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第11話 事後と始まり

今回は早めに更新できました。

ま、読んでみてください。

 扉を開けると、濃厚な酒の臭いが鼻を突く。おそらくこの臭いに慣れることは絶対に無いだろう。というか慣れたくない。

 狩場から戻った俺たちは、そのままの足でギルドに来た。依頼の結果の報告の為である。初めての時よりは、しっかりした足取りでカウンターへ向かう。またジロジロ見られる。本当に殴りたくなったが、何とか我慢する。

 カウンターの前まで来ると、フィナが一歩前に出る。

「依頼を達成した」

 そう言ってカウンターの上に登録証を置いた。受付嬢はそれを受け取ると、

「確認いたしますので、少々お待ちください」

と言い残して、カウンターの奥へ消えていった。

 少し経つと、戻ってきて、

「確認が終わりました。こちらが達成金になります」

カウンターの上にフィナの登録証と布袋を置く。

 それを受け取ったフィナが、

「どこかに座ろう」

と提案する。特に反対する理由も無かったので、空いたテーブルを探す。

 お。丁度近くに空いてんじゃん。俺は指を指して二人に知らせ、そこに向かって歩き出す。

「オイガキ」

 いきなり目の前に筋骨隆々の男が現れる。見るととても友好的とは見えない表情をしている。ちなみにスキンヘッド。

「えーと、何か御用ですか?」

 頭を掻きながら尋ねる。

「ここはガキの来る場所じゃねえんだよ。とっとと失せろ」

 ああ、なるほど。俺がここにいるのが気に食わないということらしい。

 正直迷惑だ。どこにいようと俺の勝手だろ、と思う。だが、個人的には、こうやって自分の思ってることをそのままぶつけてくる性格は非常に好ましく思える。こそこそこっち見て、腹の中でゴチャゴチャ考える奴よか数万倍マシに思える。なので、

「あー、とりあえずもう少ししたら出て行くんで勘弁してもらえないですか」

物腰丁寧に話してみる。

「うるせぇんだよ。いいからさっさと出て行かないと…」

 いいながら男は、近くのテーブルから水の入ったコップを取ると、

「こうなっちまうぞ!」

中の水を俺の顔にぶちまけてきた。周りのテーブルの奴らの嘲笑が聞こえる。

 水をかけてきた男はニタニタ笑いながら

「ほら、早く出て行かねぇともっと酷いことになるかもしれねぇぞ」

と告げてくる。

 俺は前髪から雫を垂らしながら一言。

「気が済んだんならどいてくれないですか」

と何事もなかったように言う。男は一瞬呆気にとられるが、すぐに先程よりも憤慨した表情になる。

「テメェ!調子に乗ってんじゃねぇ!」

 怒声を発しながら拳を振るってくる。が、横合いから止められる。

「もう止めろ」

 止めたのは髭を生やした男。

「で、でもよう…」

「いいから止めろ」

 大きくは無いが凄みのある声。男は渋々ながら拳を下ろした。どうやら仲間のようだ。

「…チッ!」

 男はわざとらしく舌打ちしながら近くの席に座る。髭を生やした男はこちらに向き直ると、

「すまない。連れが失礼をした」

と言って、頭を下げてきた。

「いいですよ。気にしてないですから」

 こちらが問題ないという旨を伝えると男は顔を上げ、

「そうか。そう言ってもらえるとこちらも助かる。では」

もう一度頭を下げると、さっきの男と同じテーブルに座った。

「ちょっと大丈夫なの?」

 慌てた様子でエルナとフィナが駆け寄ってくる。

「ん、問題なし。はやく座ろ」

 そう言ってまだ何か言いたそうにしている二人を席に着かせる。

「…じゃあ分配する」

 フィナはなにかを言いたそうにしたが、本来の目的を切り出してくれた。

「えっと、三等分よね」

 エルナが達成金を分けようとすると、フィナがそれを手で制する。

「フィナ?」

「もともと私のせいだから、私の分はいい」

 確かに元はフィナの飯の代金で所持金のほとんどを使ったから、ここに来たのだけど…

「ダメよ。フィナも一緒に戦ってくれた。だから、キッチリ三等分」

 そう言うと、エルナはいつの間に分けたのか、いくらかのお金をフィナに押し付ける。同時に俺にも同じくらいの量のお金を渡してくる。

「でも…」

「いいから受け取る」

 遠慮するフィナをエルナが押し切る。それを受けたフィナは諦めたようで、受け取ったお金を服のポケットにしまう。俺も同じようにしまう。

 それを見たエルナは満足そうな表情になる。

「よし。じゃあ、達成祝いに乾杯しましょう。すいませーん!」

 近くにいたウェイトレスを呼ぶ。

「はい。ご注文は何になさいますか」

 テーブルにやってきたウェイトレスは営業スマイルを浮かべて尋ねてくる。ってメニューとか無いんだけど…

「コーヒー」

「アタシ紅茶。トモヤは?」

 あ、なるほど飲み物な訳ね。

「じゃあ、オレンジジュースで」

「はい、かしこまりました。少々お待ち下さい」

 ウェイトレスはカウンターへ向かっていく。

「アーハッハッハッハ!!」

 いきなり笑い声が聞こえる。声の主は、先程絡んできた男だった。男は笑いながら続ける。

「オレンジジュース!ガキの飲むもんだな!下らねぇ!」


 ドゴッ! と言う鈍い音がギルドに響く。


 なんてことはない。ただ俺がさっきのハゲを《飛鳥》で思いっきりぶん殴っただけだ。

 周囲の人間が唖然としてこっちを見てくる。その視線を無視して、吹っ飛んだ男に向けて、吼える。

「さっきからごちゃごちゃうっさいんだよハゲ!」

 ハゲからの返答は無い。どうやら気を失ったようだ。

 周囲の人間がさらに呆気にとられている。

「お、おい」

 先程の髭の男が話しかけてくる。

「はい。なんですか」

 素に戻して対応する。

「い、いや。なんでもない」

 座っているテーブルに視線をやる男。こういう態度は大嫌いだ。

「そうですか。じゃ、これで失礼します」

「あ、ああ」

 俺が元の席に戻ると、エルナとフィナが俺に向けて、非難の眼を向けてくる。

「な、なんだよ」

「悪い意味で目立っちゃったじゃない」

「風評が悪くなる」

 二人から攻められ、俺、ダメージ大。

 その後頂いたオレンジジュースは大変美味しゅうございました。



「ん~、空気がうまい」

 酒気に満ちているギルドから出ると、外の空気がとても旨く感じた。

「で、これからどうする?」

 一足先に出ていたエルナが聞いてくる。

「って言われても、この街あんま詳しくないしな…。フィナ、どっか行きたいところあるか?」

 後ろにいるフィナに尋ねる。

「………」

 フィナは顔を僅かに伏せ、何かを考えるような仕草をした。数秒後、

「あそこ」

そう言って、どこかを指差す。指差した先にあったのは、

「屋台…か?」

 そこはクレープでも売っていそうな屋台。丁度、男女の二人組が注文しているところだった。

「いいわね。丁度小腹もすいてるし」

 エルナが賛成の意を示す。俺としても嫌がる気も無いので、

「じゃあ行こうか」

と言って、屋台に足を向ける。

 屋台の前に着くと、前の男女が注文を受け取ったところだった。が、受け取っているものが予想とは違った。クレープとかのスイーツ系かと思っていたが、目の前で受け渡されているのは、パッと見、肉だった。

「エルナ、アレ何よ?」

 隣にいるエルナに聞いてみる。

「何って、ドネルケバブよ」

「ドネルケバブ!?」

 確か、スライスした肉を固まりにして、それを回転させながら焼いたものを削ぎ切りしたものだったはず。

 前にいた男女が抜けて行き、エルナが前に出る。

「三つください」

「あいよ。三つだね。少し待ってくれよ」

 屋台の中のおじさんは愛想よく応え、肉を焼き始める。肉の焼けるいい匂いが鼻を刺激する。あまり感じていなかった空腹感が、一気に増幅する。

 しばらくして、おじさんが、紙でくるんだドネルケバブを差し出してくる。三人がそれぞれ受け取り、代表で俺が支払う。それから、近くのベンチに座って食べ始める。

「ナニコレ、うまっ!」

 噛むと、肉汁が染み出てきてパサつかず、やや脂っこいが、薄い味付けで丁度いい感じになっている。あっという間に食べ終えてしまう。

 満腹状態で横の二人が食べ終わるのを待っていると、すぐ近くに馬車が停まるのが見えた。中から黒い服の上に白衣を羽織っているという、なんとも妙な服装の男達が降りてくる。一体なんだろうと思い、眺めていると、その男たちは、素早い動きで俺たちが座っているベンチを囲んでいくではないか。

「な、なんなんだ、アンタら!」

 黒服の男たちに叫ぶ。が、彼らは顔色一つ変えない。

 ふと、男たちの一部が割れ、一人の男が出てくる。茶髪をオールバックにし、フォーマルな服装に身を包んでいる。顔立ちはお世辞にも整っているとは言えず、頬もやや扱けていて、顔色も悪い。

 男はゆっくりとした動作で、俺たちの正面に立つと、

「フィナ、探したぞ」

と言った。口ぶりからして、かなり近しい間柄らしい。

 フィナは男から顔を背ける。男はそんなフィナの様子に特に気を悪くした様子もなく、今度は、

「うちのフィナがご迷惑おかけしました」

と言い、俺とエルナに一礼する。そして、再度フィナの方を向き、

「帰るぞ」

と言うと、フィナの手を掴み、強引に立たせる。そのせいで食べかけのドネルケバブが地面に落ちるが、男は気にも留めず、そのまま、フィナを引っ張っていく。俺は慌ててフィナの反対の手を握る。

「何だね?」

 男が足を止め、こちらに振り返る。言葉は丁寧だが、若干苛立っているようにみえた。

「何だはこっちのセリフです。アナタは誰なんですか?」

 俺の問いに、男はわざとらしく申し訳ないという顔をつくる。

「おっと、自己紹介が遅れましたね。私はへレイ・クリミナル。街の外れにある研究所の所長を務めています。このフィナ・レノウドは研究所の重要な研究に欠かせない人材なのですが、数日前、忽然と姿を消してしまい、我々もずっと探していました。そして、今しがた姿を見かけたので、急いで連れて帰ろうと言うわけです」

 男は饒舌に語る。でも俺は男の話は聞いていなかった。フィナの顔を見ていた。知られたくなかった。フィナの悲痛な表情はそう語っていた。

「少々、お喋りが過ぎましたね。時間がない。ではこれで失礼します。フィナ、急ぐぞ」

 そう言って男は再びフィナを強引に引っ張っていく。

「待てって…」

「ですから」

 俺の言葉を遮るように、男が口を開く。男の目が細まる。

「時間がないと言っているでしょう」

 瞬間、後頭部に鈍い痛みが走る。後ろを見ると、周りの男の一人が血のついた石を待っていた。あれで殴られたようだ。

 手足の力が抜けていく。意識が暗闇に落ちていく。

 最後に聞こえたのは、エルナの悲痛な叫び。

 最後に視たのは、悲しそうな表情で馬車に乗り込むフィナ。

 最後に考えたのは、フィナを助けたいということだった。

どうでしたか。

ドネルケバブの味の感想テキトーです。信じないでください。

次は、まあ、ネタバレすると智哉がフィナを助けに行きます。

お楽しみに~

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