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第44話゛永野望。

雲を抜けるとそこは春のため雪国ではなかった。

 私は新千歳空港へ到着した。今日の天気は曇り最高気温8度、まだ春の北海道は寒かった。おじいちゃんとおばあちゃんはゲートで私を出迎えてくれた。

「よう帰ってきたね〜、入学式に合わせてカニ送ったけど食べたかい?」

 おばあちゃんの実家は釧路にあり毎年売り物にならなかったカニが送られてくる。形は悪いけど味は変わらない。

「うん、食べたよ。すごく美味しかった。」

 家にはカニを剥く専用の器械が幾つかあるので入学の際に学生寮に1つ持って行った。そのおかげで快適にカニを完食できたのだ。商品にならなかった蟹、小ぶりで一人で食べるには丁度よかった。


 おじいちゃんはプリウスを運転しながら愚痴をこぼした。

「全くあの子はいくら仕事が大変だからって自分の娘をほったらかしにするとは、なまらちょすなこった。」

 私が幼い時から祖父母の家に預けられている。しかしそれは仕方ないことだった母は世界で活躍する何組ものアイドルや音楽ユニットのプロデュースをしており常に世界中を飛び回っている。 部下としてついて来る何人かのディレクターにも仕事をある程度任せてはいるが、それでもあくせく働かなければ手が回らないほど多忙な役職なのだと国際電話で教えてくれた。

 祖父母の家には鮭をくわえた熊の木彫りが玄関に飾ってある、私はそれを見て家に帰って来たのだと実感した。

「それにしても学園特区ってのはひでぇーところだな折角入学したのにもう帰らせるのよ。」

 入学して一週間で帰らせられた。あそこならきっと私に合うだろうと思って入学したのにすぐに帰らせられた。高校に入学するまでの、札幌にいた時のいい思い出はあまりない。



 これは私が小学4年生だった頃の話だ。それまでは普通の女の子として、それもごく普通に友達がいた。小学生にも暗黙のルールが存在する。進んであいさつをする、クラスの一員としての自覚を持つ、他人の悪口を言わない、など字面は私が高校生になり回想しているから難しくなっている点もあるがごく簡単なことであった。

 そんな普通の日々の中で事件は起きた、否、最初は事件でもなかった、そして後に事件としても扱われなかった。

「お前は可愛い子豚ちゃん〜。」

 男子の悪ふざけ、悪口は駄目だと言う暗黙のルールもあり可愛い子豚ちゃんとオブラートに包みながらも、その当時クラスでポッチャリキャラを演出している女の子を嘲笑に晒した。限りなく黒に近いグレーなラインを攻めている小学生特有の悪知恵だ。

 そしてその子が本当に小さい時からそのキャラを演じて来たのなら傷つくことはなかったのだろうが一昨年あたりから太り出してかなりコンプレックスになっていたのが災いを呼んだ、しかもセンチメンタルな心の持ち主ですぐに泣いてしまった。


 私は小さい頃から正義面を被っていた悪いことは許せなかった、規範から外れた人間は徹底的に批判した。その子が泣いた時も私は迅速に駆けつけ男子達を注意した。

「大丈夫?心ちゃん?、何をしたのそこの男子達!」

 男子達は三々五々に別れ逃げて行った、私は強かった。先生にもこのことを報告し一件落着かのように見えた。




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