして話を聞いた王子の尽力、なにより彼女の能力によって認められた。
王の子だということは伏せられ、ただの一兵として扱われていたが、当人の才能とその功績によりその名声は広く知れ渡ったらしい。
まあなにが言いたいのかというと、そんな有名人が冤罪を迎えてめでたくない訳がないので、記念パーチーが開かれました。……………当の本人の知らないうちに。
そんな行動力に溢れたレパーラ現国王ユアン氏は、幾人もの貴族様方と歓談中…着流しのまま。あれいいのか?
おばさんはちゃんとした礼装で、元部下の人たちとかお世話になった貴族の人たちとあいさつを交わしている。以前おばさんを捕らえに来た人たちも元部下らしく、「仕事とはいえメイラさんを捕らえるなんて…」と涙を流して謝罪していた。なんというか、スゴいカリスマだ。
「にしても…んっんっ…急に決まったのに…んっんっ…結構集まってるな…んっんっ」
「そう…はぐはぐ…だね…もぐもぐ」
「王様の…はむはむ…主催だから…あむあむ…無理をしてでも貴族は来る」
「アンタ達……」
エルナが呆れたようにこちらを見ている。そりゃアリスはケーキ食ってばっかだし、フィナはステーキ一択だしな。そこらには好青年も多くいるのに、この子らはまだ花より団子か。
「「「…………」」」
あれ?三人から妙な目で見られてる気がするが…ま、気のせいだな。うんうん。
そう思い直して、俺は改めてオレンジジュースを煽る。周りからは子どもっぽいといわれるが、オレンジジュースはミルクコーヒーと並んで好きだ。パーティには貴族共の子どもも来ているので、こういう飲み物も用意されていた。本来ならコップに入れて飲むんだろうけど、そんなチマチマしたことはやってられないのでビン入りのヤツをラッパしている。今飲み終わったので一…十…二十…数えるの止めよ。
ちなみに、ただいま俺たちは礼服に着替えている。一応ちゃんとしたパーティだからな。三人ともドレスを着ている。もともと素材がいいので三人ともキレイで、周りの男共がチラチラ見ている。かく言う俺も初見はちょっと見惚れた。俺もフォーマルな服を着ている。モーニングコートかフロックコートか燕尾服かタキシードのどれかだろう。ぶっちゃけコレヤダ。動きづらい。俺には似合わないよこんなの。その証拠にエルナ達に見せたときも俯かれたもん。あれ絶対笑い堪えてたよ。
思い出してやや気落ちしている俺。そこに話しかけてくる人物が。
「やあトモヤくん。体の具合はどうだい?」
ヴァン・グラドだった。すっかり存在忘れてた。…っていうか
「………………」
「?どうしたトモヤくん」
黙りこんだ俺を心配そうに見てくるヴァン目掛けて空き瓶をスパーキング!
「うぉおおおお!?」
五割半くらいの力で投げたビンは顔面まで数センチのところで止められる。
「…チッ」
「当たらなかったのがそんなに悔しいかい!?」
そう言いながらテーブルにそっとビンを戻すヴァン。そこまで声荒げたらもうマナーとかいいだろ。
「全く…なんで攻撃してきたんだい?」
「復讐だ」
「簡潔過ぎて怖いね…。なにか悪いことでもしたかな?」
「いや別に」
ちょっとムシャクシャしてただけですハイ。
「別にって…いや、いいさ。キミには返しきれない恩がある」
真っ直ぐに俺を見ながらそう言ってくるヴァン。そして深々と頭を下げてくる。
「メイラさんを助けてくれて…本当にありがとう」
「いえそんな、大したことじゃなかったですし」
「それでも…」
「いいんです。俺自身がやりたかったことだったんですから」
「トモヤくん………本当にありがとう」
笑顔で再度お礼を告げてくるヴァン。それに「だからいいですって」と返していると、
「なんで動物がここにいるんだよ」
「ここは人間様の来るところなんだよ」
「…あン?」
見るとケーキを食べていたアリスに、同じくらいかやや下の歳であろうガキ二人がからんでいる。おまけにあの言い草、完全に獣人差別してますね。
「おら、とっとと出てけよ」
「や…やだ…」
「口答えしてんじゃねえよ」
「痛いッ!…や、やめて…」
ガキの一人がアリスの髪を引っ張る。その前からやるべきことを決めていた俺は、
「はいどーん!」
「「うぎゃぁああああああ!」」
顔面にホールケーキを叩きつけてみる。その後アリスを背中側に押す。何も言わなくてもエルナとフィナ、ヴァンも駆け寄ってくれた。
「て、テメェ何しやがる!」
早くも顔のこびりついた生クリームをそぎ落としたようなので、
「もう一丁!」
「「熱っちゃぁああああああ!」」
今度はステーキ。焼き加減はレアです。
「「熱ッ!熱いッ!熱っ!」」
必死そうな声が耳障りなので口にパンをねじ込み、ついでに服の中にスープを投下。
「「んももももももっ!?もごごごごっ!?」」
涙目になって転げ回っているガキ二人を見ていると、笑いがこみ上げてくる。
すると、いつの間にか出来ていた人だかりから、偉そうにヒゲを蓄えたおっさんが飛び出してくる。
「なっ…貴様!私の息子達に何たる事を!」
「ん~?」
唾を散らしながら叫ぶおっさんを、どうでもいいような眼で見る。
「!キサマァ…なんだその眼はぁ!」
ツカツカと近付いてきて胸倉を掴みあげられる。おーおー青筋浮いてるよ。
「大体、キサマ何の恨みがあってこんなことをした!」
うわっ、ツバ汚ねっ!…ったく…
「そこのガキどもがうちの女の子いじめたんだよ。それが理由だ」
眼で後ろにいるアリスを示す。男はアリスを見ると…鼻で笑った。
「ふん。いいではないか。たかが動物の一匹如き」
………………あ?
「その程度、理由にもならん」
………………いいかな?
「どうせその動物が粗相をしたんで、うちの子らが躾けてやったんだろう。むしろ感謝してほしいくらいだ」
………………やったガキもだけど、子どもにこういう教えをした大人も問題だし、やっちゃってもいいよね?
そう思いながら右手に風を纏わせる。ヴァンとやった時より強く濃く、食らえばタダではすまない密度。俺もちょっとばっかキレてんだ。我慢しろや。
腹に一発いいのをくれてやろうとすると、横合いから声が掛けられる。
「ほう?俺の前でそんなことを言うとは…いい度胸じゃねえか」
「ッ!ユ、ユアン様…」
「俺が、こういうの大っ嫌いだってのは知ってるよな?」
「そ、そうですが、これはあまりにも…」
男はもどりながら手を離し、じりじりと後退りする。
「それに、だ」
ユアンさんは俺とエルナ、フィナとアリスに視線をやり、目の前の男だけでなく今こちらを見ている人全員に聞こえるように言う。
「この四人は俺の客だ。こいつらに文句があんなら俺に言え。同時に、こいつらに石を投げるならそれは俺に石を投げるのと同じだと思え」
それだけ言うとユアンさんは踵を返し、俺の背を押しながらアリス達のところへ歩いていく。少しだが瞳が潤んでいるのに気付くと、やり場のない怒りが湧き上がってきた。
ユアンさんはアリスに向かって頭を下げた。
「俺の開いた場でこんな目にあわせちまって…本当にすまない」
「ううん。いいから…気にしてない」
笑顔で首を振るアリス。一応強がりを言うくらいは元気らしい。
同じ事を考えたのかユアンさんも安心したような表情をすると、
「これにてパーティもお開きだ!全員帰ってクソして寝ろ!」
そう宣言した。仮にも上流階級の人が集まっているこの場で『クソ』発言はいかかがものかと…。
やや苦笑いしている俺を訝しむような目で一瞬見ると、
「しっかし、お前も酷いなぁ。何もあそこまでやる必要はないんじゃないのか?」
言葉と同時に向けられた指の先には、さっきの男に手を貸されて立ち上がろうとしている半泣きのガキがいた。
「いいんだよあれくらい。ちょっとはやられる方の身になればいいんだよ。…それより、アンタの方こそいいのか?こんなことして。アンタの支持率下がるぞ」
「構うもんか。権力と立場ってのはこういう時こそ使うもんだ。それにもともと俺主催のパーティだ。いつ閉めようが俺の勝手だ」
「横暴だな」
「王様だからな」
はははと二人で笑いあう。そして一頻り笑うと、
「じゃ、行くか」
とりあえずヴァンに礼と別れを告げ、勝手に歩いていくユアンさんの背中を追った。
コンコン
「どうぞ」
パーティから帰り、用意された部屋のベッドでごろごろしていると扉が叩かれる。失礼します、と言って入って来たのはリアさんだった。俺は上体だけ起こし、
「なにか用ですか」
「ユアン様が呼んでいます。ついて来て頂けますか」
尋ねられてるのに否といえない、もう命令されてるのと変わらないこの感じはなんなんだろう?
そう思いながらもベッドから降りて、もう歩き始めているリアさんに追従する。
歩きながら気付いたが、どうやらあの和室に行くのではないらしい。通り過ぎる扉のサイズからしてそう大きくない部屋。おそらく自室か執務室みたいなところだろう。
ボンヤリと考えながら歩いていると、不意にリアさんが一つの扉の前で止まる。
「こちらです」
そう言って扉を開けてくれるリアさんに軽く頭を下げて部屋に入る。そこには難しい顔をして座るおばさんとユアンさんがいた。部屋は洋室だった。
「おお来たか。悪いな。こんな時間に」
「別にいいけど…なんかあったの?」
なにかあったのは二人の表情を見れば分かる。そして一番怪しいのは二人の前に置かれている一枚の紙。
「いやな、本来ならお前には関係ないことなんだが…一応な」
そう言って手渡される紙には文字が書いていた。これは……
「読めない」
「おいおい………んじゃリア、頼む」
「分かりました」
スッと俺の手から紙が抜き取られ、ゆっくりと読み上げられる。
『拝啓 レパーラ国王 ユアン=レパーラ=ウィリス殿
王という立場のご多忙さを鑑み、失礼を承知で時候の挨拶を端折らせていただきます。
此度、このようなものをしたためたのは単に挨拶をさせていただく為です。
我々『アレウス』はかつて失われた国家アヴィルムの復権を悲願としている組織です。復権と言ってもやることは簡単。現在クロウド大陸を収めている五つの国を滅ぼし、その上でアヴィルムの復活を宣言するだけです。
尚、この手紙は同時に他国全ての王に送っております。
では、実際に会える日を楽しみにしております。 敬具』
「バカにされてるな」
「まったくだ」
はあ…、と心底疲れたようなため息をつくユアンさん。この手紙、もといた世界の手紙の書き方をマネしてるな。しかも中途半端に。
「……んで、なんで俺が呼ばれたの?」
「ああ、そのことなんだけどね」
俺の問いに答えてくれたのはおばさん。
「実はこの手紙にある『アレウス』っていう組織は、ロトが尋問中に口にしてるんだよ」
「マジでか」
「ああ。どうも資金を提供していたらしい。見返りは悲願が成就されたときのそれなりの地位だってさ」
「ふ~ん。ま、どうせ絞れるだけ絞ったらポイッてとこだろうけどな。悪の組織なんて往々にしてそんなもんだ。…んで、このアヴィルムってのは何さ?」
次に俺の問いに口を開いたのはユアンさん。
「そうだな…今でこそこの大陸は五つの国に分かれてるが、二百年ほど前までは一つに統一されていたんだ。その時の国の名がアヴィルム。あまり詳しくは分からないがそこで反乱が起こり国家は崩壊。その反乱軍を率いていた五人が、大陸を五つに分け、それぞれで治めることにしたらしい」
「ん~……アヴィルムってのを復活させて得をするヤツっているの?」
「そうだな…かつての王の一族とかじゃないのか?」
「そいつらの消息は分かるか?」
「いや、分からん。数百年前に滅んだ国の王の血族なんて調べても無駄だったからな」
「そうか……。もしかしたらロトの他にもこの『アレウス』っていう組織に関わっている貴族がいるかもしれないな」
「あ、言われてみればそうだな。よしリア、めぼしい貴族連中に密偵手配しといてくれ」
「かしこまりました」
音もなく部屋を出て行くリアさんの姿を見て、絶対にただ者じゃないと思ったのはしょうがないだろう。
「あとは、相手の出方待ちだね」
「うん。…んじゃ、俺はこれで」
ふあぁ…眠い。早く帰って寝よ。
「ああトモヤ。もう一つ用あったわ」
「ん?」
ユアンさんがハンドベルをチリンと鳴らすと、部屋のドアがゆっくりと開き、一人のメイドさんが入って来る。紫色の近い色の髪が印象的な若い人だった。
「トモヤ。この人お前のお付のメイド」
「は?」
「はい自己紹介」
「はじめましてトモヤ様。この度あなた様のお世話をさせていただくことになったクレア・エスリークです。よろしくお願いします」
「いや、あの――」
「よろしくお願いします」
「………はい。こちらこそ」
女性の放つプレッシャーに負けっぱなしの今日この頃。
モンスターハンター3rdです
何がって?前書きの答えです
作者は3(トライ)をやっていないので初見の敵だらけですが、双剣を手に狩場を走り回りたいと思います
あ、それとこれから城での暮らし的なものを書こうと思います