第二話
そう、わたしの前世「フィオナ」はライラ王国の聖女で公爵令嬢だった。
12歳の時に、怪我をしている子猫に治癒魔法を使ったことで聖女だということが発覚した。
聖女は王族の婚約者になる・・・というしきたりのもと、(愛人が居る)王太子の婚約者になった。
それからの毎日は辛いものだった。
王太子の愛人は男爵令嬢で、とても王妃になれる身分も器もなかった。
だからなのか、愛人が嫌々やっていた公務も全てわたしがこなすことになった。
その間、彼らは昼から寝室にいる。
待遇改善を求めたこともあったが、「聖女だから、将来の王妃だから」と言いくるめられ、何も変化はなかった。
・・・ただ、メイド達からは人気だった。
男爵令嬢がメイドに当たり散らし、怪我を負ったメイドをわたしが助けるからだ。
わたしの評判が上がることを恐れて男爵令嬢が癇癪を起こしてメイドを怪我させれば、わたしが治癒し、どんどん評判の差が生まれる。
わたしが助けたメイドが他家で働くメイドにわたしの良い評判と男爵令嬢の悪い評判を広め、話にどんどん尾びれがつく。
ついには「聖女の王太子妃をいじめる身分の低い愛妾と王太子」と有名になってしまった。
王族に残機(王位を継げる王子や王女)がないため、国王陛下も重い腰を上げて叱った。
わたしを。
あの時言われた言葉は今でも覚えている。
「フィオナ・シュディア。お前には王太子妃としての自覚がない。夫を立てるのが妻の役目だろう。噂を聞く限り、王太子に寄り添っていないように感じる。これなら、男爵令嬢の方が・・・」
は?何を言っているのこのじじいは?
と言いたくなったが、そんなことを言った瞬間首が無くなるから理性で抑えた。
公務は全てわたしがやっているし、歩み寄ろうとしたけど向こうが嫌がっただけだし。
だからわたしは決めた。
悪女になって、国を滅ぼしてしまおう・・・と。
それから、詳しい計画を決めた。
男爵令嬢を階段から突き落とすフリをして自分が落ちる。わたしは男爵令嬢がやったと主張するが王太子は聞き入れず、わたしは夜会で断罪され・・・
悪霊に国を滅ぼしてもらう!
計画が完成してから、すぐに計画を進め始めた。
男爵令嬢を階段近くの廊下に呼び出し、そこで計画の一部を伝える。
「ねえ、わたしの事嫌いでしょう?だから、提案があるのだけど」
「提案って何、フィオナ様。」
「わたしは階段からわざと落ちるわ。あなたはわたしが自分で落ちたと主張しなさい。夜会でわたしを断罪して国外追放しよう、ともね。」
「そんなことをしてなんの得があるの?」
「愛し合っているところに入るのは疲れたの。それに、自由に暮らしたいからね」
「・・・分かった。」
「あっ、もし余計なことを言ったら、あなたの命の保証は無いわ。」
「絶好のチャンスを逃すわけないでしょ!」
「じゃあ落ちるわ。またね」
それから計画は順調に進んだ。
男爵令嬢がわたしについての嘘の悪評を広めてくれたから、目覚めた時に貴族の味方は減った。
メイドたちは変わらず慕ってくれているけれど、所詮夜会に出れない身分の者しかいない。
この時点で、わたしの勝利はほぼ確定した。
しかし、最後に残ってしまった大問題が。
「悪霊」をどうするかだ。
召喚することはできるけど、従ってくれるか分からないが、計画を完成させるために、と王城の裏手に結界を張り、悪霊を召喚する。
「ああ、ここが人間界か。・・・俺を召喚したのはお前か?」
「ええ。少し協力してほしいの。お礼はわたしが実現できるものなんでもいいわ。」
「・・・分かった。とこで、俺に協力して欲しいことってなんだ?」
「色々あってこの国を滅ぼすことにしたの。だから手伝ってもらいたくて。」
「おぉ。相当恨みが溜まってるんだな。」
「協力してもらえる?」
「ああ。・・・じゃあ、お礼は結婚な」
「そ、そう。」
それから、わたしの身の回りの人や立場などを教えた。
「そりゃ国を滅ぼしたくなるな。・・・よく頑張ったな」
悪霊がそっとわたしの頭を撫でる。
異性にエスコート以上のスキンシップをされたことがなく、免疫が皆無なのもあって顔が真っ赤になる。
それを隠すために、急いで話題を変えた。
「っ・・・!と、ところで、あなたの名前はなんて言うの?」
「俺の名前?・・・うーん、思い出せないな」
「えっ?」
「3000年ぐらい名前を呼ばれることはなかったからな。・・・じゃあ、俺に名前つけてくれない?」
「うーん・・・じゃあ、ロマーノとかどう?」
「・・・いいな。じゃあフィオナ、よろしく」
「・・・ええ。」
なんだかこの悪霊・・・ロマーノと一緒にいると心臓がドキドキして落ち着かない。