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英雄になりたかった少年の物語  作者: ななめぇ
序章
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穏やかな村3


 ぶつぶつと文句を言うエルザを宥めてなんとか防具の在庫を引っ張り出してもらう。

 古いものばかりだが保管状態は悪くない。

 なんとか使えそうな皮製の胸当てを選んで装着するが、成長途上の俺の体に大人用の防具はやや不似合いだ。

 グリーブはサイズを調整できないから厳しいか。

 動きにも影響が出るだろうし、あとで自分用の防具を発注しなければならない。


「待たせたね」

「お待たせアレン!準備はできてるー?」

「こいつが見習い冒険者か。俺はオーバンだ。よろしくな!」

「アデーレです。よ、よろしくお願いします」


 ダニエルたちが戻ってきた。

 増えた二人はダニエルのパーティのメンバーなのだろう、美女と野獣という表現がしっくりくる。

 エルザの父であるエドウィンほどじゃないがガタイのいい大男がオーバンで、なんだかおどおどした女性がアデーレというらしい。

 どちらもダニエルとドロテアよりやや若いように見える。

 というか、アデーレがおどおどしているのは俺を怖がっているのだろうか。

 人見知りだとしてもなんだかショックだ。


「アレンです。よろしくお願いします」

「おいアレン!アデーレに見惚れるのは仕方ないが、アデーレは俺の嫁だからな!」

「ちょ、ちょっとオーバン……」


 きれいな人だとは思ったが見惚れてはいない。

 そして先ほどのおどおどはどこへやら、アデーレもまんざらではないらしい。


「いつもの惚気だから気にしないでねー、アレン君」

「あ、そうなんですね」

「オーバン、アデーレも。仲がいいのは良いことだが、今日はアレンの案内役だ。そろそろ切り上げて狩場に向かうよ」


 ダニエルの声で我に返ったのかばつの悪そうな顔をするオーバンと顔を赤らめて恥ずかしがるアデーレが、ダニエルに続いてギルドを出る。


「さあ、行こうか!アレン君」

「晩御飯までには戻りなさいよ」


 エルザの見送りに片手を挙げて返し、ドロテアとともにギルドの外にでる。


(これが冒険者デビューだと思うと感慨深いものがあるな……)


 これまでやってきた剣と魔法の修練を思い出す。

 あれらが今日から活かされるのだと思うと、思わず武者震いしてしまう。


「怖がらなくても大丈夫だよー、あたしたちが一緒だからね!」


 俺が不安がっていると思ったのか、ドロテアが俺の手を握って緊張をやわらげてくれる。

 別に緊張していたわけではないのだが、彼女の優しさに対して俺も笑ってそれに応えた。


 まあ、とりあえずダニエルたちの邪魔にならないようにしていよう。





 ◇ ◇ ◇





 故郷の都市から東の方に位置する村。

 その南には広い森が広がっており、ここがダニエルたち村の冒険者の主な狩場になっているという。

 森の深いところには彼らの手に負えない強い魔獣が生息しているらしく、基本的には森の浅いところが彼らの仕事場になる。


 狩場に向かう途中、俺たちはお互いの情報を交換した。

 ダニエルは<棍術>、ドロテアは<風魔法>、オーバンは<剣術>でアデーレは<回復魔法>のスキルを持っているという。

 前衛後衛のバランスがとれた良いパーティだ。

 ただ、彼らの冒険者のランクは全員D級。

 C級に上がるのは難しいらしい。


 俺も<強化魔法>のスキルを開示するが、<結界魔法>は伏せておく。

 これを開示するのは相手を見極めて、十分に信用できると判断できたときだけだ。

 親切で狩場を案内してくれる彼らに対して不誠実だとは思うが、これからは自分の身を自分で守らなければならない。

 割りきりは必要だった。


 しばらく森の中を進むと、イノシシを一回り大きくしたような魔獣に遭遇した。


「ワイルドボア、2体か」

「あたしが<風魔法>で牽制する!あとはいつもどおりにね!」

「頼むぜ、姉御」


 腰に佩いた剣を抜いて戦闘に参加しようとしたが、ドロテアの放った<風魔法>の突風に怯んだ魔獣はその隙に左右に回り込んだダニエルとオーバンがあっという間に仕留めてしまった。


(流石は先輩冒険者。割り込む暇もなかった……)


 抜き放った剣を振りもせずに納めるのは情けないが、ろくに連携をとれない俺が割り込んでもかえって邪魔になりそうだ。

 狩場の案内という名目のとおり、戦力としては全くアテにされていないらしい。


 その後も2度ほど魔獣に遭遇したが、俺の出番は皆無だった。






「さて、最後に廃屋を案内しておしまいかな?」

「あー……、そうだね」

「廃屋ですか?ドロテアさん、そこには何があるんです?」

「ん……、まあ行ってみればわかるかもね。何もないときが多いけど……」

「なにしてるんだ?早く行こうぜ」


 オーバンに急かされて会話が途切れてしまったが、ドロテアが何かを言いよどんだことが気になる。


(危険な場所ということはなさそうだが……。俺に見せたくないものがあるのか、それともドロテアが苦手とする魔獣でもいるのか?)


 女性の冒険者が蟲などを嫌うというのはよくある話だし、強気な性格の冒険者でもそういった好き嫌いがないとは限らない。

 かくいう俺も蟲がでかくなったようなグロい魔獣は好きじゃない。

 そんなものを好きだという奴は本当にまれだろう。


 とはいえ、冒険者になったのだから好き嫌いなど言っていられない。

 少しだけ緊張しながら、俺は歩みを進めた。


 しばらくすると、廃屋という言葉どおりの古びた建物にたどり着いた。

 二階建ての洋館のようだが外壁の損傷はひどいもので、人がいなくなってから相当な歳月が経っていることを思わせる。


「私が1階右手、ドロテアは左手。オーバンは2階右手でアデーレは2階左手だが、アレンはアデーレについていってくれ」


 全員で廃屋の中に入るとダニエルがメンバーに指示を飛ばす。

 全員言われた通りに分散して廃屋内を探索するようだが、結局この廃屋に何がいるのか聞きそびれてしまった。


「アデーレさん、ここって何が出るんですか?」

「あ……、えっとね。ここは、たまに妖精が出るんだよ」


 ちょっとおどおどしながらも俺の質問に答えてくれる。

 妖精――――話に聞いたことはあっても実際に見たことはない。

 正直精霊と何が違うのかも理解していないのだが、遭遇したら戦闘になるのだろうか。


「こ、ここに出る妖精は、あんまり好戦的じゃないから、そんなに身構えなくても大丈夫だよ……。それに、ほとんど見つからないから……」

「そうですか……」


 そうはいっても何が出るか理解できていない以上、警戒はしなければならない。


「ッ!……今何か音がしませんでしたか?」

「あ、今日はいるのかな……?すごいね、初めてなのに」


 いくつか部屋をのぞいていくと奥の部屋から何か動く音が聞こえた。

 警戒しながら部屋に近づいていく俺をあっさりと追い越して、<回復魔法>しか使えないらしいアデーレが無警戒に部屋に踏み込んでいく。


(俺が警戒しすぎなのか……?)


 アデーレの振る舞いを見ると、警戒しなければ大けがを負うような相手ではないということは理解できた。

 俺も恐る恐る部屋に入っていく。


 すると――――


「え?女の子?」

「これは家妖精だよ」


 部屋の中では、ボロ布をまとった少女がこちらを見つめていた。




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