第十五話゛俺、撃退する
敵が三人がかりで戦えば、俺達は互角に戦えなかっただろう。
しかしあの女は余裕をこいているのか参戦してこない。
そのまま俺達は交代しながらも、20分の間闘い続けていた。
有栖川は速射をしてアルビノ少女の足止めをするその間に古賀が呪文を唱え、強力そして精密な一撃を放つ炎系の魔法がうちの国の魔導書では主流だから相性が良かった。
アルビノ少女の作った氷塊のを難なく溶かしたのだ、互角というよりも優勢という状況になっていた。
「ふっ!ふっ!はっ!当たれ!」
矢は魔力で錬成されているので念じれば物質化され手に握りしめる事が出来る、有栖川は間髪入れずに撃ちまくった。
「アイスディフレクション!」
少女は六角形になった氷のタイルを矢の弾道と同じ場所にピンポイントで作り出し防御する、タイルは目的を終えれば床に落ちた。
「炎よ弾と成りて飛べ!ナパーム!」
メラメラと燃える人の顔程の大きさの炎弾が激しく音を立て光を放ち敵を焼き尽くさんとばかり飛んでゆく。
「氷の壁!」
アルビノ少女はまたまた氷塊の壁を生み出し業火を凌ごうとする。
そしてぶつかり合う炎と氷、ジュワーという音ともに氷が一瞬にして融解する、アスファルトが水で濡れた。
炎が少し優る。
「少し熱いわね…」
炎弾の熱は壁を貫通していた。
一方、俺と永野は二人がかりで十文字槍の男「馬場忠春」と刃を交えていた。
「はー!ふん!」「ふん!やるね〜。」
永野はさっきと同じように斬りかかる、しかし、今は俺がいる忠春には反撃する余裕はないすぐに俺は上方から刀を忠春に向けて刺そうと試みる。
永野の後ろから地面を蹴り上げ初戦と同じように高く跳ぶ、刃を下に向け落下する。
忠春は後ろに下がり刃が地面に刺さる。
「ふん!やー!」「おっとあぶないね〜、ふん!」
切っ先は地面へと落ちた。
刀が刺さって身動きの取れない俺にすかさず攻撃をしてくる忠春、だが俺は俺じゃない俺達なんだよ。
永野がすぐに俺の左側を通って忠春の刃を食い止める、金属音が響く、そして刀が地面から抜ける。
こうして俺達4人はいい調子で戦えていた。
しかし、ここで状況が変化するあの膠着状態を見かねたリーダー女がやっと参戦してきたのだ。
そのことを俺は古賀の悲鳴で知った。
「きゃ〜!いっ痛いのです。」
「後ろから魔法かい?お嬢ちゃん?随分と楽そうな仕事だね〜?」
古賀の後ろには漢服姿の女が立っていた、気配が消えていた武器も見えなかった。
「へ〜、お前もやっぱり卑怯じゃないか。」
女は煙草を口に加えるのをやめて地面に煙草を落とし靴の裏で煙草の火をもみ消して言う。
「うるさいわね、女の言うことにゃ文句言わねえってのが男の筋ってもんじゃねぇのかい?」
女は右袖に左手を突っ込み、もう一服でもするのかといった様子だった。
だが女は武器を俺に向けてきたのだ奇襲は1対1の戦いにおいてサーヴァントの戦闘特性上できなかった。
しかし集団戦なら別だ、目の前の敵に集中していたから見逃していたんだ。
彼女の動きを、どこにいるのかすら把握しきれていなかった。
そこを突かれたというかこれが彼女の戦闘スタイルなのだろう暗器という武器の使い手としての立ち回りを完全に会得していた。
古賀は腹に刺さった矢を引き抜こうとする、幸い袖箭の矢は発射構造が複雑なため返しがついていない。
それでも引き抜いた穴から血を大量に流す古賀は息苦しそうにしていた。
それを必死にハンカチで塞ぐ古賀、しかしそれをみている暇を与えてくれるほど敵は甘くない。
次の標的は俺なのだから、矢は俺目掛けて飛んでくる、古賀の悲鳴で女の存在を知る俺は発射直前で女の武器を目視できた身体を動かし回避行動をとる。
そして左肩に矢は当たった少し遅れていたら心臓だったそれが敵の狙いなのだ。
俺は矢を引き抜き女の方向に振り向く、永野と有栖川はそれでも戦った、そうせざるを得なかった。
ルーラが集団戦に介入するのは珍しいというそれはルーラがやられれば強制敗北となるからだ。
だがしかし俺達の優しくキュートなルーラ様は危機的状況だと見て参戦した。
「ウヌこそが赤穂讃岐守義時!武器はマタタビの首輪!ウヌの地の塩となれ!」
「名乗りはもう聞いたね!」
「無論だニャ!ウヌの弾を喰らえ、スイフトバレッタ!」
光の玉が高速で発射される、あれが学生寮を壊した魔導砲、その威力は控えられていたもののアスファルトに穴を開けるのに十分な威力だった、爆風が一番遠いところにいる馬場まで届く。
「は〜ん、やってくれるねオタクのルーラ様は。」
曹玄異は直撃は免れたものの爆心地にもっとも近いところにいたのでその破片が多く刺さっていた。
重傷を受けた曹玄異は撤退の命令を出す。
「ふっ…なかなかやるじゃないいいかいもう帰るよお前達!」
女の部下二人が返事をする前に俺が大声あげて女に斬りかかる。
「おぉー!どりゃー!逃がすかー!」
女は負傷してるため逃げることがすぐにはできなかった。
俺の刃が女の背中を引き裂き女は苦悶の声を上げながら倒れた。
「ぐあぁぁあー!」
横たわる女の身体の肩と肩の間目掛けて俺は刀を刺し確実に仕留めた。古賀を負傷させた怒りというというものが俺をここまで残酷にしたのだろう。
闘いが繰り広げられていたがリーダーの死を確認した2人は撤退を始めた。
「クソ!姉さんが死んじまうなんてな、仕方ねえ撤退だ!」
「リーダーが死んだなら仕方ないですね撤退します。氷嵐!」
氷の竜巻が吹き起こり全体を包み前が見えない、これがホワイトアウトと言うやつか。
嵐が止むと二人の姿はどこにもなかった。
俺達4人はただ足止めしただけの戦闘となった
アーサーが強かったただそれだけだった。
後日談として言うと、コメダ前に陥没事故があったというニュースが印象に残っている。
その陥没事故も小規模なものだったのでニュースにもネットにも3日経ったところで完全に人々の記憶から忘れて去られ何事もなかったかのように世の中は動いていた。