表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/18

000. パーティー追放(上)

 ――「シオン、悪いがキミをパーティーから追放する」


 金髪碧眼の美男子。アレクシス・オーレリアが静かに、だが力強い声色で俺に告げた。


 冒険者学校の生徒襲撃事件による騒動も一応の落ち着きをみせた。七日間の外出禁止令も解除され、徐々にいつもの日常を取り戻しつつある。夜の食堂も久しぶりの再開とあってか多くの生徒たちで賑わっていた。


 そんなガヤガヤと煩い喧騒の中でもアレクシスの声はしっかりと俺に届いた。


 深刻な表情で俺と視線を合わせる様子は彼が決して冗談のつもりで言ったわけではないと察しの悪い俺にも伝わってくるほどだ。


「ちょっと待ってくれ……。どうして結成したばかりのパーティーから追放されないといけないんだ?」


 アレクシスにそう言い返すと彼の額から溜まっていた汗がゆっくりと流れ落ちた。そして大きく目を見開き、まるで『こいつ正気か?』とでも言いたげな顔で同じ四人掛けのテーブルに座っている残りの二人と顔を見合わせる。


「シオンくん、あのね……本当に心当たりはないの?」


 俺の右隣に座る、黒髪の大人しそうな外見の女の子。シャノン・ルーンが信じられないものを見るような目つきで俺の様子を恐る恐る伺うように尋ねた。


「アンタ、ほんの七日前に自分がやった悪魔の所業をもう忘れたの?!」


 俺の左隣に座る、シャノンとは対象的な活発そうな赤髪の女の子。リディア・サンフィールドが間髪入れずに捲し立てる。


「す、すまん。本当にみんなが言っていることに見当がつかないんだ……!」


 ここアストリア大陸には四つの国が存在する。大陸の北には黄金と富の国――グランオーレリア王国。東に信仰と光の国――ルーミリオン神聖共和国。西に獣の咆哮轟く国――アストリア大陸部族連合。そして南に今はもう()()()()()()()()


 四国(よんごく)は大陸の中心に位置する不緩衝地帯を不戦協定の地《理想郷(アルカディア)》として定めた。そして国の枠組みを超えたさまざまな分野の教育・研究機関の集合体である大陸中央学園都市(セントラルアカデミー)を建設した。俺たちはその中でも一校しか存在しない冒険者学校の生徒だ。


 冒険者学校は四年制でさまざまな分野の学科が用意されている。その中でも俺たちは《厄災の地下牢獄(パンドラ・ダンジョン)》という(いにしえ)の邪神を封じ込めたと伝わるダンジョンの探索と攻略を目的とする職業である冒険者を目指して日々努力している。


 入学してから半年が経ち、授業の一環であるダンジョンでの実地訓練のためクラスメイトとパーティーを組むことになった。そこで俺と友人のアレクシス、クラスメイトの女子二人の計四人でパーティーを組んだわけだが……。


――まさかパーティーを結成して一ヶ月で追放されるとは。


 四人とはそれぞれ親交を深めることができたと俺は思っている。だからこそ今回のパーティー追放処分については心外だ。推測するに追放を宣言したアレクシスの発言に残りのメンバーが驚いていないところをみると事前に三人で話し合い、俺をパーティーから追放するという結論を導き出していたようだ。


 ここは素直に理由を聞いてみよう。なにか誤解があったのかもしれない。


「ぜひ皆に聞きたいな。俺をパーティーから追放する理由はなんだ?」


 一拍置いて、三人が同時にテーブルに身を乗り出して叫んだ。


「キミが人間を細切れに斬り刻んだからだ!」

「シオンくんが人間をペチャンコに潰したからです!」

「アンタが人間の頭を木っ端微塵に吹き飛ばしたからよ!」


 事の発端は七日前だ。ダンジョンでの実地訓練で《闇撫手(シャドウハンズ)》と名乗る組織に襲撃されたこと。そして絶体絶命の危機的状況だったこと。やむを得ず、五人の襲撃者を俺がぶち殺したこと――それも多少、独創的(クリエイティブ)に。


 やっと俺は追放理由に思い至った。


――ああ、そうか。俺がシンプルに物騒でパーティを追放されるのか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 正当な追放理由だぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ