プロローグ
異世界ハーレムものに仕上げていきたいな~、なんて
始まりは突然のことだった。
もっと事前に予兆的なものがあっても良かったのではないかと思うのだが、現実はどうもそう甘くは無いらしい。
今だからこそ苦い笑みとともに思い返すことができるが、しかし当時はそうもいかなかった…と思う。もうほとんど覚えていないのだ。事実を知るものは存在しないので、真実は闇に葬られたことになる。やったね。
昔の出来事を回想する時、必ず『あの時はああすればよかったのでは』と考えてしまうことがある。過去は過去なのでもうどうしようもないし、それにその時その時足りない頭を振り絞って最良と思える選択肢を選んできたはずだ。それなのにどうしても悔いてしまうのは、あのころの自分が若く、そして今の自分が老いたからだろう。若さゆえの過ちというのを認めてみるのも一興だ。
さて。もしも、もしもの話をしてよう。
もしもあの時、ボタンが一つでも掛け違えられていたのなら、風が吹き、南国で蝶が羽ばたいたのなら、俺はここにはいなかったのだろう。
全ては偶然。偶然の重なった結果。そうしてできた道筋をたどった結果が今の己なのだろう。
仮定形ばかりでモヤモヤしてくるが、しかしそれが真実だからしょうがない。
別にこうなったことを憤っているわけではない。これまでの日々は刺激的で退屈しなかった。
かと言って俺が刺激的な毎日を求めていたかと言えば、そんなことは無いのだ。退屈で退屈で死にそうだとか、考えたこともなかった。
いや、ミクロの視点で考えればそう思った瞬間もあったかもしれないが、マクロの視点で考えれば俺の日常はそう退屈なものではなかった。
朝は眠い目をこすりながらも嫌々起き、夜はあくびを隠そうともせず布団に潜り込んだ。その間にはいろいろなことがあった気もするし、何も無かった気もする。
だがそれでよかったのだ。
流されるだけの人生だとか、灰色の日々だとか、つまらない世界だとか、世の中を皮肉っていた誰かさんはたくさんいたが、あれは一例だろう。ご愁傷様と言っておく。
俺は構わなかった。ぬるま湯のような日々で。波紋も起きない日常で。波風立たない人生でよかったのだ。それ以外知らなかったし、知ろうともしなかった。
もしかしたら、あのまま俺の日常が続いていたとしても、近いうちにその日常に何か大きな変化が訪れていたのかもしれない。
……もういいか。『もし』とか『もしも』とか、亀さんかよ。飽きました。
遍く全てはなるようにしかならず、なるようすらなりはしない。あの日に既に賽は投げられ出目は決まった。覆ることは無い。
在りし日の過去は背後の道に置いてきた。置き去りにしてきた。触れることは叶わない。
それはまるで御伽噺のようで。筆者は俺だが、製本してしまえばもう推敲はできないのだ。
ならば読もう。本を手にした俺はただの読者。それ以外にやれることなどありはしない。
物語の一番最初。俺のこの物語はあの暗い森から歩き出した。
さて、俺が筆者ならこう書き出すのだろう。
―――すべては、あの日から始まった。