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第10話 狩る物と狩られる者

あーはっはっはっはっ!ごめんなさい

すいませんかなり遅れました。

今回は狩猟風景です。

飽きたりせずに読んでくれると嬉しいです。

 ギルドの馬車に揺られること約半日、俺たちは目的地の狩場に到着した。

 馬車から降り、固まった体をほぐすため、背筋を伸ばす。背筋からパキパキと音が鳴るのを感じながら目の前の光景に目をやる。

 そこは、広大な森。だが、最初にいた森とは違った。木と木の間に空間があり、日が差し込んでいる。そして、生き物がたくさんいる。木の上では鳥たちが盛んに飛び交っていた。

「トモヤー。作戦会議するわよー」

 馬車の方からエルナが呼びかけてくる。気づくと俺は馬車から少し離れていた。無意識で足が動いていたらしい。

 駆け足で馬車まで戻ると、エルナとフィナが二人で話していた。俺が来たことに気づいたエルナは、

「遅いッ!」

と怒鳴ってきた。いや、少しだけだろと思いながらも、待たせたのは事実なので、

「ごめんなさい」

素直に謝ることにする。

「…ま、いいわよ。で、作戦だけれど」

 エルナがフィナに視線を送る。フィナはそれを受け、うなずく。

「クロウウルフはそんなに強くはない。それを補うため、3~5匹の群れで生活している。だから、個々を集中して倒すのが定石。この中で二人が囮になって注意を惹いて、残った一人が一匹ずつ倒していく作戦」

「なるほど」

 効率的でいい作戦だとは思うけど、ひとつ疑問がある。

「囮役はだれがやるんだ?」

 相手の注意を惹くなんて危険なこと女の子にやらせるなんて…

「アタシとフィナよ」

…出来ないと思ってたんだけどな…。

「え~と、理由は?」

「クロウウルフは近距離で攻めてくるから、同じように近距離で戦うトモヤをぶつけるのがいいの。だから、必然的に囮はアタシ達になるわけ」

「そういう訳か」

 ま、俺がさっさと倒せばいいか。

「んじゃ、作戦を伝えたところで行くわよ」

 エルナが立ち上がる。それに続いてフィナも立ち上がる。

「おっけ。行きますか」

 俺も立ち上がると、森へ歩き出す。その後をエルナとフィナが着いてくる。

 そして俺達は、狩場に足を踏み入れた。



「いた」

 森に入って歩くこと数十分。草むらを覗き込んだフィナが小声で伝えてくる。フィナの後ろから見ると、群青色の犬に近い動物が4匹いた。どうやら、食事をしている様子だ。

「あれが?」

「(コク)」

 俺の問いに小さく頷くフィナ。

「それじゃあ、行きましょうか」

 後ろから熱を感じる。ゆっくりとうしろを振り返ると、火の槍を手にしているエルナがいた。

「え!?ちょ、ちょっと待…」

 俺の制止も聞かず、火の槍を投擲するエルナ。放たれた火の槍は、食事をしているクロウウルフ達の後ろの草むらに落ち、爆発した。

「ほら、いくわよ」

 走りながら俺の肩を叩くエルナ。見ると、クロウウルフ達は火の槍が投げ込まれた草むらを見ている。なるほど。コレはチャンスだな。

「よし、まかせろ」

 言うが早いが、俺は草むらを飛び出し、抜刀。一番近くにいた一匹を斬りつける。

 斬りつけた胴からふたつになるクロウウルフ。その断面から血と、内臓と、あとなんだかよく分からないものが溢れ出す。溢れ出した血は緑の草を赤く染め、内臓は落ちると、やわらかく弾む。

「ッ!?」

 その光景を認識した瞬間、のどの奥から吐瀉物がこみ上げてきて、慌てて口を手で押さえる。くそっ!気持ち悪い!

「ヴォォォッ!!」

 はっと眼を上げると同時に、クロウウルフが飛び掛ってくる。

「くそッ!」

 飛び掛ってくるクロウウルフに向かって、《飛鳥》を横なぎに払う。《飛鳥》の刃は目の前の獣の腹に食い込み鮮血を撒き散らす。出来るだけその状況を視界に入れないようにしながら、そのままクロウウルフの体を横に飛ばす。

 腹を切り裂かれたクロウウルフは、短く悲鳴を上げて、動かなくなる。

「ヴォウッ!」

「ガウッ!」

 残った二匹が右と左に分かれて走ってくる。

 どうするかと考えていると、突然左側のクロウウルフが爆発して吹き飛んでいく。エルナの援護だ。

 一匹だけになったクロウウルフの方を向き、跳躍してくるその体を、斜めに切り裂く。

「ギャウッ!」

 断末魔の声を上げ、クロウウルフだったモノは地面に落ちる。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 荒くなった息を吐きながら、思わずへたり込む。嘔吐感はもう無い。

「お疲れ」

「大丈夫?」

 エルナとフィナが走り寄ってくる。

「ん、大丈夫。問題なし。それよかエルナ、さっきは援護ありがと」

「まったく、危なっかしくて見てらんなかったわよ」

 《飛鳥》を鞘に収め、それを支えに立ち上がる。

「はー、しんどかった。あと何匹だっけ?」

「6匹」

 まだそんなにやんなきゃいけないのか…。

「ひとついい?」

 意気消沈する俺に、フィナが声を掛けてくる。

「なに?」

「さっき、なんで魔法使わなかったの?」

「あ、アタシも気になってた」

「ああ、忘れてた」

 ホントに。聞かれるまですっぱり忘れていた。

「バカね」

「いいだろ別に」

「使った方が良い」

「なんで?」

「切れ味や威力が上がる。それに錆びたり、欠けたりしなくなる」

 ほう、そんなオプションが。

「分かった。次は、やってみるよ」

「ほら、さっさと次探しにいくわよ」

 いつのまにか先に進んでいるエルナが呼んでくる。

「待てよ!ほら、フィナ、いくぞ」

 フィナに声を掛け、先にいるエルナの元へ駆け出した。



「痛ッ!」

 先刻の戦闘から数十分経った頃、森の中を歩いていると、突然、頬に痛みが走った。頬に手を当てると生ぬるい感触。見ると、手に血がついていた。横を見ると、鋭くとがった木の枝。どうやらこれで切ったようだ。

「どうしたのよ?」

 先頭を歩いていたエルナが振り返って聞いてくる。前を歩いていたフィナも振り返っていた。

「いや、ちょっと切っちゃいまして」

 血のついた手と頬を見せながら答える。

「ちょっと、大丈夫なの?」

 エルナが心配そうに尋ねてくる。

「大丈夫。あんま深くないし」

 嘘だ。感覚で分かる。結構深い。だが、無用な心配をかけることも無いだろう。

 そう判断した俺に無言でフィナが近付いてくる。

「ん?どした、フィナ」

 フィナは何も言わず、傷がある頬に手を当ててくる。

「…嘘。深い」

 事実を言い当てられる。何このコ、人の心読めんの?

「い、いや…。そんな事は…」

「いいから。じっとして」

 珍しく強い口調で言ってくるフィナ。思わず身を硬くすると、不意に傷をした頬に暖かい光が当たっていた。

 光はゆっくりと消えていく。と、同時にフィナの手も離れていく。

 ふと気づくと頬の痛みが消えていた。手をやると、傷は痕も無く消えていた。

「これって…」

 フィナの顔を見る。フィナは小さく頷く。

「私は治癒魔法が使える」

 やっぱり。フィナの魔法が作戦の中で出ないのは気になっていたけど、こういうことか。

「これならいくら怪我しても平気だな」

「(フルフル)」

 軽い調子で言う俺に、フィナは首を横に振る。

「私の魔法はあまり深い傷は治せない。だからあまり無茶しないで」

「おっけ。気をつけるよ」

 不安そうに言うフィナに、笑顔で答えてやる。

「ほらっ!喋ってないでさっさと行くわよ!」

 前にいるエルナが苛立った様子で怒鳴ってくる。

「行こう」

 さっきとは逆でフィナが声を掛けてくる。

 俺はそれに軽く答え、エルナを追った。



 あれから何回か休憩をはさんで歩くこと数時間、やっと次の群れを見つけた。

 だが、問題がひとつ。

「多すぎだろ」

 見つけたのは13匹の群れ、今度の奴らも食事中だった。

「ちょっと多いわね…」

 緊張したような声音でエルナが呟く。

「どうするよ?」

 俺の問いにフィナが答える。

「まず、囮役が出て行って注意を惹く。攻撃役はその隙に死角から攻める。最初の予定通りに進める」

「分かったわ」

「おいおい、それでいいのかよ」

 緊張した様子から一転、簡単に了解するエルナに、口を挟む。

「いいのよ。案ずるより産むが易しって言うでしょ」

 それ、俺がいたの世界のことわざだろ。何故知っている。

 言われても、一ミリも安心できないセリフを残し、エルナは別の場所へ移動していった。

「トモヤ」

 エルナの背中を見ていた俺をフィナが呼ぶ。そういや、はじめて名前で呼ばれたな。

「頼りにしてるから」

 そういってフィナはエルナの後を追っていった。

 まったく──そんな事言われたら、頑張るしかないじゃないか。

 俺は出来るだけ静かに《飛鳥》を抜き、水の刃を纏わせる。

 直後、正面の草むらから火の槍が飛来し、一匹の狼を直撃。周囲には焦げた肉の臭いが漂った。

 十二匹になった群れは、そのすべてが草むらに向き直った。

 それを確認した俺は草むらから飛び出す。群れに向かって、《飛鳥》を横なぎに振るう。刃の長さにモノを言わせ、間合いにいた二匹をまとめて斬り捨てる。あと十匹。

「ガァァァァァッ!」

 同族を殺されたことに気づいた一匹が、怒りの声を上げる。

「でぇいッ!」

 声をあげたクロウウルフを上段から斬り裂く。あと九匹。

 そこで他のクロウウルフも俺の存在に気づく。そして足元の死体を見ると、敵意を剥き出しにし、襲い掛かってくる。

 が。そのうちの一匹が突然爆発。辺りには再び焦げた肉の臭い。同時に草むらからエルナとフィナが飛び出してくる。あと八匹。

 クロウウルフは俺に襲い掛かるのをやめ、辺りを警戒し出す。

 フィナが右に走り出す。当然、奴らの注意はそちらに向いた。その隙を衝き、一匹を斬る。同じようにエルナも一匹を焼く。これで六匹。

「ッ!」

 押し殺したような悲鳴が聞こえる。反射的に見るとフィナが転んでいた。くそッ、遠い。

 クロウウルフの反応は早かった。六匹のうち、二匹はエルナの前に、二匹は俺の前に、そして残りの二匹は、フィナに襲い掛かる。

「フィナッ!」

 フィナの元へ行こうとする俺の前に二匹のクロウウルフが立ち塞がる。横目でエルナを見る。近距離で来られているせいで、魔法が撃てていないようだ。幸い、攻撃は食らってはいない。だが、倒すことも難しい。──俺が行くしかない。

 二匹目掛けて刃を振るう。しかし、かわされる。その間も、フィナにクロウウルフは近付く。

「くそッ!どけぇッ!!」

 刃を振るい続ける。それを軽やかにかわしていく獣。焦燥だけが積もっていく。

 とうとうフィナにクロウウルフたちが接触した。

 それを見た瞬間、妙に頭が冴えた。ほとんど反射的に柄頭で一匹に叩く。

「ヴォアウ!?」

 ひるんだ隙に斬る。動揺したのか、もう一匹のクロウウルフも足を止めた。それを見逃さず、叩っ斬る。

「フィナッ!待ってろ!」

 すでにクロウウルフはフィナに飛び掛っている。

──ここからじゃ間に合わない。そう判断した俺は、飛び掛っているクロウウルフ達が重なる点へ、《飛鳥》を投擲する。

 自分でも信じられないような勢いで跳んだ《飛鳥》は、見事二匹を貫く。だが、その勢いは殺せず、クロウウルフの体はフィナへと落ちていく。

 それをフィナは体を捻ってかわした。

「はぁ、終わった」

 おもわず、独り呟く。さっきのような嘔吐感などは湧いてこなかった。でも、なんとなく嫌な感じは残っていた。

「大丈夫!?」

 エルナがフィナに駆け寄ってくる。見るとクロウウルフが二匹、黒焦げになって転がっていた。

 「フィナ、大丈夫?立てる?」

 心配するエルナが手を貸している。フィナは手を取り、立ち上がる。──が、いきなり、顔を歪ませて、しゃがみ、足首を押さえる。

「おいおい、大丈夫かよ」

 小走りで駆け寄り、フィナの足首を見る。そこは青く腫れていた。

「うわぁ、痛そ。転んだ時に捻ったのか」

 幸い、そこまで酷いものではなかったが、しばらくは歩けないだろう。

「フィナ、治癒魔法で治せないのか」

 俺は手っ取り早い解決法を言う。だが、フィナは首を横に振る。

「私の治癒魔法は自分は治せない。でも、平気。問題な──ッ!」

 立ち上がろうとするフィナだが、やはり足が痛むようで座り込む。

「あんま無理すんな。しょうがない。すこしここで休もう」

 提案。再びフィナは首を横に振る。

「血の臭いに嗅ぎ付けて、他の魔物がやってくる。この森には、クロウウルフより恐ろしい魔物がいる」

 確かに。ここにはあいつ等しかいないという訳ではない。当然だけど。

 ならどうする?なにか良い方法が……ある。

 立ち上がり、《飛鳥》の鞘と刀身を回収。そしてフィナの前にしゃがむ。

「なに?」

「決まってるだろ。おんぶだよ、お・ん・ぶ。ほら」

「なッ!?なに考えてるのよこんな時に!」

 今までフィナの足の手当をしていたエルナがいきなり噛み付いてくる。

「なにって、しょうがないだろ。フィナは動けない、でも、ここから早く動かなきゃならない。だったらこうするしかないだろ」

「それは…そうだけど…」

 エルナが引き下がる。ったく何だったんだよ。

「という訳で、ほら」

 再度、フィナに催促。

「でも、迷惑に」

「このまま動けないままでいられるほうが迷惑だ。いいから早く」

 フィナはさらになにか言おうとするが、やがて観念したようで、おとなしく俺の背中におぶさり、体重を預けてくる。

「OK。じゃ、いくぞ」

 怪我に響かないよう出来るだけゆっくり立ち上がる。

「ん、ずいぶん軽いな。フィナ、体重いくつだよ──痛いッ!」

 頭を殴られた。加害者の方を向くと、

「女の子にそんなこと聞かないっ!バカじゃないの!」

すごい剣幕で怒られました。だよな、ちょっとデリカシーに欠けたな。

「ごめんなフィナ」

「…別にいい」

 ちょっと間があった。やっぱ怒ってるかな。



「ひとつ聞いていい?」

 背中いるフィナが声を掛けてくる。おんぶを始めてからすでに数時間、そろそろ腕が疲れてきた。それに加えて、前を行くエルナが時折睨んでくるから精神的にも疲労が溜まってきている。

「ああ、いいよ」

 疲労と一緒にやや退屈も感じてきたので丁度良かった。

「トモヤは『渡り人』だよね」

「あ、やっぱり気づいてたか」

 分かる人は分かるのか。分からなかった奴が目の前にいるけど。

「元の世界に帰りたいと思ったりしないの?」

 ふむ。前にエルナにも聞かれたっけな。

「率直な答えは思わない、だな」

「懐かしく思ったりはしないの?」

「ん~、懐かしくないと言えば嘘になるな」

「じゃあ、どうして?」

「こっちの世界が面白そうだったからだ。俺は、なるべく面白いことをして、退屈しないように生きていくって決めてんだよ」 

「そんな理由で…」

「俺にとっては充分過ぎる理由だ。知ってるか?俺って変な奴らしいぞ」

 自分では全くそうは思わないが、周りの奴らは大体そう判断してくる。本当に失礼な奴らだ。

「……うらやましい」

「えっ?」

「私もそんな風になれたらいいのに…」

 小さな、それでも重さのある呟き。俺にはその中の真意を汲み取ることは出来ない。それでも、一つだけ言える事が俺にはあった。

「多分なれるさ」

「えっ?」

「人の可能性は無限だ、とか無責任なことは言わない。でも、努力すれば大概のものにはなれるんじゃないかと俺は思う」

「…」

 フィナは何も言わない。俺も更に何かを言う気は無かった。しばらくすると、フィナは小さく息を吐いた。首筋にかかってこそばゆかった。フィナは言葉を紡ぐ。

「ダメ。トモヤみたいにはなれそうにない。でも、ちょっと元気出た。ありがとう」

 そう言って、フィナは俺の首に絡めた腕に力を込めてきた。

 …うん、あのね、なんかキレイにまとまった感がするんだけどね。現在俺は由々しき事態に直面している訳でして。俺は現在進行形でフィナをおんぶしていて、その状況下で腕に力を込められると、背中に極上にやわらかいものが押し付けられる訳でして。この雰囲気でこんなことを発言するのはありえないし、かといってこのままだと俺の理性がどうにかなっちゃいそうだし。ああもう、どうすりゃいいんだよこんチクショウ!

 こんな感じで悶々としながら、俺の人生初めての狩りは終わりに向かって行った。

戦闘の描写に若干納得のいってない作者です。

今回の話はいかがでしたか?

もし、どこかでイラッとしたのでしたら謝罪します。

次の話は、まあ、色々あります。


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