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第四話

そして、荒野には悪霊と聖女が一人ずつと、二人の人間が残った。


「フィオナ、これらはどうするの?」

「うーん。ロマーノはどう思う?」


魔法の縄で身動きが取れなくなった、愚かな人間たちの前にしゃがむ。


「た、助けてくれ、フィオナ・・・」

「あら、王太子殿下は助けてくれませんでしたよね?」

「だが・・・」

「ねえ、ロマーノ、わたしの手を汚さずにこの二人を永遠に苦しめる方法ってある?」

「ああ、あるぞ。地獄に落とせばいいんだよ」

「ロマーノってそれできる?」

「簡単だよ。・・・いいか?」

「ええ・・・じゃあ二人とも、さようなら。いままでありがとね」


「フィ、フィオナ?待ってくれぇぇぇ・・・」






世界が静寂に包まれた。


「じゃあフィオナ、約束を果たそう」

「約束って何?」

「結婚するって話だよ。俺が協力する代わりって言っただろ?忘れてたのか?」

「・・・あなたとは結婚できない。あと、これ以上一緒にいることはできない」


もとから、国を滅ぼしたら悪霊を元の世界に強制送還してこの国を建て直し、新しい世界をつくる予定だった。

だから、ここで悪霊を元の世界に送り返さないといけない。


「・・・約束を守るつもりはなかったのか。叶えられることなら何でもと言ったのに」

「わたしは了承していないわ。だからこの約束はずっと無効。」

「じゃあ、力で黙らせるしかないか」


ロマーノが魔法を放つが、神聖力の影響で常に貼られている結界で魔法は無効化された。


どんな攻撃魔法を放っても、怪我ひとつしない。

わたしを害するには精神攻撃か、攻撃魔法に分類されない魔法を応用するしかない。


それが聖女。


彼の魔力切れを待つのもできるけど、副反応で苦しむ彼を見たくない。



だって、ちょっと好きだったから。


何日かしか一緒に過ごしていないけれど、王宮で一人だったわたしの傍にいてくれたから。


だから、彼が苦しまないようにすぐに送還してしまおう。

わたしは心を鬼にすることを決めた。


「ロマーノ、ごめんね。・・・フィルム」


ロマーノに鎖が巻き付き、それを覆うように刺々しい薔薇が咲く。


「ははっ、結局約束は守らないのか。」

「色々あるからできないの」

「聖女だからか?」

「・・・ええ、それもあるわ」


聖女は王族以外に嫁ぐと、全ての魔力を失う。

悪霊はもってのほか。


国を新しくつくるときに悪霊の力が干渉すると悪影響を及ぼす。

だから尚更、元の世界に戻さなくてはいけない。


「ロマーノと過ごした時間、短かったけど楽しかった。約束は守れなかったけど・・・許して」

「許さない」


大人しくなったと思ったロマーノが強力な魔法を放ち、鎖を破ろうとする。

鎖は暫く耐えていたが、亀裂が入りついに粉々になると、彼は魔法を放つ。


攻撃魔法の類類に入らない拘束魔法を使われたため、神聖力の結界を通り抜け魔法がかかる。


身動きが取れないわたしに近寄り、優しく抱きしめ額にキスをする。


「ああ、俺はフィオナのことが世界で一番好きなのに・・・約束もしたのに・・・どうしてそんなに酷いことができるんだ?」

「きっとロマーノの世界でわたしなんかよりいい人人が見つかるわ。だから・・・」

「黙れ」


彼が攻撃魔法を放つが、結界で霧散する。


「そろそろ時間よ。ここをつくりなおさないと」

「嫌だ、絶対に離さない」


彼がわたしを抱きしめる力が強くなる。

でも、ここで躊躇している訳にはいかない。


「ロマーノ、そっちの世界で頑張って」


自分にかかっている行動制限の魔法が弱くなった瞬間に魔法を破壊し、再び彼に封印魔法をかける。


「こんな鎖っ・・・」

「お願いロマーノ。わたしも辛いの。」


ロマーノのいるべき世界・・・悪霊の世界の入口を召喚する。


「嫌だ、フィオナ、ここにいさせてくれ、フィオナ・・・」

「・・・これで許して」


深紅の瞳に大粒の涙を浮かべて抵抗する彼の唇にキスをして、悪霊の世界へ押し込む。


「嫌だ・・・フィオナッ・・・!」


最後の足掻きとでも言いたいのか、ロマーノが魔力暴走を起こす。

魔力暴走をさらに強い魔力で抑え、世界への被害を最小限にとどめる。


「ごめんね、本当にごめんね・・・。そっちの世界で頑張って・・・」




ロマーノが完全に入ったため、入口を閉じた。



閉じる時に、彼の声が聞こえた気がした。




第五話は11/18の午後6時

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