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第16話 女は強い

こんにちは。

今回は早く出せました。でもちょっと短いです。

では、どうぞ

 エルナの決めた集合場所に向かう間、アリスに諸々の事情を説明した。エルナはあれでけっこう優しいから、人助けをしていたとすればそこまで怒らないだろうという算段だ。まあエルナやフィナのことを説明したら何故かアリスの機嫌が悪くなったりもしたがそれはそれ。これまでの人生で俺は悟っている。女心を理解するのは無理だと。

 まあそんなこんなで、集合場所の南門付近へ到着。もう少し歩けば人ごみの中から出て二人を探せるだろう。ちなみにはぐれないようにアリスとはしっかり手をつないでいる。

 人波をかき分け押しのけ、なんでこんなに人がいるんだと悪態つきたいのも堪え進む。例え数秒だとしても早く到着するに越したことはないのだ。

「ちょ、待っ、トモヤ早い!」

「おっと…」

 どうやら先を急ぐあまりほとんどアリスを引っ張るような形になってしまっていたようだ。いくら急いでいると言ってもこのせいでアリスが転んだりしたら大変。もうすぐだしすこし余裕を持っていくことにした。

 人ごみの終わりも近くなってくる。と、そこでエルナの赤い髪が見えた。見ると、すこし先でフィナと話している。

「おーい!エルナ!フィナ!」

 手を振って来たことを伝える。二人は同時にこちらを見、エルナは怒ったような表情でツカツカと、フィナは無表情で歩いてくる。

 俺は人ごみから抜け、

「トモヤ!どんだけ待たせるのよ!一体何を―――」

アリスの手を引っ張って人ごみから抜け出させた。

「…………………」

 エルナの動きが急に止まる。同じようにフィナも歩みを止めていた。

 そのことを不思議に思いながらも二人に近付く。その間も二人は動かない。

「ねぇ、トモヤ。あの二人どうしたの?」

 掴んでいる右手を引っ張り、アリスが尋ねてくる。俺は「分からない」と答えようとして―――


 ――――一瞬で左腕を持っていかれた。


 バカな……左腕が動かせない。というか一体いつの間に後ろに捻られた。腕を掴まれたと脳が認識するよりも早く事を成すなんて、そんなバカな。

 とりあえず、こんなことをしてくれやがった不届き者を確認しようと首を捻り、

「え~と………何してんのエルナ?」

 スッゴイ笑顔で俺の腕を押さえているエルナと目が合った。

 エルナは困惑する俺を尻目にアリスに話しかける。

「ねえ、アナタの名前は?」

「…………はっ!え、ええと、私はアリスです!」

「そう、アリスちゃんね。じゃあアリスちゃん、アリスちゃんはどうしてこの人と一緒にいたの?」

 物腰丁寧にアリスに話しかけるエルナ。だがしかし、俺の腕を掴む力は一向に変わらない。

「実は私、迷子になっちゃいまして。そしたらトモヤが一緒に道を探してくれるって言ってくれたんです」

「一緒にいる間、ヘンなこととかされなかった?」

「まてコラ」

 その発言は俺がそういう趣味だと思ってたからのものだよな?

「ヘンなこと?そんなことされなかったよ。それどころか―――いっぱい優しくしてくれた!」

ゴキッ

「ぎゃぁぁああああ!俺の肩関節から鳴ってはいけない音が!!」

 ダメだ!もう左肩から下の感覚がほとんどない!早くフィナに治して貰わないと!

「へぇ………どんな風に優しくしてあげたのかしら」

「待て!お前は壮大な勘違いをしている!」

 どんどん力が増していく!この人、握力どんだけあんだよ!

「途中、どんなことをした?」

 今度はフィナがアリスに問いかけていた。それよりフィナ、俺の腕をなんとかしてくれ。

「えっと………あっ、女の子の幸せ?っていうのを教えてもらった」

「そうだねぇぇぇぇ!確かにそれらしきことは言ったね!でもそんな誤解生みまくりの言い方しなくてもいいんじゃない!?そんなこと聞いたら何をされるか分かったもんじゃ……」


 ガッ ← フィナが俺に足払いをかける


 ドサッ ← 俺、うつ伏せに倒れる


 ガシッ ← フィナが俺の右足を可動域限界まで捻る


「分かった。どうなるか十二分に分かった。ちゃんと説明したいからとりあえず俺を解放してくれ」

「他には?」

 俺の言葉に耳を貸さず、再びアリスに問いかけるフィナ。ちなみに咄嗟に手を放したのでアリスが倒れたりしていることはない。

「ええと、それよりトモヤは大丈夫?」

 心配そうに聞いてくるアリス。そうだよ。これが普通の反応だよ。この二人が異端なんだよ。

「平気よ。よくあることだから」

「そうなんだ」

 エルナの返答にあっさり納得してしまうアリス。っておいおい。

「後は………肩車してもらった位くらいかな」

 ほっ。これくらいなら何もされないだろう。

 そう思った俺だったが、エルナとフィナは数秒間をおき、さらに俺の体を捻りあげてきた。

「痛たたたたたたた。ちょ、ギブ!ていうかなんで!?肩車したくらいで!?」

 悲鳴を上げる俺に、エルナがそっと耳元で囁く。

「スカートの女の子を肩車?随分とお楽しみだったでしょうね」

「ぐっ……………」

 何も言い返せない。あの時は確かに感触が伝わってきたから…

 そんな俺を見たエルナとフィナは、より一層力を込めてきた。

 そろそろ、もげるかもしれないな……



 アレ以上やられたら機〇鎧(オートメ〇ル)をつけるのはハメになるので、全力で説明をして、なんとか解放された。かなり酷い目にあったが、行動に支障がなかった。自分の体が頑丈だったのか、二人のやったことがよっぽど上手かったのかは知らん。

 なんとか解放された俺だったが、それでも未だに怒られていた。

「まったく、アンタは何してんのよ」

「ごめんなさい」

「途中でここに来て私たちと合流すればよかったじゃないの。人手が多いに越したことはないでしょ」

「返す言葉もございません」

「挙句の果てに貴族と決闘して。しかも勝っちゃうなんて。仕返しにでも来たらどうすんのよ」

「うう……」

 ここまで畳み掛けられるとけっこう響く。本当にどうなるんだろう。アイツ、プライド高そうだったし。

 すっかり意気消沈している俺に、アリスが話しかけてくる。

「そのことは大丈夫です。ハルンお坊ちゃまは、あれでも根はいい人ですから」

 笑顔で言ってくれるアリス。なんだろう、スッゲェ安心できる。

「アリス、人のことよりまずは自分の事を考えなさい」

 そうだよな。何よりアリスが仕えている屋敷を見つけないとな。

「でも、全然道分からないし」

 申し訳なさそうに言うアリス。何か言おうとすると先にフィナが口を開く。

「大丈夫。大体の場所は分かるから」

 その言葉に驚いた表情をするアリス。当然俺もだ。

「本当かフィナ?」

「(コクン)」

「屋敷に言った事があるのか」

「それはない。でも」

「でも?」

「貴族なら、貴族区域にいると思う」

「……………」

「……………」

 …………………………ですよねー



 フィナの意見で貴族区域に向かった俺たち。幸い貴族区域はそくまで広くなく―――というか、もともと貴族の数はそこまで多いものでもなかったので、しばらく探し回るとアリスが覚えている辺りに来ることが出来、そこからは一直線に行くことが出来た。

 現在、グラドの屋敷門前。

「うわぁー、でっけー」

 グラドの屋敷は立派だった。普通の一軒家六つ七つ並べたような大きさ。人目でこの家の持ち主のスゴさが分かる。

「はぁ、やっと帰ってこれた」

「よかったな、アリス」

「はい。みんなのおかげです。ありがとうございました!」

 深々と頭を下げるアリス。俺はそこまで役に立っていないけど。

「じゃあ、アタシ達はもう行くわね」

「またね」

 そう言って二人は戻ろうとする。俺も行こうと振り向き、

「お待ちくだされ」

呼び止められる。

 向くとそこには、執事服をしっかりと着こなした初老の男性が立っていた。

「えっと、どちら様?」

 俺がそう聞くと男は、

「申し遅れました。私、このこの屋敷の執事長を務めています、マロフ・ティクラミナと申します」

と言って礼儀正しく礼をした。

「執事長!どうしてここへ?」

「アリス、あなたがいつまで経っても帰ってこないから主もあなた両親も心配していたのですよ。一体どうしていたのですか?」

「あー、それは……」

 口ごもるアリス。だがそんなことはお見通しだとばかりにマロフさんは微笑むと、改めてこちらへ頭を下げてきた。

「この度はうちの使用人がご迷惑をおかけしたようで」

「いいんですよ、こっちが勝手にやったことですから」

 俺がそう言うとマロフさんは顔を上げて続ける。

「そうはいきません。是非お礼をしたいので、どうぞ上がってください」

「いえ、結構です。ご迷惑でしょうし…」

「何を言いますか。ここであなた方を帰してしまったら、私は主からお叱りを受けてしまいます。この老いぼれを助けると思って、どうかお願いします」

「う………」

 さすがにここまで言われると断るのが忍びなくなってくる。後ろに視線をやると、仕方ないという風に苦笑しながらエルナが頷き、同じ様にフィナも頷く。

 俺は前を向き、マロフさんに言う。

「分かりました。では、お言葉に甘えさせていただきます」

 俺の返答に満足そうに頷くと、マロフさんは屋敷の扉を開け、入るように促してくる。

 年寄りには敵わない。

 俺はそんなことを思いながら、屋敷の敷居を跨いだ。


いやー、最近暑いですね。

自分の通っている学校では教室内で熱中症になる人が出てしまいました。

皆さんも健康管理には十分お気をつけ下さい。

ちなみに作者は平気です。バカなので


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