第八十三話 涙を流す殿下
わたしはルアンソワ様と仲を深めていきたいと思っていた。
その為に一生懸命努力をしてきた。
しかし、それは通じなかった。
ルアンソワ様は、わたしとの仲を深めるどころか、他の女性と浮気をした。
そして、ルアンソワ様に婚約を破棄された。
わたしは、最後までルアンソワ様が約束した方である可能性があると思い、ルアンソワ様に好意を持とうと努力し、愛そうと努力してきた。
婚約破棄のことを言われた後も、最後まで希望を捨てずに、婚約破棄に抵抗した。
しかし、その抵抗もむなしかった。
婚約破棄は成立し、その後、家からも追放されてしまう。
つらく苦しいことだった。
結局ルアンソワ様は、約束をした方ではなかった。
これは、わたしにとって、心に大きな打撃を与えるものだった。
ルアンソワ様との婚約前に、殿下のことを思い出せていれば、ルアンソワ様との婚約は断り、殿下を待ち続けたと思う。
そうすることができなかったのは、殿下に対して申し訳ない気持ちで一杯だ。
わたしは殿下と幼馴染として生まれたかったと思う。
そうすれば、幼い頃には、お互いに前世の結婚の約束を思い出して、相思相愛になり、恋人になっていったと思う。
そして、ずっと殿下に尽くすことができたのに、と思う。
幼馴染として生まれることができなかったのは、わたしの殿下への想いがまだまだ足りていなかったからだという気がする。
前世で体の弱かったわたしは、殿下が前世を去った後、一年ほどしか生きられなかった。
生きている間は、殿下のことを想い続けていた。
前世を去る時も、殿下への想いを強くもっていて、今度生まれる時は殿下のそばで生まれたいと思ったのだけど、それでも幼馴染として生まれるには想いが足りなかったのかもしれない。
殿下と離れたところで生まれ、旅先で救われるまで、会うことはできなかったのは、残念でしょうがない。
しかし、殿下に救われて、そばでお仕えするようになっても、前世での殿下のことは、会っていたことしか思い出せていなかった。
こういう大切な言葉をなぜ思い出すことができなかったのだろう。
前世では、殿下のことが好きだったのに、ほとんど尽くすことができなかった。
思い出せていれば、たとえ殿下が思い出していなかったとしても、それを力としてもっと殿下の為に尽くすことができたと思う
まだまだ殿下に全然尽くせていない。
恥ずかしい限りだ。
殿下は思い出していただいているのだろうか?
思い出していただいているとうれしいなあ……。
そう思っていると、意識が戻ってくる。
それとともに、泣く声が聞こえてきた。
「フローラリンデさん。今まで前世のことを思い出せなくて申し訳ありませんでした」
殿下が、わたしの手を握りながら涙を流す。
「殿下……」
わたしは次の言葉を待った。
「わたしは、前世の最後の時、『わたしは来世で、あなたと結婚することを心から望んでいます。結婚の約束をしたいと思います。よろしくお願いします』と言ったことを今思い出しました。なぜ今思い出したのだろうと思います。遅すぎたと思っています。前世で約束していたということは、どんなに遅くてもあなたが倒れるまでには思い出すべきでした。それなのに、思い出すこともできず、あなたに無理をさせてしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいです」
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