第12話 侵入者
今回はちょっと短いです
そして勢いで書いたので微妙です
作者は戦闘の描写が苦手です
あしからず
雨粒が窓を打つ音で目が覚める。まず視界に映ったのは見知らぬ天井。体が柔らかい布団に横になっていることを感じ、そこで、さっきの出来事を思い出す。
「あの野郎―――ッ!?」
勢いよく上体を上げると、頭に痛みが走る。手を当てると真新しい包帯が巻かれていた。
周りを見渡すと、見たことの無い部屋だった。宿屋かどこかの部屋だと適当に予想をつける。
ふと気付くと、ベットの脇に置いた椅子に座りながらエルナが眠っていた。俺が気絶している間、ずっとそばにいてくれたのだろう。とても嬉しく感じた。
すっと、頭が切り替わる。思い出されるのは、先刻、気絶する寸前に見たフィナの表情。記憶の中のいくつかの表情と比べる。
――さて、やる事は決まった。ゆっくり音を立てないようにベットから下り、かけていた毛布を、そっとエルナにかける。窓の外を見ると、外は激しい雨が降っていた。傘は無い。でも気にならない。雨は嫌いじゃない。むしろ好きだ。いつもならこんな土砂降りは気分が高揚して仕方が無いのだが、今はそんなことは無かった。
壁にたてかけてあった《飛鳥》を掴み、部屋を後にする。
宿屋から出て数十分後、研究所の前に到着する。研究所は異常なまでの白色。ここまでくると、清潔よりも潔癖のような印象を抱く。
この場所を教えてくれた宿屋のおばさんが、気になる噂を教えてくれた。なんでも、この研究所に定期的に魔物が届けられているという。おそらくあのへレイが言っていた研究に関係あるのだろう。
正面の玄関から入ってもいいが、警戒されても面倒に思う。グルッと周りを歩くと、関係者用と書かれた扉があった。鍵がかかっていたので、扉を斬って中に入る。
中の壁や床まで白一色。長くいると気分が悪くなりそうだ。
足音を立てないように歩く。廊下は入り組んでいて、道がいくつにも分かれている。案内板などあるはずも無いので、適当に進むことにする。
右。左。直進。左。左。直進。右。直進。左。右。左。左。左。直進。右。左。直進。直進。
そこまで進むと、大きな扉の前に辿り着く。鍵がかかっていたので、さっきと同じように。
中の部屋は、かなり広かったが、薄暗く、中を全部見ることが出来ない。さらに気になったのは
、部屋にこもった獣臭。横の壁を探ると、スイッチと思しきものに指が触れる。試しにつけてみると、部屋が一気に明るくなる。明確に分かるようになった部屋を見て、俺は息を呑んだ。
見渡す限りの檻、檻、檻。その部屋の半分が檻で埋め尽くされていた。
檻の中を覗く。その中にいたのは、
「魔物…か?」
中にいたのはネズミ。大きさが犬ほどはあろうかというネズミ。足が六本あるネズミ。
他の檻も見る。人の手が生えたような蛇。頭と尾が二つある鳥。腕と足の関節が二つある熊。
他にも冗談みたいなカタチの魔物達がいた。これが運ばれてきたという魔物たちなのだろう。
「可哀想だ…」
無意識に呟く。彼らを見た率直な感想だ。人の命を脅かす存在だと知りつつも、同情せずにはいられなかった。
ふと、一つのアイデアが浮かぶ。それを頭の中で何度か反芻。そして、口元を歪める。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリィィィィィィィィッッッ!!!!
白い研究所内にけたたましい音量の音が鳴る。
何だ何だといった風に、たくさんの扉の中から幾人もの研究者達が顔を出す。彼らが見たのは――爆走する魔物の大群。
「うわぁぁぁぁ!」
「逃げろぉ!」
「こっちにこないでくれぇぇ!」
口々に悲鳴を上げ、恥も外聞も無く逃げ出す研究者達。そのすがたを眺めていると、なんだか無性に楽しくなってくる。
俺が考えた策は、単純明快。魔物が閉じ込められた檻を片っ端からぶっ壊していく。檻から出た魔物はここから逃げようする奴もいれば、ここの奴らに復讐しようとする奴もいる。どっちにしてもアイツらが目を惹いてくれればそれでいい。俺はコソコソ探検するだけ。
(あれ……?)
魔物たちの後ろを着いて行くが、どういうわけか一本の道だけ、厳重に封鎖されている。分厚い扉で、魔物たちでは歯が立たない様子。
「気になるな…」
扉の前に立ち、《飛鳥》を抜き、水を展開。大上段に振りかぶって…一気に振り下ろす。
ズンッと鈍い音を立てて、両断された扉が倒れる。
扉の向こうも今までと同じように白一色。その向こうに一つの扉が見える。今までと変わらない。だからこそ、厳重に封鎖されていたことが余計に怪しく思えた。
おまけに、かなり体格のいいガードマンみたいなのが二人。すでにこっちへ走って来ている。闘る気満々じゃん。
しょうがない。俺は迎え撃つために《飛鳥》をかまえる。人殺しはしたくないので、鞘に収めたまま。
まず左側の男が攻めてくる。その体格に似合わぬ素早い動きで左拳を繰り出してくる。それを冷静に見切って、しゃがむようにしてかわす。が、かわした先にもう一人の男の蹴り。慌てて転がるようにして避ける。
男達は再び連繋して攻撃してくる。片方に対応すればもう片方が。もう片方を狙えばまた片方が。そいつを狙うともう一人が…
「って、うっとうしいんだよぉぉぉッ!」
うざい。すごくうざい。攻撃当たらなくてイライラする。
片方の男が襲い掛かってくる。俺が一歩踏み出すと、距離をとろうと急ブレーキをかけ、男は体勢を崩す。そこで鳩尾に思いっきり鞘を叩きこむ。苦しそうな息を漏らし、男は倒れる。
仲間がやられたにも関わらず、もう一人の男は果敢に攻め入ってくる。拳と蹴りが縦横無尽に繰り出される。その攻撃を出来る限りかわし、無理なものは《飛鳥》で受ける。
攻防は続く。直撃はしないものの、じりじりと後退させられる。とそこで踵に何かが当たり、そのまま倒れかける。足元を見ると、先程両断した扉。--まずい。
思った通り、男は勢いよく飛び掛ってくる。
(なにか、なにか逆転のチャンスは…)
そう思い、必死で頭を回転させる。倒れこむまでの数秒間、信じられないような速度で考えがまとまっていく。
背中が床に当たる。と同時に身を捻って横に転がる。飛び掛ってきた男は、誰もいない場所に渾身の一撃を繰り出す。全力の一撃はそう何度も撃てない。体を戻すのに数秒いる。体が大きければなおさらだ。その一瞬を最大限活かす。
勢いよく上体だけ起こし、その体勢から出せる限りの力を込め、男の顎を殴りつける。男はぐったりとした感じで倒れこむ。
俺は立ち上がって、ゆっくりと深呼吸する。そして、廊下の先にある扉に歩き出す。
どうでしたか
最後の方の戦闘シーンは正直適当です
次の話は長くなる予定なので、更新が遅れるかもしれません
ご了承ください