第五十六話 婚約破棄のやり方の相談 (ルアンソワサイド)
「ルアンソワ様、いよいよですね」
わたしとイレーレナは、わたしの執務室にいる。
ここで、まもなくやってくるフローラリンデを二人で迎えるのだ。
わたしたちは、手を握り合っている。
「さあ、どうやって迎えるのがいいのかな? ただ迎えるだけでは面白くない。面白い迎え方がしたいのだ。そうするには、あなたはどう迎えるのがいいと思う?」
「フローラリンデさんが驚いて、心に打撃を受ける迎え方がいいと思います。そして、心に打撃を受けたところで、婚約破棄をするのです。そうすれば、ルアンソワ様の言われる「面白い」迎え方になると思います」
「具体的には?」
「ルアンソワ様とわたしの仲睦まじいところを、彼女に見せつけてあげるのです。もうあなたからは、ルアンソワ様の心が離れているということを思い知らせてあげるのです」
「こうして手をつないでいたまま、フローラリンデを迎えるということか?」
「いいえ、それぐらいではまだ足りません」
「足りない? それで十分な気がするが?」
「足りません。手を握るぐらいでは弱いです。もっと強烈なことをする必要があります」
「どんなことだ?」
「彼女の前で抱き合い、キスをするのです」
イレーレナは冷たく笑う。
「さすがにそれは恥ずかしいな」
「そんなことは言っていられません。ここで、フローラリンデさんの心に大打撃を与え、ルアンソワ様に対する執着を断ち切らなければ、婚約破棄をしたとしても、『思い直してください』と懇願されてしまいます。そうなれば、ルアンソワ様もつらいでしょう。嫌いになった人に、いつまでも執着されるのですから。そうならない為にも、ここは、とことんまでわたしたちの仲の良さを心に刻みつけてもらい、あきらめさせるべきです」
わたしは話を聞いていて、少し嫌な気持ちがしてきた。
本人は、わたしの為を思って言っているのだと思うし、わたしもそれが一番いい方法だとは思う。
しかし、自分でいうのもなんだが、冷たい人だと思う。
彼女は、フローラリンデが嫌いなのだろう。
わたしもフローラリンデが嫌いになってきたが、イレーレナはそれ以上だ。
今までの憎しみが一気に吹き出てきている。
それは、決して気持ちのいいものではない。
わたしは、少しイレーレナに対する想いが弱まった気がした。
それと同時に、
イレーレナとの関係は見直すべきでは?
今日、婚約破棄はしない方がいいのではないか?
もしイレーレナとの関係をフローラリンデが認めるのであれば、婚約破棄するのは延期すべきでは?
という思いが心に浮かんできた。
しかし……。
「わたしにはルアンソワ様しかいません」
イレーレナはそう言って、わたしに抱きついてきた。
そして、
「好きです。ルアンソワ様。ルアンソワ様とフローラリンデさんは、もう別れるのです。わたし以外の人のことなど、もう想わないでください。お願いいたします」
と甘い声で言ってきて、唇を近づけてくる。
こうなると、もうどうでもよくなってくる。
イレーレナとの甘い時間を大切にしたい。
ただそれだけだ。
そして、わたしは思い直した。
フローラリンデがイレーレナとの関係を認めれば、婚約破棄を延期すべきだとも思ったのだが、フローラリンデの性格からすると、それはありえない前提だった。
やっぱり今日、婚約破棄をするべきだ。
イレーレナとの関係を今後どうしていくか、ということはあるけれども、それは、今はどうでもいいことだ。
唇と唇が重なり合っていき、わたしは、イレーレナのことのみを想っていった。
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