第四話 浮気に納得できないわたし
「きみはまだわたしのすることに反対するのかね」
ルアンソワ様の口調は厳しいものになってきていた。
「わたしは、イレーレナさんとの関係を両立させるということには賛成できません。わたしはルアンソワ様の婚約者なのです。イレーレナさんとは立場が違います。わたしのことを好きでいてくださるのであれば、イレーレナさんとは別れるべきです」
わたしはルアンソワ様との距離を縮めようと努力してきた。
その努力の成果かどうかはわからないが、ルアンソワ様も、わたしのことを好きだと言ってくれている。
ここでルアンソワ様とイレーレナさんの関係を認めてしまったら、今までの苦労はすべて無駄になってしまうだろう。
既に、わたしの目の前でキスをするようになっている二人だ。
わたしが二人の関係を認めた瞬間から、ルアンソワ様の心にある歯止めが失われて、心はイレーレナさん一色になってしまうに違いない。
それは避けたい。
避ける為には、イレーレナさんと別れてもらうしかない。
ないんだけど……。
ルアンソワ様の怒りは増してきている。
「何度きみとイレーレナさんの関係を両立させたいと言っても反対するのか?」
「反対します」
「きみのことが好きだと言っても?」
「反対します。好きだと言うのでしたら、わたしだけを選んでください」
こうなったら意地だ。
「ここまで言っても聞いてくれないのだな」
「わたしはルアンソワ様の婚約者なのです。このことについては、受け入れることはできません」
「もう一度だけ言う。わたしは、きみもイレーレナも大切に思っている。二人を同じくらい愛したい。この申し出を受け入れてほしい」
ルアンソワ様は、今までよりも少し柔らかい口調で言った。
どんどん口調が厳しくなる一方だったので、少し違和感を覚えた。
もし、ここで断ったら、次はいきなり厳しい話をされるのではないだろうか。
例えば、当分の間わたしには会わないとか、イレーレナさんとの関係はもっと深くしていくとか、というような話。
しかし、わたしは、
「どうおっしゃられても、わたしは受け入れるつもりはありません」
と言った。
どう言われようと、婚約者としての立場は貫き通すべきだと思ったからだ。
それに、わたしは今日この場で、二人に屈辱を与えられた。
こんな屈辱は二度と味わいたくない。
そう思っていると、
「それでは仕方がない」
とルアンソワ様は言う。
何を言うのだろうと思っていると、
「わたしルアンソワは、フローラリンデとの婚約を破棄する」
とルアンソワ様は冷たく言った。
わたしはそれを聞いた瞬間、またしてもめまいがしてきた。
先程から何度かめまいに襲われていたが、今度のはかなり厳しい。
ちょっとでも気を抜くと、倒れてしまいそうだ。
それにしても、反対し続けていたので厳しい言葉が来ることは予想してきたが、まさか『婚約を破棄する』という言葉が出てくるとは……。
婚約破棄、それはルアンソワ様との関係の終了を意味する。
しかし、にわかには信じられない話だ。
「それってどういう意味なんでしょうか?」
思わずわたしはルアンソワ様に聞いた。
聞いたところで、どうなるわけではないけれど。
「きみとの婚約を破棄するということだ」
「婚約を破棄する……」
「これできみとは、婚約者でも何でもなくなったということだ。きみもその方がいいだろう」
そう言うと、ルアンソワ様は冷たく笑った。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
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