第十四話゛俺、出撃する3
永野は完全に防戦一方と言ったところだった。
元々4人で戦うのが最善だと考えていたこともあるが、それ以上に武器としての性質が敵方つまり馬場忠春に軍配が上がるということ。
それと有栖川と同じく実力差を感じざるを得ない戦いをすることとなっていた。
忠春は右から左へ折り返して左へと十文字槍を振り、そして上から大きく振りかざす。
その攻撃を永野は舞草刀を縦に構え身体全体を左右に揺らして全身全霊で十文字槍を受け止める180センチはあるガッチリとした体格の忠春の攻撃は重厚感があり、細身の永野は右左へと押され元の位置へと戻った。
そして強力な一撃が永野の頭上に振りかざされる永野は刀を横にし上に向ける。
激しく揺られ永野は後方へと50センチほど押される。
「はっ!はっ!どりゃ!」
「ふん!ぐっ!あー!」
金属のぶつかり合う。
カン、カン、ゴーンという音が鳴り響く。
この一連の流れが終わるのに十秒もかからなかった。
攻撃を受け止めているだけただ、それだけなのに永野は疲弊し始めていた。
そしてその疲弊が永野の考えを変えた防戦をしていてはいけないと体力がもつわけがないと彼女は考えた。
次に永野は訓練通りに斬りかかる必死に相手の後ろまで刃を届かせる思いで刀を振りかざしにゆく。
一歩強く足を踏み込み飛びかかる。
「やー!はー!」
まさに諸刃の刃、しかしこの決断は間違いではなかったさっきの馬場忠春の一撃はとても振りが大きかった、よって避けることはできなかったのだ。
だがしかし永野の刃は馬場忠春の身体を大きく損傷させることはできなかった。
馬場忠春は身体に届く直前で十文字槍を地面から振り上げ永野の舞草刀を跳ね飛ばした。
舞草刀は空高く舞い後方3メートルといったところにほぼ垂直に刺さった。
地面はアスファルトで出来ているのだから刀は相当な高さまで舞い上がったということになる。
「はっ、嬢ちゃんなかなかやるじゃないか。」
永野の諸刃の一撃は届かなかった。
忠春の頬をかすめるのみにとどまったのだ。
忠春の左頬には口元から耳まで細長い傷が出来て血が僅かに浮かび上がっていた。
永野は死んだと思った武器を取りにゆくには後ろを振り返らねばならない、しかしそれは死を示す。
だが武器がなければとても戦いにならずただ死を待つのみということになる、万事休すといったところだったところがそこに救済の声がかかる。
「来たれ明治維新!俺は赤穂讃岐守義時様に仕えるサーヴァント武器は薩摩拵え名前は西郷吉盛、立ち塞がる者は斬り捨てる!」
「テューダーローズ!私も同じく赤穂讃岐守義時様に仕えるサーヴァント武器は翡翠とオークの長杖、名はソフィアなのです英国魔法を喰らうのです!」
名を名乗り上げている最中も攻撃してはいけないというのも証争奪戦争の決まりになっているので敵三人組は俺達が名乗りを上げている最中は戦闘を止め名乗りを聞いていた。
そして三人衆は俺達二人に名乗りを上げる。
「私は武田信濃守元康様に仕えるサーヴァント武器は氷結のワンド名前はカラシニコフ・ターニャ、すぐに氷漬けにしてやるわ!」
アルビノ少女は言い終わるとすぐに有栖川の方に振り向き再び矢と氷の撃ち合いが始まった。
「たくっ若えもんは血気盛んなもんだなぁ、俺は同じく武田信濃守元康様に仕えるサーヴァント武器は見ての通り十文字槍名は馬場忠春、お前の身体も十文字に斬り刻んでやる!」
若いもんは血の気が多いとか言ってたくせにこいつは言い終わるや否や永野にトドメを刺そうとしてきたこういう話術もできる奴なのか。
俺はすぐにを永野と馬場とかいう奴の間に入り斬撃を受け止める。
永野が後ろにいたから俺は足を踏みしめ押されないようにした。
「うりゃドドメや。」
「クソ!永野死ぬな!どりゃー!」
ガーン!
咄嗟に走り出して防いだため俺の守りは十分じゃなかった俺の頬にも馬場と同じように傷が付く。
しかも俺の傷は馬場よりも深く、鮮やかな血が頰から流れ出た。
「馬場!お前若返ったか?」
リーダーの女が馬場を嘲笑したような口調で問いかける。
「へっ俺りゃあ蛇の生殺しってのが嫌いなだけよ。」
その答えに呆れた口調で女はやっと名乗りを上げる。
「あんたのそういうとこ好きにはなれんがねまぁいいよ名乗りを上げようじゃないか、私は武田信濃守元康様に仕えるサーヴァントで第2偵察隊長だよ武器は袖箭名は曹玄異、私の矢は痛いわよ!」
武器をチラッと見せてからまたしまうこれが彼女の最大の武器なのかもしれない。
名乗ったところで女は何もしてこないというかターニャと馬場の後方10メートルでたたずみ全く戦闘に参加しようとしない。
永野は舞草刀を拾い上げ俺と共に馬場と。
古賀は負傷した有栖川と共にターニャと戦うことになった。
こうして戦況は互角という形で俺達4人は武田信濃守元康の第二偵察隊と交戦してゆく事となった。