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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

超マラン

作者: にん

 児島駅の朝。僕竿木マラ彦は一人壁にかかったデカジーパンを蓑のようにして人目をやりすごしていた。それはなぜかというと、僕がホームに設置されている自販機を恫喝してジュースを数本脅し取ったからである。否、脅し取った容疑をかけられているからである。なぜ言い直したかというと、僕が自販機をゆすった事実があるにせよ無いにせよ、児島警察署で取り調べを受けたときに「僕は何もしてません!」と人目をはばからない大声で言い張らざるをえないのは自明だからである。そもそも僕は普段水か卵白しか飲まないので、わざわざ自販機から清涼飲料水を取りだす動機がないのである。そうこうしているうちに、それまで静かだった駅舎がだんだんざわめきはじめた。ついに僕の居場所を!

 「あ!あそこに足ある」

 しまった!警察のひとの声が聞こえた。全身の九割以上を隠しおおせていることに慢心して、残りの数パーセントである足首から下のことをすっかり失念していた。僕は邪魔だとばかりにデカジーパンをはねのけて南口へ走り出すことにした。「あ!逃げました」と再び警察の人の声が。これから僕は新幹線にでもなるつもりで走る。走った!

 するとなんでか体の動きが鈍くなる。僕は今までにない本気で走っているのに、まるでしびれた体を無理にうごかすようなもどかしさとともに遂に僕の体は完全にその場に崩れ落ちて、意識も若干遠くなった。

 「近頃の子供は万引きがうまくて嫌だなあ」

 「でも、僕が中学の時くらいからこういう手口はありましたよ」

 もうろうとする意識の中でなんとか外の音を拾おうとする体に感動した。僕は早くこの場から立ち去りたい!でもそれができない以上、立ち去る方法を探るしかない。体さえ動けば…!

 「てか先輩、それめっちゃ効果あるんですね!配備されたときはなにこれって感じでしたが」

 「そらあんまり半端なものはこんな地方まで回ってこんやろ。県警は常に警視庁のおさがりを使うしかないんじゃけ」

 「フーン…すごいな。マラバインド…」

 マラバインド?マラバインド!それなら僕にも。

 

「うわ!なんだ」

 「これ、マラバインドじゃないすか!?」

 「なんで・・・!」

 僕はマラバインドのことを思い出すとたちまちマラバインドのすべてを思い出して、それを発動することができた。それまで児島駅の改札前の床でひれ伏していた僕は一転、追手の警察官を屈服させた!僕は立ち上がって再び逃げ出すことにした。

 「うう、苦しい・・」

 もう少しで駅前の道路を挟んだ先のコメダ珈琲に逃げ込める!コメダがダメなら、さらに奥の海に飛び込んでしまうのもいい!と思っていると、僕は後ろから応援に駆け付けたお父さんの超デカマラバインド「同期の桜」によってあっさり!という音を立てて死んだ。

 「うわ!死んだ」

「悪事を働いたからと言って、わが子を手にかけてしまうなんて、」

 お父さんは、後ろで二人の警官が狼狽しながら見守る中で、ペットボトル・缶専用のごみ箱の穴に頭を突っ込んで死んだ。

 「こんにちは!フジテレビの『ココ調』なんですが、今お時間よければ取材させていただいてもいいですか?」

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