第六話゛俺、紹介される
俺はどうやら現在進行形ではぶられているみたいだ。
これは誰かが企図したことではない俺の判断ミスであるあの時一番最初にするべきはホテルへの予約だったが気持ちを落ち着かせるため俺は飯を食べることにした。
その後アーサーが現れるというのは予測していなかったがせめてアーサーが現れる前に一駅離れているホテルに連絡を取るべきだった。
伊藤が予約したホテルはもとより、店から出た時に歩きながら淡い希望を抱きながら一駅先にあるホテルに電話を入れていたのだが一足遅かった。
それで俺を除くアーサーの3名のサーヴァントは泊まる場所もあるということで武器選びは金曜日つまり今日にして名前だけ教え合ったそうだ。
アーサーにとってもサーヴァントを得るのに時短になるからそれで合意したということらしい、と呆れて寝そべっていると武器選びに行っていた同僚達はアーサーと共に帰ってきた。
「帰ってきたニャ、一人あたり1時間かかったから3時間÷2で1時間半の警備お疲れさまニャ」
「一人づつしかできなかったのか?」
「スレイヴはみんな一人づつついてるニャけどゲンさんしか武器の適正を判断できるスレイヴはいないニャ!」
「で、みんなどんな武器になったんだ?」
「そこは話をつけてあるニヤ順番に話さないとすごく時間がかかるニヤ。」
この猫は一応君主だサーヴァントをまとめ上げるくらいのことはしてくれた。
「それではサーヴァントになった順に軽い自己紹介だニャ、これから仲間同士連携を取るために自己紹介くらいはしておくニャ、スムーズに自己紹介してもらうために本名→サーヴァントとしての名前→武器の名前→話したいやつは一言の順で話して貰うニャ!」
この突如としたセレモニーの開会の話が終わった。
しかしアーサーお前という奴はこの自己紹介があることを伝えていないサーヴァントを最初に話させるとは、俺としてはもうちょっと配慮してもらいたいものだ。
「じゃあ俺からでいいのか?」
アーサーは小さく頷く。
「本名は山本 陽希、サーヴァントとしての名前は確か…西郷吉盛、武器は薩摩拵えという日本刀だ、まぁよろしくな!」
なんとか言えた、こんな抜き打ちテスト聞いていないまぁ点数で言うなら70点くらいだろう。
「ざっ、スタンダードだニャ、」
こいつはまだ俺に会話の変化球投げろって言ってんのか呆れたもんだぜうちの君主様は。
「次は俺の番か」
有栖川と言ったかそいつ含めて俺以外のサーヴァントは事前の打ち合わせを聞いていたようなので俺より圧倒的スムーズに例の自己紹介を始めた、まぁ運動部特有の気質ってのもあるとは思うのだが。
「本名は有栖川具視だぜ!サーヴァントとしてはヨン・ゲソムンらしい!武器は貘弓で高句麗の良弓だと言うぞ!後方支援は任せてくれよな!」
これは100点の演説だと思った内容、声量ともに非の打ち所のない演説。俺も事前に知っていればこのくらい話せただろうとひがんでしまうほどだった。
貘弓とか言ったか有栖川は頼れる後方支援役になりそうだと期待できてしまう存在だった。
俺を含めたサーヴァント一同の拍手が止むと永野が少し前に出て話を始める冷静沈着だがしっかりと透き通った声で話した。
「山本君はもう知ってると思うけど私の名前人間としての名前は永野望よ、サーヴァントとしては藤原頼姫と言うわ、武器は舞草刀という太刀の一種ね失礼を働く者は容赦なく斬るつもりよ、よろしく。」
まったくおっかない一言を話す女だぜ近接武器を携えている俺ならともかく有栖川のような遠距離武器の使い手が機嫌を損ねて斬撃を喰らおうものならナイフで防ごうと致命傷は免れないだろう。
まぁ仕方ないこいつらには実戦経験がないのだからそこん所俺は実際に短刀で太刀を防ぎきるのがどれだけ困難か理解はしているつもりだ。冷徹な空気が穏やかになる頃椅子に座っていた赤髪の小柄な少女は立ち上がり端的に自己紹介を済ます。
「私は古賀奈菜と言うのですミドルネームはミステルなのです、アーサーからはソフィアと名付けられました、武器はオークと翡翠の長杖なのですよろしくなのです皆さん。」
儚げながら笑顔で話す彼女の様子は可愛いかった噂によれば中学時代までは父に連れられてイギリスで暮らしていたみたいだ。
高校入学を機会に母の望みもあり日本に移住して来たという。
アーサーは古賀の座っていた椅子に飛び移りその後軽快に机に乗り移った。
そうしないと目線が低すぎて俺達全体を見るのが難しいからだろう。
「ひと通りの自己紹介は終わったかニャ?ここからは全員に補足説明をしていくニャ。
まず1つは交代で証の警備をするニャ。うぬたちがこうしている間にも敵は証を狙っているニャ、全員が入国してしまったら守りはないも同然ニャ!
うぬも守ることはするニャけどうぬもずっと守ってられる訳ではないニャ協力するニャ、ルーラ命令ニャ!
2つ目ニャけど登校や下校する時は全員でまとまって速やかに移動するニャ、孤立した状態程敵に狙われやすいことはないニャ。
それにルーラとサーヴァントは周りからエネルギーを吸収しようとする性質があるニャあまり人間と接触しないほうがいいニャ。まぁ死ぬほどではないニャ普通に生活してれば支障はないニャ!
3つ目ニャけど君主即ちうぬの命令には従うニャ、こう見えてもルーラとして10年の間戦ってきたニャ指示くらいは出せるニャ!以上君主からの告示だニャ!」
本当に注文の多い君主様だぜ、こうして俺達
4人は強制的に集団登下校が命じられたのだ
小学校以来だ通学班なんて、それにしてもあの猫何気に10年も戦っていたのかつまりおじさん?もしくはおばさん?フランス人の
名前だから俺には男なのか女なのか分からない。
どちらにせよ高校生の俺達のことをどこか
見透かしているんじゃないかと疑う年齢なのだ猫は最も猫としては寿命で死ぬはずなのだが。
「お〜いみんな!写真撮ろうぜせっかくなんだから」
「悪くはないわね有栖川君。」
有栖川が運動部特有の話調で声を上げる、永野は賛同の声明を出した、古賀は小さく頷き了承の意を伝える。
写真を撮る雰囲気が展開された俺は断れない断る必要もない、むしろ撮ることに賛成だ。
有栖川に近づいて撮ることを拒んでないという態度を取る。
有栖川はスマホを横向きにして手を斜め上に突き出し写真を撮ろうと試みる、俺の肩に重みを感じたあの猫はちゃっかり映ろうと努力してるらしい。
有栖川の手が撮影ボタンに届くいい1枚が撮れた。
その写真は新しく作ったグループ通信アプリ(ロイン)に送られてきた、ほぼ初見の4名が一体感を出している。俺はその一員となったのだった。
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