第十話゛俺、テルマエに入る
オルドから止めが入ったあと俺と永野はダミーに斬り込む練習をしていた。
このダミー言っていた通り優れもので斬れても斬れてもひとりでに元の形に戻る。しかも斬った断面がピッタリとくっついた状態に、斬る前となんら変わらないものに戻る。
さらに凄いのが斬った時の感触があの井上を斬ったときと酷似していた。
実戦をしたことのない永野はずっとこの感触を気持ち悪いダミーだと言っていた、確かにサーヴァントと言えど元々人間だったので人間を斬る感覚であるのだろう。
見た目では畳のものが人間の感触で斬れるのは気持ち悪くて当然だサーヴァントを斬ったことのある俺でも気味が悪く感じる。
あのスパンと斬れそうな物体が打ち方が悪いとグチョン、グチョリと気持ち悪い感覚が刀の刃先から刀を通して手に伝わる。
これも訓練なのだろうあまりにも再現がリアルすぎるが、まだビジュアル的に畳から血しぶきが上がったりしないことだけでもいいとしよう。
因みに俺達が斬り込み練習をしている時隣から矢の飛ぶ音が聞こえていたそれを矢の回収役の永野のスレイヴが一矢一矢評価していた。
その反対側からは呪文が聞こえたあとゴウゴウと燃える火の玉が飛んでいくのを何度も目にしたしその熱気も感じる。
こんな気持ち悪い感覚があるなら遠距離武器に変えてもらえばよかったと後悔する俺の元に朗報が届く。
「あと1本くらいで終わりましょう。」
俺はあと1本ということで思いっ切り刀を振り上げ全力でダミーを斬ろうとする。
「え〜い、やー」
スパンとはいかなかったブチと音がして一応のところ2つに斬れた、あの時と同じ斬れ方だと思う。
「お疲れ様ですお二人とも、最後にアドバイスすると言えば山本様はやはり振りが大きいですねもう少し小振りにしてください、永野様は脇を締めすぎですそのような体勢だと刀を勢いよく振ることができませんよ。」
俺と永野は刀の振り方まで気が合わないのか。共通点といえばオルドの話はちゃんと聞くこと。
まぁ問題事を起こしたらどんな拷問があの猫から下されるかわからないからな。
誰でもちゃんと話は聞くだろう。
もう一度ゲンさん登場、そしてこの中庭の真ん中に全員が集まる。
「これが最初の訓練だったと思うがこれからのもよろしくな!それじゃ解散!」
今度はいつものゲンさんだったおそらく俺達が訓練している間酒を飲んでいたのだろう。
現在時刻は現実時間の8時つまり俺たちはこの世界の時間に直すと2時間程訓練をしていたのだと懐中時計を見ていると、
おそらくサーヴァントに対しての福利厚生だと思われる行事のお話がオルドからあった。
「このあとテルマエつまり大浴場が沸きますんで入っていただけます。」
シンプルに嬉しいサーヴァントも汗をかくのだ実際俺達はひどく疲れ汗でびっしょりとしていた。
あのあと俺と有栖川は護衛となったレディーファーストという概念はまだ残っていたみたいで女組二人が先に入ることになったのだ。テルマエは女湯男湯と別れている訳ではなく一つしかないので交代して使うしかなかったのだ。
あの猫も眠かったみたいで護衛を代わって欲しいと頼んできたので男組二人が護衛として外で待つことになった。
あの訓練で疲れている筈なのに有栖川は快活に話かけてきた。
「なぁ、武器見せ合いっこしようぜ!」
修学旅行みたいだ確かにここはホテルさらに俺達に限っては大浴場もあるのだ修学旅行同然じゃないか。
そして修学旅行の醍醐味の一つといえば好きな子言い合いっこというものを連想するが、武器見せ合いっことはなかなか物騒になったもんだ。
まぁ減るもんじゃないし暇なのでその案には賛成なのだがな。
「あぁ、いいぜいっせーのせで見せような。」
「いっせーのせ!」「いっせーのせ!」
「明治維新!」「高句麗の良弓よ我が手に!」
どうしても武器コードの尺の問題で俺のほうが先に言い終わった、というか武器って衣装とセットみたいで戦闘モードになった訳でもないのに俺達は戦闘衣装に着替えられていた。
隣には韓ドラでよく見る武将姿の有栖川がいた手には頭から腰くらいまでの長さがある弓を携えていた和弓よりは弦が短い。
「その刀いいな!もっとよく見せてくれよ!」
まるで子供のように目を輝かせた有栖川が俺の左腰に携えている刀を握りしめる。
刀は武士の魂という、こいつ江戸時代の武士にこれやったら間違いなく斬られていただろうな。
俺は刀を腰にくくりつけるためのベルトというか布紐をほどいて有栖川に刀を明け渡した
赤色の鞘の部分を持って有栖川は刀をかっさらっていった。
床に落ちた弓を俺は拾い上げて観察してみる片手で持てるその弓は使い回しが良さそうだった。
和弓に比べて蛇行した形をしていてやはり短弓といえる弦の長さだった。
少し弦を引っ張ってみるとクロスボウ並みの引きの強さがある。
小さいながらも強力な武器だと感じた。有栖川は鞘を抜いて刀身に見入っていた。
その頃テルマエでも武器の見せ合いっこを行っていた。
「古賀さん、魔法すごかったですね。」
古賀は少し照れながら永野に話しかける。
「よかったら今ここで見せてもいい?」
永野は少し焦って言ったそうだ。
「ちょっと待って今私たち湯船の中よ、刀が濡れると錆ちゃうわ!」
古賀と永野は湯船から出て脱衣所で身体と髪を乾かしたところで武器を取り出した。
「テューダーローズ!」「陸奥平泉!」
永野が言うには古賀の武装衣装はイメージ通り某魔法学校の制服のようだったという。
脱衣所から出た二人は城のテラスのような場所から炎の弾丸を飛ばしたという。
その炎弾がアーサーの寝ている部屋に当たったのは予想外だったようだが、普段冷静な反応が多い二人もこの時は焦って脱衣所に逃げ込み武装解除して私服に着替えたのだという。
「う〜んよく寝たニャ、うん?なんか焦げ臭いニャ、ニャー部屋が燃えてるニャ熱いニャー! あらなみ!」
アーサーは炎上した部屋の中で武器コードを叫「」んだアーサーの首にマタタビが巻き付く。
「塩は海からの贈り物シートルネード!」
海水が風に巻き上げられ部屋に吹き上がる炎を次々と鎮火していったが部屋のものは全て窓の外へ出ていった。
ベッドに乗ったアーサーも外へ飛び出しテラスまで飛んでいった。
「ふぅなんとかなったニヤ炎……ということは古賀だにゃ!」
アーサーはテルマエへと走り出す。古賀と永野はまだ脱衣所に縮こまっていた。
「いたニャ!古賀うぬを猫の丸焼きにつもりかニャ!!」
「ごんめんなさい!わざとじゃないの!」
「今回は許すニャけど、無闇に武器を使うんじゃないニャ!」
「はぃ」 「はぃ」
二人は小さく返事をした。
そしてアーサーは俺達の元へと現れた。
「だ〜か〜ら〜無闇に武器を取りだすニャ!」
俺と有栖川は引っ掻かれたまったく不平等だ。
こうして警備を女組と代わり男組二人は不平に泣きながらテルマエに入るのであった。




