第52話゛八代 春音(はるね)
永野の部屋の中に鞄を入れた瞬間で用済みとばかりに締め出された。エレベーターでは混雑し始めていたので、仕方なく階段で5階の最終番号のついた部屋へと向かった。学生寮は1階が共用で2階、3階が女子、4階と5階が男子用の部屋となっている。
「よっただいま、久しぶり〜。」
ここは学生寮だ、一人部屋だと思わないで欲しい。むしろペアルームなのでまだ安心感はある。
だが俺はペアに恵まれたとは言いたくない、本人には罪はない。しかし正直調子が狂うというか、何となく口を割って話そうとは思えない、本能的にそう告げている。ひどいと思うかもしれない、だけど仲良くなると危うくボーイズラブの道へと進むような気がする。
勿論ボーイズラブを批判する訳ではない、やっている人達はそれでいいと思うし相互的に理解しているなら、むしろ賛成する。
長くなったが結論を言おう、俺のルームメイト八代 春音は男にしては可愛い過ぎる。当然ながらモノホンの古賀や永野よりは女っ気がないものの、肌白で小柄で男としては華奢な体格の春音はボーイッシュな女の子と区別ができない、声だってアルトというよりはソプラノに近い。
「どうしたんだよ、やまちゃん。やまちゃんはいつも暗い顔するよね。」
ヤバい今ちょっとドキッとした、辛辣な永野の事を考えると『やぶさか』ではない。なんて段々あの猫に似て高慢になってきたな。
「荷物持たされたんだよ、それで少し疲れているからだろうな。」
どれだけ女に似ようと本質は男、男性ってのは他人事に興味がない人が女性よりも圧倒的に多い。まぁ女性にはさらに興味はないものの聞いてくる時があるという厄介な面があるというのだが、男性はまずそういうカマ掛けは検事じゃない限りしない。
「ふ〜んそうなんだ。」
部屋のデスクで、あのダルそうな受付嬢から貰った紙の詳細を確認した。
入国ビザ。
入国キーワード:素振りをする素振り
入国時間:5月2日、6時30分〜11時30分
7時から会議をします遅れないようにして下さい。ルーラ又は代表としてサーヴァントを一人で送ることも許可します、ただし一国あたり一人でのご入国をお願いします。
だそうだ、明らかにルーラの存在を知るものだ。現在時刻は6時26 分か、あと少ししかない行くなら俺かアーサーだ。一人でしか来れないのは攻撃を避けるためだろう、一人なら取り押さえが楽だからな。
「なぁ、アーサーって寝てるうぅぅぅぅ!」
アーサーは俺のベットで熟睡していた、寝るなら国内で寝た方が睡眠時間長くできるのに。
「どうしたんだ、やまちゃん急に大声だして?」
「飽きたかも知れんが、一応ツッコんでおくと俺は名古屋発祥の手羽先屋ではな〜い!」
「うん、それが聞けて安心したよ。」
入国するとそこは国会議事堂の内部みたいになっていた、アーサーの国よりもよっぽど国らしい。




