第七十話 奮闘するわたしたち
それから月日が経ち、三月中旬になった。
まだまだ寒いが、少しずつ春が近づいてきている。
とはいうものの……。
殿下との仲は、あれからあまり進展していなかった。
ラディアーヌ様の言う通り、わたしの方からアプローチをするべきだったと思う。
そうすれば、もっと仲良くなり、もしかすると婚約はまだ無理でも恋人どうしにはなれたかもしれない。
しかし、アプローチを躊躇する理由が二つあった。
一つは、仕事が想像以上に忙しくなったこと。
王国の財政再建、そして、王国の活性化を目指して、毎日奮闘していたわたしたちだったが、反対勢力が予想以上に強かった。
特に、王国の無駄な経費節減については、最初は反対する人たちしかおらず、前途は多難だった。
殿下の持っている権限で押し切ってしまうという方法はある。
しかし、それをすると、殿下の評判に傷がつく。
横暴な王太子と言われてしまう可能性があり、王位についた時に、臣下がついてこなくなる可能性もある。
それは避けたいところ。
だからと言って、この方策を進めなれば、王国自体の存続も危機を迎えてしまう。
反対勢力に屈すれば王国の危機。
しかし、ほとんどが反対勢力の中で孤立してしまっている状態で、権限で押し切ることもできない。
そんな絶望的ともいえる状況の中、殿下は、反対勢力一人一人を説得していく。
反論してくる人たちが、会議以外でも殿下のところにやってくるが、その度に懇切丁寧な説明をしていく。
わたしもその時は同席し、求められばわたしからも一生懸命説明を行い、殿下の為に働いていく。
その努力もあって、少しずつ賛成する人が増え始めていた。
ただ、反対勢力を説得する為の労力は大変なものだ。
その他の問題点の対策と合わせて、毎日、奮闘を重ねる。
殿下は、時間をきちんと守る方なので、どんなに忙しくても、
「今日はここまでにしましょう。明日また検討することにして、後はくつろいでください」
といたわりの言葉をいただき、そこでその日仕事を終わりにしている。
しかし、最近は、それでは対策案を立てるまでの時間が不足するようになってきた。
その為、自分の部屋で、対策案を検討することも多くなってきている。
殿下も同じ状況のようだ。
それならば、ずっと殿下と同じ部屋にいて、一緒に検討した方がいいようにも思う。
その方が効率的だと思う。
いや、そうしたい。
そうしている内に、殿下が求めてきて、
「フローラリンデさん、愛してる」
と言ってわたしを抱きしめ、唇を近づけてくる。
「この想いを受け取ってほしい」
「わたしも殿下を愛しています」
「フローラリンデさん……」
「殿下……」
重なり合う唇と唇。
そういうことを夢想すると、心が熱くなってくる。
しかし、現実は厳しい。
たまに、殿下が恥ずかしそうに話すことがある。
これはチャンスだと思うことはあるのだけど……。
そういう雰囲気になることはない。
ラディアーヌ様からは、あれからも、
「フローラリンデさんから積極的にアプローチするべきです。おにいさまはそうすれば、あなたに応えてくれます」
と言われている。
何度か、わたしの方から、アプローチをしようと思ったことはある。
しかし、結局はできなかった。
仕事に集中している殿下に、そういうことをするのは失礼だと思ったということと、わたしの方も仕事が増えてきて、まず仕事優先になってきたところが大きいと思う。
そして、さらに、二人ともだんだん疲労が増してきたところも大きいと思っている。
心身ともに余裕がなくなってきている気がする。
わたしはともかく、殿下は大切なお方。
殿下には健康でいてほしいと思っていた。
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