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第十八話゛俺、昼飯を食べる。

猫は俺の机の中にいた、俺が客観的に見たら妙なことを言っている時に机の中に入ったらしい、

あの時はクラス一同が永野を除いて俺に注目していたから誰も気が付かなかった。

「おい猫……これはどういうことだ?」

俺は小声で猫に事情聴取をした、誰も気づくなよ……俺が猫に話しかけてるなんて知られてちまったらとうとう精神科送りと判断されるんだからな。


幸い未だ点呼中であったため藤田先生の声に紛れて誰にも聞かれている様子ではなかったのだが。

「簡単なことだニャ……もし母親が急にいなくなったら山本はどうするだニャ?」

永野が丁度呼ばれる。

「永野!」

「はい、」

無感情に近い声音だったが、にわかに焦りを感じた。


その間に俺は答えた。

「そりゃ、学校も休んで探し回るさ……警察にも連絡を入れる。」

猫は前脚をなめてさらに問いかける。

「もし、ずっと見つからなかったら?」

少し悩んでから答えた。

「悲しみに暮れる?」

猫は少し呆れて。

「なんでうぬが聞いてるのに、疑問形で答えるニャ…これだから日本人は疲れるニャ。」

ここで俺の名前が呼ばれる。

「山本!」

「は、はい!」

俺は咄嗟に点呼に応じる。さっきの挙動もありみな不審がることはなかった。


俺のあとには米内しかいない、そう俺は出席番号40番でなのである。そういうことで猫の話は米内によって途切れることになった。

「どうしたんだ山本?井上って誰なんだお前親戚か?」

俺はダルそうに答える、だって説明しても信じてくれないもん絶対。


「なんかそんな名前が頭に浮かんだだけなんだ……ただそれだけなんだ。」

米内は軽い奴なのでこんなことを聞いてくれるのだろうなんたってこのクラスで唯一家を消し飛ばされてないんだからな。いいよな運が良くて!


「なんだ〜お前の妄想かこの変態が〜!」

そう言って茶化してくれる方が楽だよ今は。

俺で遊び終えた米内は去って行ったそれと入れ違いで会って話したことはないのに見慣れている少女が駆け寄ってきた。

「これ、もしよかったら見に来てください!」


ただそれだけ言ってA4サイズのパンフレットを渡して次の人また次の人と俺と同様にパンフレットを渡して行った。ふとそのパンフレットに目をやる。


「ハルナ!スペシャルライブ〜!」


と大きく印字されていた。ハルナとは我が長門高校では知らない者はいないという限定的超人気バンドである。

現在の高2の生徒4人バンドで、バンドの心臓ドラムスの霧島京子、縁の下の力持ちベースの比叡結那、調和の魔術師コードの金剛藍、そして頼れるリーダー神の声と指を持つギターボーカルの扶桑 陽葵(ひまり)


長門高校は中高一貫だから中学生の頃から彼女らは活動しており、俺達の学年は中学校の入学式で新入生歓迎ライブの影響で入学初日から知る存在となっていた。


それからも毎年の文化祭はもちろん入学式、卒業式、始業式、終業式などことあるたびにライブを行いしかも区内の老人会や子供会など地域含めての活動もしている。

定期ライブが月の第一月曜日と第三月曜日にあり、その来場者は毎回1000人を下回らない、因みに長門高校の全校生徒は2580名である、高校3年生は受験勉強があるのでこの数を除いて2250名、実に4割以上という生徒が来場するほどなのだ。4割?

意外と少ないと思ったそこの貴方大間違い!1000人というのは校内最大の施設である学園講堂の許容人数だ!


つまり入りたくても入れない残りの観客は家までの帰宅路でライブ中継で聞き入るのだ。その影響で長門高校にはスマホ歩きをする生徒が続出、校則に帰り道にハルナのライブ中継を観てはならないと書き加えられたのだった。


さてやっと本題に入れるか、その熱狂的人気を誇るバンドがスペシャルライブをやるっていうパンフレットが配られてきたのである、クラス中は歓声に包まれた、隣また隣のクラスからも大きく歓声が聞こえてくる。


配布をやっている生徒は特に熱心な信者でハルナの雑務であればなんでもするという心構えが出来ている、だから歓声が上がる一方パンフレットをせっせと配布していく。正真正銘のファンはただただ盛り上がるだけではないと感じた。


ライブの詳細はパンフレット裏に書かれていた。


「今日の午後4時からスペシャルライブやります!場所はいつも通り学園講堂!」


たったこれだけの文書に両面カラー印刷とはその金は一体どこからでてるんだよ。ハルナは確かに伝説的なバンドだが彼女らが進学のために、そして地域思いというバンドのイデオロギーのためテレビ出演や商業的なライブを全て断っているという。


スペシャルライブに沸き立つ教室に数学の井坂先生が入ってくるこの人は厳粛なことで知られているため、授業開始のチャイムとともにC組は静寂に包まれ授業が始まった。流石は学年主任!格が違う。B組もE組も授業開始から10分は静かにならなかった。


3時間目までは授業を受けていた。休み時間はライブのことで持ちきりそんな時間が過ぎていった。


4時間目は通常授業とは違いまたあの退屈な長門高校学生寮の件について学園講堂にて話を聞くことになった。

藤田先生曰く土日の間に色々と学校側の方針が決まったそうだ。こうして学園講堂へと高2生と高1生合同で向かった。俺は思いがけずハルナのメンバーに会った周囲からは感嘆の声が聞こえ群がろうとする連中も出てきたがそこは井坂先生の手腕でことを収めた。


講堂に入り腰を下ろすと校長挨拶から始まった。

「起立!礼!着席!」

井坂先生の号令で一糸乱れない礼をする。

「この土日に色々ありまして学生寮問題について解決につながるように対応してきたことを説明したいと思います、それでは井坂先生お願いします。」

校長の話から始まった第二次説明は暇で暇で仕方なかったし、誰もがこの茶番が終わりここでハルナがライブをやることを夢見ていた。

だってその決断に関与してるのは生徒じゃなくて教員や保護者なのである、直接被害者を交えないで対応を進めるのはどうにかしている。つまりこれは茶番である、

ただ「社会的に道理がなっていないと判断した我が校はホテル代を高校持ちにします」


という話は唯一惹かれた部分なんだけどな。

茶番が終われば次は飯だ俺は自炊しようも出来るわけがないので真っ先に学食へと向かった。

猫も後ろからついてきた飯を食べる場所である学食に猫を連れ込むのはどうかと思うがルーラに免じて妥協することにした。学食までの道中でサーヴァント一同4人は合流した。


学食に着くと金曜日と同様とても混雑していたしかも校舎→学食→学園講堂と並んでいるので帰りに寄ってこうって人で溢れかえっていた俺が四人の中で一番前にいたがそれでも会計をしている人影を見つけることはできなかった。暇なので四人で話し合いながらなにを頼むか決める。

「俺はカツ丼とカツカレーかな。」

「お前そんなに食べるのか?」

有栖川の食べっぷりはよっぽどすごいのだろう。

「それはできないわよ、今日は1人一品までって看板見てなかった?」

永野が鋭く質問、確認を促す。


「わかってるよ!俺だってバカじゃない!仕方ないから今日はカツ丼にするしかないな。」

若干残念そうにする有栖川に助け船を出してやった。

「俺はカツカレーにするよ半分こずつ食べようぜ!」

有栖川は大喜びする。

「マジっすか!アザ〜ス!」

ここで男二人は決まった。


続いて古賀が永野になににするか聞いた。

「ミス永野は何にするのです?」

永野は鋭く答えた。

「私はもう決まってるの、ズバリ春の天ぷら丼よ!」

ここで永野に悲しいお知らせが届く。

「春天ぷら丼、売り切れで〜す!」


永野の感は間違いじゃなかった春天ぷら丼にはアスパラガス天、タケノコ天と春の美味の他、長門高校名物大海老天がメインでこの時期一番美味しい一品だ、故に売り切れた。

「売り切れ?!仕方ないわねならタケノコご飯定食にしようかしら。」

またしても売り切れのお知らせが聞こえてきた。


「タケノコご飯定食売り切れです!」

その後も春限定の料理をチョイスする永野であったが、とうとう俺たちが注文する頃にはカツカレーorカツ丼という有様だった。そんなわけで永野がカツ丼、古賀はカツカレーをチョイスして、カツ丼、カツカレーそれぞれ2つずつの注文となった永野は悔しそうに。


「なんでカツカレーとカツ丼しかないのかしら、カツって手間のかかるもんじゃないの?とり天丼くらい残っててもいいじゃない!」と文句を並べていた。



なお有栖川の食欲は予想通り旺盛というべきものだったので、半分こずつと言いつつも実のところ3対7という分配で、俺は少し空腹感を残し午後の授業に突入したのだった。




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