第五十四話 新しい女性に心が傾くわたし (ルアンソワサイド)
わたしはしばらくの間、フローラリンデとの婚約を続けるべきかどうかで悩んでいた。
心はイレーレナに傾いているので、そういう意味ではいつ婚約を破棄してもいいと思っている。
しかし、両親や公爵家の人たちのことを無視できない。
彼等の間でのフローラリンデの評判はますます高くなっている。
わたし自身も決して嫌いではない。
このままいくと、結婚するしか方法がなくなってしまう。
それでいいのだろうか?
良くはない。
しかし、婚約破棄をすると、わたしに今度が非難される可能性がある。
どうすればいいのだろう……。
そう思っていたところに、わたしにとって我慢できないことがあった。
わたしは公爵領内の増税を命じた。
まだ税を集める時期ではなかったので、前回集めた時の税率と次回集める時の税率の差の分を集めることにした。
これには大臣たちが反対した。
「せめてその税率の適用は次回からにしていただくようお願いします。途中で税の増分を集めたら、領民たちが怒り出します」
と申し出てきた。
しかし、
「王国の赤字の改善は、すぐにしなければならないことなんだ。改善したいといったのはあなたたちではなかったのか? とにかくすぐに進めるのだ。領民の反乱など、気にすることはない」
とわたしは言って、聞く耳はもたなかった。
わたしはもっと遊びたいし、贅沢がしたい。
それには増税するのが一番!
そう思っていたのだが……。
フローラリンデは、
「増税は、領民を苦しめ、最終的には公爵家の衰えにつながっていきます。増税によらずに赤字を改善しなければならないと思います。公爵家の無駄な支出を減らしていけば、それは充分可能です」
とわたしに言うようになった。
わたしのところに来るようになって、しばらくの間は、公爵家の経営については何も言っていなかった。
しかし、この頃は口を出すようになってきている。
フローラリンデの方は、わたしとだんだん親しくなってきたと思っているので、そういうことも言うようになってきたのだと思う。
フローラリンデは、その才能を父親に評価されて、子爵領の経営についての助言をしてきたそうだ。
その結果、子爵領は豊かになってきているという。
その評判は聞いている。
わたしの父親がフローラリンデを婚約者にしたのも、そういうところがわたしの伴侶としてふさわしいと思ったのだろう。
そのことは理解できないわけではない。
しかし、腹が立つ。
公爵家の無駄な支出をなくしていくということは、すなわち、わたしの贅沢を制限するということだ。
そんなことは許されない。
贅沢ができなくては、何の為に、権限を委譲されたのかわからない。
もし公爵家の赤字がそれで改善されたとしても、わたしには何の意味もない。
フローラリンデとこのまま結婚したら、一生贅沢できなくなる可能性がある。
いや、もうほぼ間違いなく質素な生活をすることになるだろう。
そんなつまらない生活はしたくない。
わたしは我慢ができなくなってきている。
この公爵家は、わたしが動かすのだ。
他の人間が動かすものではない。
わたしには、助言をするものなど必要ない。
やはり、この婚約は破棄すべきだ!
わたしは、強く思うようになっていった。
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