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黒雀姫  作者: 馬場悠光
3/5

路上にて

 数日後。講義が終わり、大学を出た所で私は二人組の厳つい男達に呼び止められた。男達は刑事だった。


 賭博の容疑で挙げに来たのではないかと動揺する私に対し、刑事の一人が語る所によると、数日前の二十三時頃、N町のとある住宅で、若い女が殺される事件が発生した。警察の捜査により事件の一週間前、その女から手酷く振られた元恋人……Kの存在が浮上した。警察に呼ばれたKは聴取にて、その日のその時刻は友人達と自宅で麻雀をしていたと証言したので、刑事達はその友人達から話を聴いて回り、証言の裏を取っているのだという。


 自分を挙げに来た訳ではないのだと分かり、一瞬安堵したものの、あの黒雀姫が殺されたというのと、友人のKがその犯人として疑われているという事実に、私は更に動揺した。それでも私はKのアリバイを刑事達に証言した。二十三時と言えば私が一旦眠りから醒めた時刻だ。その際、Kは確かに私の目の前に居た。それに現場の住宅があると言うN町は、Kの自宅からどんなに車を飛ばしても往復で二時間は掛かる。あの日、Kは何度か手洗い等で席を立ったが、せいぜい五分、十分程度の話だ。そんな短い時間で黒雀姫を殺しに行ける訳がない。


 刑事達は私の証言を聴き終えると、捜査への協力に対する感謝の言葉を述べ、あっさりと去っていった。どうやら私の証言を信じてくれたらしい。しかし安堵するのも束の間、私の脳裏にKがバーで発した呪詛の言葉が響くと同時に、恐ろしい考えが浮かんだのだった。


 ――Kは本当に、黒雀姫を殺す事は不可能なのか? あの日、私は麻雀の途中で眠りに落ちてしまったが、あの眠りがもし、睡眠薬等によって人為的に引き起こされた物だとしたら? あの眠気は、Kの用意したコーヒーを飲んだ直後に引き起こされた。有り得なくはないだろう。二十一時頃、コーヒーで私と他二人を眠らせたKは車でN町へ向かい、二十三時頃、黒雀姫を殺害。その後、帰宅したKはアリバイを作る為、トリックを用いた。Kの自宅の時計には文字盤がなかった。それを利用したのだ。五時半の時刻に時計自体を百八十度反転させると、時針と分針の位置は二十三時に近い物となる。Kは五時半になると、一度私達を起こして反転させた時計を見せ、今の時刻を二十三時と誤認させたのだ。


 刑事達を追い、彼等に私のこの推理を話そうかと考えたが、今は控える事にした。Kは友人である。易々と売る様な真似は出来ない。それにまだ、はっきりとした証拠もない。誰かにこの推理を話して意見を貰いたい。一度卓を囲めば誰であろうと皆友人である。雀荘には私とKの、共通の友人が誰かしら居るはずだ。そんな彼等の意見が欲しい。そう思った私は、知っている近くの雀荘へと足を向けた。

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