第十六話゛俺、武器メンテをする。
先の戦闘の結果をまとめるとこうだ。
赤穂方、軽傷2人
武田方、死亡1人
戦では目的を達成できない場合と総指揮官の死亡のどちらかで敗北といえる、今回はその後者で武田方が敗北したのだ。
彼女にもより上級の存在があったが、あの戦闘空間において彼女は総指揮官といえるだろう。
だが前者の面で見れば赤穂方すなわち俺達が負けたといえる何故なら全ての手駒を見せびらかしてしまったのだ。
あれはあくまで偵察隊だ本隊に知らせる事が主任務、そのような偵察部隊に俺達は手の内を全て見せてしまった。
もはや奥の手ともいえるルーラの参戦まで含めて。
「よく頑張ったのニャ!流石はうぬのサーヴァントだニャ!頼もしいにゃ!」
猫はまだ余裕そうな表情でサーヴァント一同を激励した。
俺は悲壮な顔を浮かべて古賀に近づく、その時なんとかハンカチで抑えて足を踏みしめ立っていた古賀が倒れる、そして武装は自動的に解除された。
俺は頭を打たないように背中と頭を抱きとめる。
「来たれ明治維新。」
「陸奥平泉。」
「高句麗の良弓よ我が手に。」
皆で武器コードを呼びそれぞれの武器を鞘に収める。
そして古賀を抱きかかえる俺の元へと二人は駆け寄ってきた。
「済まなかったニャ、怪我人は国内で看病するニャ。」
アーサーは怪我人の国内搬入を促す、古賀がまだ喋れてよかった、すぐに皆で「猫は愛らしい」と言う、こんな怪我人がいる時に何いってんだ俺達は。
国内にテレポートするとそこにはオルドと古賀のスレイヴ「ガント」が担架を持って待機していた。
「さぁ、怪我人を乗せてくださいあとはスレイヴ一同、一所懸命に看病させていただきます!」
オルドが掛け声とともに古賀の背中から持ち上げるガントは足を持ち上げる、そして担架へと乗せ早歩きで去って行った。
二人が古賀を担いで行ったら次は有栖川のスレイヴ「グレイヴ」は包帯を持って駆けつけてきた、古賀ほどではないが有栖川も太ももを負傷していた。
「どうかお座りください有栖川様、簡易治療をさせていただきます!」
有栖川はバーテーブルの脚の長い椅子に座ると苦悶の表情で。
「痛ってててて。」
さっきまで毅然としてたのに、これはいわば怪我をしたけど気づかなくて後で痛み出すあの症状である。
そして有栖川の傷口に消毒を付けた保険室なんかでみる綿のついた棒をグレイヴはちょんちょんと殺菌していく。
有栖川は悶絶する。
「痛ってぇ!」
その後、有栖川の脚にはガーゼが張られた。
「これで明日には治るでしょう、サーヴァントは人間よりも傷の治りが速いですからね。」
グレイヴは安心したように有栖川に述べる。
「なら、痛みも無くしてくれよグレイヴ〜。」
有栖川が懇願すると、グレイヴはささやかな笑顔で。
「痛みがないと、攻撃されたか分かりませんからね、我慢してください。」
と言った、有栖川は少し不貞腐れていた。
こうして有栖川の治療をしていると、源さんが現れた。
「おうよ、怪我がねぇ奴は武器のメンテナンスくらいしたほうがいいってもんよ、俺が教えてやんからついて来な!」
怒るというよりも教えてあげるという教育的優しさのこもった口調だった。
俺と永野は始めて武器の保存されているところへと。
武器庫の奥には縦長の木製ロッカーがずらりとぎっしり並んでいた、それぞれに番号が振られていた。
「兄ちゃんのが1番のロッカーで、嬢ちゃんのが2番だ開いて出してみな。」
俺と永野は指定された番号のロッカーを開け武器を取り出す。
「下の引き出しの中に砥石とレザーが入っているから取り出してくれ。」
ロッカーは上が左右の開閉式で武器が入っており、下の引き出しにメンテナンス道具が入っているという具合だ。
「そこにある椅子に座ってくれ。」
二人で隣り合った丸椅子に座る、源さんは俺達に向かい合うように座った。
「兄ちゃん、ちょっと貸してくれよ。」
源さんは俺の道具と武器一式を借り説明する。
「砥石はなこうやって使うんだ、強すぎても弱すぎてもだめ。」
源さんは刀を研ぎながら説明してくれた。
そしてしばらくすると、研ぐのを止め道具一式を俺に返してくれた。
「あとは自分でやってみな!」
俺と永野は刀を研ぎ始めた、源さんは手を組んでその様子を見つめる。
「なぁ、メンテナンスはやってくれるんじゃなかったのか?」
源さんは毅然と答える。
「あれは初心者サーヴィスってもんよこれからはもっとサーヴァントが増える、俺と娘だけじゃあ間に合わねぇからな、でも安心しといてくれ直せないくらいのもんは絶対俺が直してやんからよ!」
俺達は手の内を明かしてしまったんだ新しいサーヴァントを得ないとマズイ。
それを踏まえてメンテナンスを学ばせているということか。
そして刀を磨き終えた俺達は武器と道具を元の位置へと戻し武器庫を後にしようとする、そこにエルが籠を持って現れた。
「これを持って、古賀様のところへ行ってあげてください。」
籠には包丁、皿、りんごが入っていた。元々そのつもりだったので籠を受け取った俺と永野は古賀の部屋へと向かった。
古賀の部屋に入ると俺は持っていた籠を机の上において椅子に座り古賀に話しかける、古賀は包帯を腹に巻いていたが幸い元気そうにしていた。
「体調は大丈夫なのか?」
古賀は優しく微笑み答える。
「はい、スレイヴさん達のおかげでもう何ともないのですよ。」
声はまともにでているしきっと安静にしていれば大丈夫だと感じた。
その間、永野はリンゴを切り分けて皿に盛り付けていた。
「リンゴここにおいて置くわね古賀さん!」
古賀は嬉しそうにして。
「ミス永野ありがとうなのですよ。」
永野は古賀をのぞき込んで両手を後ろに組み
怪我の治るまでの期間を聞き出す。
「怪我はいつ治るのかしらね?」
「スレイヴさん達によると月曜日までには治るそうなのですよ。」
「なら、学校は心配ないわね。」
永野は笑顔を浮かべてのぞき込むのをやめる。とにかく俺達は安心した古賀のその様子を見て、そして部屋を後にした。
そしてまたしてもこの女は俺を突き放そうという言動をした。
「助力くれてありがとう、私だけでは敗北していたわ、まぁ敗北することよりも山本君の助力を借りた私が一番憎いかしら。」
俺に対して評価せず自分を恨むのか。