魔力機関
オルドに導かれ城の最下層へと行き着いた。鉱山の薄暗い道がいつからか続いていたが、その部屋には激しい機械音が地面を揺らしていた。それと共にバチバチと今にもフィラメントが壊れるんじゃないかと思う程、悪い音を鳴らしながら光る電球のおかげで部屋の中は信じられない程明るい訳だが、この調子じゃいつフィラメントが切れて停電してもおかしくない。
「おい!大丈夫か?この電球!」
大声で話さないとおそらく騒音のため聞こえないだろう。
「大丈夫です!この機械から近いので電球に流れ込む電力量が他の場所とは桁違いなだけです!電力を光だけでなく音にも変えないと光が強すぎて前が真っ白になるので音を出しているだけです!」
それでも凄まじい光だ、もう扉の手前では薄暗い坑道も普通の部屋と変わらないくらいの明るさになっていた。
「で!?これが見せたかったものなのか!?アーサー!」
マジで耳が壊れる、デスボイスを鳴らし続けるその機械はデスマシンと言うのに相応しい。
「そうだニャ!これが魔力製造装置、物質転換式魔力機関ニャ!詳しい説明を!オルド!」
猫は耳が利くので人よりも尚更尋常ならざる音を聞くことになったであろう、肩から飛び降りて去って行ってしまった。
「地上のもんか!これ使え!耳壊れるぞ!」
機械の前に座布団を敷き機械にコインを入れていたスレイブと思わしき人物が、その人物の付けているヘッドフォンみたいなものを俺とオルドに投げて渡した。
「おっと、」
キャッチすると俺はすぐに装着した、なんでもいい今はこの騒音をなんとかして欲しい。少しでもこの音を遮音できればいいが正直このヘッドフォンは安物中国製品みたい見た目をしているので遮音できるのかは疑わしい。
だがこのヘッドフォンを付けた瞬間、かの騒音を聞くよりも驚愕した。遮音率100%、さっきまで耳の中をドリルでほじくり返されるような音が伝わってきたのがピタリと止まり、俺の脳内は静粛に包まれた。
「おーい、聞こえるか?」
静粛に包まれた俺の脳内に直接声をかけるかの如くその声は聞こえた。
「あぁ聞こえている、てかあんた誰だ?」
口の動きで俺に話しかけてきたのはヘッドフォンをくれたその人物だと分かった。だいたいこのヘッドフォンの機能を活用できるのはその人くらいだろう。
「そのヘッドフォンのマイクに付いているボタンを押してみろ。」
ヘッドフォンのマイクをオンにする、ザザーッという電源の入る音がしたのでこれで俺も話せるようになっただろう。
「き、聞こえるか?てか、あんたは誰だ?」
いくらヘッドフォンありといっても生活感のないこの部屋で暮らしているとしたら、その人となりも気になるというものだ。
「よし、聞こえてる聞こえてる。悪いな兄ちゃん達ら一昨日からこの機械動かしたらこの有様よ、ヘッドフォンなしじゃまともに作業の一つもできゃしない。」
つまりこの人は一昨日から勤務しているということか、スレイブが疲れを感じないと言っても、たいそうなことだと思う。
「すまん、すまん、名乗り忘れていた。俺の名前はゲンナー・シュミット、地上の職人ゲンナー・ハインケルの弟、という設定よ。」
そう設定だ、これはメタ発言という訳ではないスレイブには生殖という概念が存在しないので血縁関係というものが本来ない、ただスレイブを生み出す時にあれこれと設定することができる、アーサーの先代の先代はシュミット、ハインケル、エルの3人を血縁関係という設定で生み出し、それから現アーサー国の重鎮として長年に渡り面倒を見てきた現アーサー国最初のスレイブ達なのだ。
「オルド、説明はお前の仕事だ。」
そう言って仕事に立ち返るシュミット、シュミットという名前は本名としてはいいと思うのだが、やっぱり源さんみたいにあだ名が欲しいところだ。
「オルド、ゲンナー・シュミットさんにはあだ名とかはないのか?」
オルドは兜を掻いて答えた、兜の上からヘッドフォンをしても遮音出来るとはなかなかの優れものだな。
「あまり関わりのない人ですからね、本名もあまり呼ぶ機会はないですし多分ここの説明が終わったら、山本が会うこともないかと。」
それはそれで淋しいな、でもないなら仕方がないか、ないあだ名を欲しがるのは無いものねだりということか。
「この機械はですね、魔力を作り出す装着なんです。勿論、魔法世界ではないこの世界では等価交換が必要になります。魔力製造装置は等価交換をして魔力エネルギーを取り出します。そのエネルギーを魔力に変換させる能力はおおよそ神の作ったものとしか言いようがありません。私やゲンさんが生み出される前からあったと考えられ、その初出や作り方、原理さえも、理解不能で再現不可です。」
やっとこのルーラ、サーヴァント業界で使われている魔力の正体が分かった。でもそれはあの猫に説明させようとしていた内容の答えにはなっていない。
「で、なんで俺達初心者サーヴァントが長時間戦えるようになっているんだ?この機械は元々それもお前達が存在する前からあったんだろ。」
その質問をするなりオルドは俺に土下座した。鎧のガシャンと言う音が聞こえそうなくらい高速土下座をしてきたが、残念ながらその音は聞こえない。
「すみません、私嘘をついていました。初心者でも魔力が尽きたりはしません、常に供給され続けるからです。しかしながら我が国では魔力機関が壊れ、壊され、壊させられ、貯蓄していた魔力を切り崩して使っていました。そのため少しでも魔力を節約するために嘘をついていたのです。」
「ちょっと待て、そんなに言われても脳内に大量の情報が流れ込んで来てうるさいから、どうか落ち着いてくれ。」
オルドは土下座をやめ、いつもなにかを説明する時のように毅然とした態度をとってくれた。まぁいつも兜をしているので感情が読み取れず毅然としているように俺からは見えるだけかも知れないが。
「嘘ってどういうことなんだ?」
「はい、まずアーサー様が負けたというのはご存知ですね?」
「あぁ知っているだから俺達をスカウトしたんだろ?アーサーを倒せる程強いルーラがいたのか、俺にはあの猫が負けているのを想像できないんだが?」
「ええ、アーサー様は確かに強いですね、しかしアーサー様より強いルーラが日本には少なくとも5人います。」
逆にスゲェと思う、だってそれって確認できる上では日本で6番目に強いんだろ、あの猫。
「その5人の中にアーサーを倒した奴がいると。」
「はい、そういうことになります。日本最強のルーラ毛利安芸守元狩、サーヴァント一人一人の武力面だけを見れば島津薩摩守鬼義に部がありますが、サーヴァントの総数が日本のルーラで圧倒的に多い毛利安芸守元狩が我々にとっては宿敵と言えます。」
段々話がそれて来た。
「で?魔力機関の話にどう繋がるんだ?」
さっきの話に繋げるように話すオルド。
「それはアーサー様が負けた時の降伏文書にあります、その降伏文書の条文の一つに魔力機関の破壊があったのです。そしてアーサー様の手、自ら破壊しました。」
なんとなく納得がいった、確かに魔力さえ出させなければ敵を戦闘不能状態のままにできるもんな、戦車も戦闘機も燃料がなければ動かないのと一緒だ。
一応サーヴァントは武器をバトルモード以外でも使用できる。だがやってみた感想は絶対に魔力入りの方がいいということだ、魔力が入ってないと刀は待ち上げられても振り回すのは無理だ、体の動きだって鈍重になる、2メートルも跳べない、すぐ疲れるなど、圧倒的に不利なので、言うなれば戦闘力5のゴミに成り果ててしまうのだ。




